ポルトガル投資貿易振興庁は、日本とポルトガルの交流480周年を記念して「プレミアム ポルトガルワイン プレスディナー」を、原宿の日本料理店「野田」で開催した。
開宴の挨拶に立ったのは、ポルトガル大使館経済参事官のミゲル・ガルシア氏。「旬の食材を使った野田氏の創造的な料理に多様なポルトガルワイン、双方のガストロノミックな感性を合わせてみたい」とこの会の趣旨を説明。ポルトガル料理にインスパイアされたオーナーシェフである野田雄紀氏が、この会のために特別な料理を用意してくれた。「ポルトガルは生魚を食したり、天ぷら、カステラなど日本となじみの深いものもあるので、いろいろなヒントを得ました」(野田氏)
まずはスパークリングワイン『トゥーリガ・ナショナル ブルート』(ムルガニェイラ)でスタート。ポルトガルで最も有名なスパークリングワインの生産者がポルトガルを代表する赤品種、トゥーリガ・ナショナルで造るブラン・ド・ノワールだ。長い熟成からくる強い旨味と複雑な味わいが特徴。ポルトガル国内の高級レストランの多くでオンリストされているという。
続いて大西洋、ポルトガルとアメリカの間に位置するアソーレス諸島、ピコ島のワインが2本。この島のブドウ畑は潮風からブドウを守る「クライス」と呼ばれる石垣に囲まれており、その距離は地球一周分を超えるとか。世界遺産にも登録された、現在注目を集めているワイン産地だ。
1本目『ピコ ペ・ド・モンテ・リゼルヴァ2021年』(ファビオ・ローシャ)は潮風の影響を受けたミネラル感を鮮烈に感じる。次の『ピコ ア・セルカ・ドシュ・フラーデシュ ヴェルデーリョ 2020年』(ティトズアデガ)もフレッシュな果実味に塩味を伴うミネラル感が印象的。
このピコ島のワインと素晴らしい相性をみせたのが「バカリャウケーキ」。バカリャウはポルトガルの国民食である干しタラのことで、それをジャガイモと混ぜてケーキ仕立てにし、贅沢にカニをのせた。タラとカニが持つミネラル感とワインの潮風のニュアンスが、このうえないマリアージュを奏でる。
『メストレ・ダニエル キュヴェ・ジャパン』は、日本市場に向けられた特別なキュヴェ。このワインはアンフォラで熟成している。アンフォラ熟成はジョージアで行われているのはよく知られているが、ポルトガルはそれに次ぐ古い歴史があるという説もある。ポルトガルにはアンフォラを使ったワインのDOP(原産地呼称)「ヴィーニョ・デ・ターリャ」があり、このワインもそれに該当する。レモンなどの柑橘や青リンゴのさわやかな香り。複雑なアロマと穏やかな酸味。旨味を伴うような余韻が心地いい。
これにはマデイラ酒でウシエビを漬け込んだ料理を合わせた。上にのせられたキャビアの塩味がアクセントになり、ワインの旨味を引き出す。もう1品、アレンテージョの山羊のチーズにしじみの出汁、かぶら蒸し、白子のムニエルを茶碗蒸し風に仕立てた料理も。くせのないチーズの味わいと白子の滑らかさがワインのテクスチャーによく合っていた。
ここでポルトガルの土着品種を使用した赤ワインが登場。『ヴィーニャ・バローサ2017年』(ルイス・パト)はバイラーダ地方の土着品種バガ100パーセント。バガはタンニンが強く果実味が弱いため、良いワインができないとされていたが、近年注目を集めている。黒系果実にユーカリのようなハーバルな印象とほのかなスパイス感がある。良い熟成を経ており複雑さもある。
続いては『ヴィニャス・ヴェリャス』(キンタ・ド・パラル)。高級スーツケースブランド「リモア」の元オーナーが興したワイナリーで、このワインもプレミアム。土着品種、アンタン・ヴァズ、ペルンをブレンドしたもの。トロピカルフルーツの味わいとミネラル感もたっぷりのリッチなスタイルで、サクッと揚げたパクチーの天ぷらにアオリイカの刺し身とシャインマスカットを添えた一皿と。アオリイカの粘り気のある味わいに、シャインマスカットの華やかさがワインを繋ぐ。
『フィタプレタ・ティンタ・カルヴァーリャ2020年』はマイナー品種ティンタ・カルヴァーリャ100パーセントで造るワイン。赤い果実の鮮やかなアロマと複雑なミネラル感。スムーズな口当たりで旨味に溢れる。このワインにはキノコにフォーカスした料理を。ポルトガルはキノコもよく食べるそうで、マイタケ、エノキ、なめこをキノコと昆布の出汁でいただく。うえには白トリュフをあしらった滋味深い1品。ワインの淡い旨味と華やかさが、キノコの香りに相乗する。
ポートワインの産地として有名なドウロは暑く乾燥しているが、エレガントなスティルワインも造られるようになりその品質の向上は目覚ましい。『クロス フォンテ ド サント チェリーキャップ』は樹齢90年以上の古木のブドウを足踏みして破砕し醸造する。熟した赤い果実にほのかな樽の香りが液体によく溶け込んでおり、上質なタンニンも楽しめる。ここで佐賀県唐津のスズキを南蛮漬けにした料理が供された。南蛮漬けの酢やあしらったなますの程よい酸味がワインにマッチした。
同じドウロのワインがもう1本続く。「キンタ・ド・クラスト」はドウロのスティルワインの可能性を高めるために5生産者で結成した「ドウロ・ボーイズ」の一員。『トゥーリガ・ナショナル』は力強く凝縮感があるがエレガントなスタイルで、滑らかなタンニンが心地いい。メイン料理はアサリと豚肉を炒め合わせるポルトガル南部の郷土料理「アレンテージョ」を野田氏が再現。豚肉をかみしめるごとに感じる甘さや旨味にワインの渋味が溶け込むよう。
最後はガルシア氏から自宅セラーに眠っていたという『W & J グラハムズ ヴィンテージ・ポート 1994年』が特別に振る舞われた。食事の最後にふさわしい優雅で華やかなポートは、デザートのエッグタルトとともに参加者の心をリラックスさせた。
バラエティー豊かなポルトガルワインの底力を知ることができた本日のラインナップ。まだまだお宝が眠っているに違いない、そんな期待が高まるプレミアムなポルトガルワイン。ぜひ試してみてほしい。
提供:AICEP
撮影:kohei nakamoto