次々とライジングスターが現れるニュージーランド。最も旬な造り手を知りたければ、『グルメ・トラベラー・マガジン誌』のニュージーランド・ワインメーカー・オブ・ザ・イヤーを読めばいい。
2022年に選ばれたのが、「ブラック・エステート」のニコラス・ブラウン氏だ。1994年に始まったエステートは、ワイパラ・ヴァレーの先駆者だったが、名実ともにトップランナーとなった。
ブラック・エステートは最初から、正道を歩いてきた。オミヒの単一畑ネザーウッドをダニエル・シュスター氏と一緒に開墾したのだ。シュスター氏はトスカーナの「オルネッライア」やナパ・ヴァレーの「スタッグス・リープ」にも助言した国際的なコンサルタント。彼の先見の明はワイナリーの発展にも貢献した。オーガニック栽培を取り入れ、2017年にビオグロの認証を得た。現在はバイオダイナミックスへの転換を進めている。野生酵母で発酵させ、清澄、濾過はせず、亜硫酸を抑えるか使わずに、ピュアで透明感溢れる味わいに仕上げている。
「オーパスワン」やバローロの「サンドローネ」など、各国の名門ワイナリーでも経験を積んだブラウン氏の視野は広い。メンターは「リッポン」のニック・ミルズ氏。アイデアを共有し、マサール・セレクションやプレパレーション(調剤)の製造に生かしている。
「ワイパラ・ヴァレーは冬は温かいの影響を受ける冷涼な気候。ブドウ樹だけでなく、動物を含む生態系を保ちながら畑仕事をしている。自然から多くのことを学んでいる」
ホーム、ダムスティープ、ネザーウッドの単一畑は、土壌、クローン、斜度などが異なり、ブラウン氏はその違いに合わせて、栽培と醸造を行っている。ヴィンテージと畑の特徴に合わせて、ピノ・ノワールは全房発酵も導入している。リンカーン大学で栽培醸造学のディプロマを取得しており、リースリングやシャルドネにも才能を発揮している。
text by Akihiko YAMAMOTO
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