マルボロは広い。三つに分かれるサブリージョンの中で、最も冷涼なのがアワテレ・ヴァレーだ。ヴァヴァサワー家は1890年、この地にたどり着き、1985年に最初のブドウ樹を植えて89年にリリースしたパイオニアだ。
標高が高く、風通しがいい。クウディ・ベイからの涼しい風が吹き抜け、南極からの風も入る。河岸段丘と氾濫した川の組み合わせで、沖積のれき岩と粘土、黄土(レス)が入り組んでいる。ワイラウ・ヴァレー、サザン・ヴァレーより乾燥している。
ワインメーカーのステュアート・マーフェル氏は地元の出身。多くの人材を輩出した名門リンカーン大学のワイン醸造科を卒業し、2007年にチーフ・ワインメーカーに就任したホープだ。
「マルボロは多様性に富む産地だが、アワテレ・ヴァレーは冷涼な気候からくるすがすがしさとストーニーなミネラル感を生む。100を超す区画から収穫し、テロワールを正確に表現するのが私の務め」
ソーヴィニヨン・ブランはフリンティで、チオール化合物からくるパッションフルーツと火打ち石の香り。テクスチャーも滑らかで、程よい軽快感がある。抑制されたフレッシュな味わいは、現地でシーフードとよく合わせられており、和食ともよく合う。
ほかにも、多彩な料理と合わせやすいアロマティックなピノ・グリ、トースティでクリーミーなシャルドネ、飲み出すと杯が止まらないアプローチャブルなピノ・ノワールなど、幅広い品種を生産している。微妙な樽使いが複雑性を与えている。
ヴァヴァサワーはセントラル・オタゴの「マウント・ディフィカルティ」などとともに、米国の実業家ビル・フォーリー氏率いる「フォーリー・ファミリー・ワイン」の傘下にある。マーフェル氏はほかの傘下のワイナリーと情報交換し、ワイン造りに生かしている。
text by Akihiko YAMAMOTO
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