山梨県に二つのワイナリー「マルス山梨ワイナリー」「マルス穂坂ワイナリー」を持つ本坊酒造。その歴史は1872年に南薩摩の地で、製綿業として始まった。1909年からは特産物であるさつまいもを使った芋焼酎の製造を開始。1985年には長野に「マルス信州蒸溜所」を設立し、ウイスキー事業を本格化。そして2016年、本坊酒造発祥の地である津貫に「マルス津貫蒸溜所」を開設した。

7月中旬、マルス津貫蒸溜所を訪問。寶常(ほうじょう)担当の田中教文(のりふみ)氏に案内してもらい蒸溜所内の施設を周った。

気候・風土に寄り添ったウイスキー造り

「ここは東を蔵多山山系、西を長屋山山系の山々に囲まれた盆地。良質な湧き水に恵まれています。夏は暑く、冬の寒さは南薩摩では厳しいといわれるほどです」と田中氏。のため、味わい

マルス信州蒸溜所は気候が冷涼のため、味わいはすっきり綺麗、熟成もゆっくりと進むのに対し、津貫は、盆地からくる寒暖の差の影響で味わいは力強く、どっしり重厚。熟成も早く進むという。からくる寒暖の差の影響で味わいは力強く、どっしり重厚。熟成も早く進むという。

シンボルタワーの内部は、旧蒸溜塔

画像: 見る人を圧倒する「スーパーアロスパス式連続蒸溜装置」

見る人を圧倒する「スーパーアロスパス式連続蒸溜装置」

まずは「旧蒸溜塔」で、本坊酒造の歴史や、焼酎やウイスキー造りについて学ぶ。

室内にそびえたつのは、高さ26メートルのスーパーアロスパス式連続蒸溜装置。圧倒的な存在感だ。

「1970年代まで稼働していたんですよ」。その迫力は今にも動きだしそう!

画像: 錫には不純物を吸着させる性質があるため「錫蛇管(すずじゃかん)」で作った焼酎は、雑味の少ない、まろやかな風味に仕上がる

錫には不純物を吸着させる性質があるため「錫蛇管(すずじゃかん)」で作った焼酎は、雑味の少ない、まろやかな風味に仕上がる

ほかにも、昭和初期の焼酎壷や小型蒸溜釜、製造工程を説明したパネルなども展示。

歴史年表もあり、変遷も知ることができる。

画像: さきほどのスーパーアロスパス式連続蒸溜装置や小型蒸溜釜など、歴史を感じる物ばかり

さきほどのスーパーアロスパス式連続蒸溜装置や小型蒸溜釜など、歴史を感じる物ばかり

「1992年にはウイスキーの需要が低迷し、マルス信州蒸溜所ではウイスキーの蒸溜を休止。その時は、貯蔵原酒の商品化に注力していました。その後、2008年ころにハイボールブームが到来し、需要が回復。20年にようやく19年ぶりに蒸溜を再開したのです」

2013年には『マルスモルテージ3+25 28年』が「ワールド ウイスキー アワード(WWA)」で「世界最高賞」を受賞。日本のウイスキーが世界に認められたのだ。

画像: 本坊家や本坊酒造の歴史、製造工程を説明したパネルなども展示

本坊家や本坊酒造の歴史、製造工程を説明したパネルなども展示

そして2016年、マルス津貫蒸溜所を竣工し、32年ぶりに鹿児島でモルト原酒蒸溜を再開。同年、屋久島に所有する焼酎蔵「屋久島伝承蔵」の奥に、ウイスキー原酒を貯蔵する「マルス屋久島エージングセラー」を造った。このセラーで熟成したウイスキー『MARS The Y.A.』は発売と同時に、すぐ完売してしまうほどの人気だという。

画像: 信州と津貫で蒸溜し、屋久島で熟成されたモルト原酒『MARS The Y.A.』。温暖な気候を感じさせる明るい果実香や潮風を連想させる香味が楽しめる

信州と津貫で蒸溜し、屋久島で熟成されたモルト原酒『MARS The Y.A.』。温暖な気候を感じさせる明るい果実香や潮風を連想させる香味が楽しめる

ウイスキー造りの技術と知識が結集した最新設備「ウイスキー蒸溜棟」

画像: ハイブリッド型スピリッツ蒸溜機

ハイブリッド型スピリッツ蒸溜機

続いて、現在稼働している「ウイスキー蒸溜棟」へ。ドアを開けた途端、芳醇なウイスキーの香りが! 2階にあがると、ガラス越しに、糖化、発酵、蒸溜とウイスキー造りの行程が見学できる。

画像: 2階から見ることのできる、ポットスチル。右が初溜釜、左が再溜釜。くびれ過ぎない設計のため「一定の雑味残り、それが厚みとなります」と田中氏。力強い重厚が原酒が造られる

2階から見ることのできる、ポットスチル。右が初溜釜、左が再溜釜。くびれ過ぎない設計のため「一定の雑味残り、それが厚みとなります」と田中氏。力強い重厚が原酒が造られる

ポットスチルには、中が見えるようガラスの窓がついており、タイミングによっては、発酵もろみが泡立つ様子も見ることも可能。

画像: ちょうどイギリスからの麦芽が到着。1袋約1トンの重さ。まもなく今期初仕込みが始まる

ちょうどイギリスからの麦芽が到着。1袋約1トンの重さ。まもなく今期初仕込みが始まる

原酒が眠る「石蔵樽貯蔵庫」

画像: 蔵の中には蒸溜されたウイスキーの原酒が並ぶ

蔵の中には蒸溜されたウイスキーの原酒が並ぶ

そして、ウイスキーの原酒が眠る石蔵樽貯蔵庫へ移動。シェリー樽、バーボン樽など、さまざまな樽に入った原酒が300樽ほど並ぶ。

画像: 入った瞬間から甘く力強い香りが!まるで時が止まったような静かな空間だ

入った瞬間から甘く力強い香りが!まるで時が止まったような静かな空間だ

石蔵、と聞くとひんやりとした室内が浮かぶが、この日は気温も高く蔵内は熱気ムンムン。

画像: 貴重な樽も見ることができる

貴重な樽も見ることができる

「南薩摩の自然の中で唯一無二のウイスキーへと育っています」

バーカウンターやショップも兼ね備える本坊家旧邸「寶常(ほうじょう)」

画像: 昭和初期に建てられた本坊家旧邸をリノベーション

昭和初期に建てられた本坊家旧邸をリノベーション

最後に蒸溜所に隣接する本坊家旧邸「寶常」へ。2代目社長の本坊常吉氏が暮らした邸宅で和と洋が融合した空間だ。ここではマルスウイスキーを味わえるバーやオリジナルグッズ、酒類を販売するショップが併設。庭園もあり、椅子に腰かけながらゆったりとウイスキーを味わうことができる。

画像: 立派な日本庭園を眺めながら1杯、2杯……

立派な日本庭園を眺めながら1杯、2杯……

見て、学び、味わえる。五感でウイスキー造りにかける情熱を感じられるマルス津貫蒸溜所。工場見学は1人から参加可能で料金は無料、予約は電話かオンラインで受け付けている。ぜひ訪れてみては。

画像: オリジナルウイスキーのほか、津貫蒸溜所の限定グッズ、地元の特産物を使った商品なども

オリジナルウイスキーのほか、津貫蒸溜所の限定グッズ、地元の特産物を使った商品なども

画像: 案内してくれた「寶常」担当の田中教文氏。バーカウンターには所せましとボトルが並ぶ

案内してくれた「寶常」担当の田中教文氏。バーカウンターには所せましとボトルが並ぶ

画像: バーカウンターやショップも兼ね備える本坊家旧邸「寶常(ほうじょう)」

本坊酒造株式会社 マルス津貫蒸溜所

住所:鹿児島県南さつま市加世田津貫6594
電話:0993-55-2121
※電話受付 9:00-17:00
営業時間:9:00〜16:00(入館無料)
定休日:年末年始(臨時休業あり)
駐車場:あり(無料)

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