「ヴィーニョ・ヴェルデ・ワイン協会」が、米野真理子さん(「ピエス・コーディネーション」代表)を講師に迎え、ヴィーニョ・ヴェルデの試飲&ペアリングイベントを開催した。7種のフィンガーフードとともに、15種のヴィーニョ・ヴェルデを試飲。「フレッシュで早飲み」という従来のイメージを大きく変えるヴィーニョ・ヴェルデが集まった。
プレミアム化が進むヴィーニョ・ヴェルデ
ポルトガルは国土が日本の約4分の1と小さな国でありながら、地域によって山や海の影響を受け多彩な気候風土を持つ。250種を超える固有品種を有し、さまざまなテロワールから個性豊かなワインを生み出している。
ポルトガル北西部に位置し、スペインとの国境であるミーニョ川一帯に広がる産地が「ヴィーニョ・ヴェルデ」だ。生産量はポルトガルワイン全体の約8分の1を占める。全体的に夏は涼しく、冬は温暖な穏やかな気候だが、九つのサブリージョン(*)によって特徴は異なる。
*最北のモンサォン・イ・メルガッソ、大西洋側のリマ、カヴァド、アヴェ、ソウザ、内陸部のパイヴァ、バイアオン、アマランテ、山岳部のバスト
2022年現在、ヴィーニョ・ヴェルデでは白ワインが87.9パーセント、ロゼワインが8.5パーセント、赤ワインが3.6パーセント造られている。ロゼはこの10年で4倍にまで増えた一方、赤は年々減少している。
これまでは、早くに収穫したブドウから造られるやや発泡を感じるフレッシュなワインや、ロウレイロ、トラジャドゥラ、アルバリーニョの伝統3品種をブレンドしたワインが一般的だった。しかし、最近はサブリージョンに注目してより細かなテロワールを重視するスタイルや、単一品種のワインも増えており、ヴィーニョ・ヴェルデの高品質化・プレミアム化が進んでいる。
フレッシュな白だけじゃない、ヴィーニョ・ヴェルデの新たなステージ
試飲した15種のヴィーニョ・ヴェルデの中から、特に印象深かったアイテムを紹介する。
『トジェイラ・グランデ・レゼルバ 2018年』(Casa da Tojeira ,ida)
品種:アルバリーニョ85%、トラジャドゥラ15% *未輸入
コリアンダーやバター、洋ナシの香り。ミネラルを伴う旨味が感じられ、ボリュームのある味わいはシェリーを思わせる。これまでのヴィーニョ・ヴェルデのイメージを大きく覆すワインだ。
「このワインは山岳地帯のモンサォン・イ・メルガッソで造られた“山のワイン”。羊や馬、豚を飼育しているエリアで、現地ではお肉料理と合わせられています」と米野さん。
『カシュテロ・ネグロ・アヴェッソ 2018年』(グアポス・ワイン・プロジェクト)
品種:アヴェッソ100%
アヴェッソを100パーセント使用。アヴェッソはオレンジやピーチなどのフルーツ、ナッツ、フローラルなアロマが特徴の白ブドウ品種。このワインは黄桃の香りに、火打ち石や鉱物の印象もあり複雑。コクのある苦味とナッツのニュアンスが食事との相性を高める。
『バラオ・ドゥ・オシュピタル・アルバリーニョ 2021年』(Faula-SOC. Vinhos SA)
品種:アルバリーニョ100% *未輸入
アルバリーニョはポルトガル国内で栽培面積第5位の品種で、ロウレイロの増加率を上回る勢いで生産が拡大している。少し前はブレンド用に使われていたが、現在はアルバリーニョ単一のプレミアムワインも造られるように。このワインはまだ若々しく、モモやライチのほか、クルミも感じられる複雑な香り。アタックには厚みがあり、線の細いきれいな酸が全体を支えている。
『デウ・ラ・デウ・レゼルバ・アルバリーニョ 2021年』(Adega de Monção)
品種:アルバリーニョ100% *未輸入
オレンジやキンモクセイのほか、熟した洋ナシや火打ち石のスモーク感も。厚みがあり柔らかな酸と程よい果実味が共存した、とても華やかなワインだ。
このワインの産地であるモンサォン・イ・メルガッソは、ポルトガルの中でも特殊な大陸性の気候で、夏は比較的暑く冬が寒い。そのため、早熟のアルバリーニョの栽培に適しており、ボディのある熟成に耐えうるワインが生み出される。
「アルバリーニョの多くはもともとステンレスタンクが使用されきましたが、最近では樽やコンクリートタンクなど、生産者たちはさまざまな醸造方法にチャレンジしています」と米野さん。
こちらのワインも、発酵後にロットの10パーセントを、フレンチオークの旧樽でオリとともに6カ月間熟成している。
米野さんは「ヴィーニョ・ヴェルデは『緑のワイン』ではなく、『緑の産地のワイン』です」と語る。“緑の地”と呼ばれる自然豊かな土地とチャレンジ精神旺盛な造り手が織りなすヴィーニョ・ヴェルデは、新たなステージに突入している。「フレッシュで早飲み」だけでない、多様な魅力の可能性を秘めた産地に注目したい。