カリフォルニア、ナパ・ヴァレーのシャルドネのトップ生産者「コングスガード」オーナー兼ワインメーカーのジョン・コングスガード氏が来日した。日本への訪問はこれが初めてとなる。
コングスガード氏はUCデイビス校でワイン造りを学び、1983年に名門ワイナリー「ニュートン」に入社。当時、ブルゴーニュを毎年訪れ「コシュ・デュリ」や「ドミニク・ラフォン」といった著名ドメーヌからワイン造り吸収したという。それはブルゴーニュの伝統的な醸造方法である、天然酵母での発酵、2年間の樽熟成、ノン・フィルターで瓶詰するということ。当時のカリフォルニアではありえなかった醸造法にチャレンジしたことが“先駆者”と呼ばれるゆえんである。
2年間、樽熟成することに関して「樽にワインを入れた1年目はフルーツが生き生きと、2年目になるとその要素は鳴りを潜め、ミネラルや酒質の強さが徐々に現れる兆しが感じられます」とコングスガード氏は説明してくれた。
フラッグシップである『シャルドネ ナパ・ヴァレー』のブドウは偉大な畑「ハドソン・ヴィンヤード」と「ハイド・ヴィンヤード」から調達している。「ハドソン・ヴィンヤードのオーナー、ロバート・リー・ハドソン氏は大学の同級生。彼の畑の初めての顧客が私でした」とコングスガード氏。
ハイドは不思議な高いトーンがあり、一方のハドソンはワインの中核を成す役割で、横に広がるイメージだそうだ。それぞれ、単一畑のワインを造らないのか? という問いには「ブレンドするとコーラスのように複雑さが出る」とのこと。ちなみに2011年ヴィンテージはハイドのブドウがうまく発酵しなかったため、ブレンドされなかったという。そのヴィンテージは「やはり何かが欠けているような味わいだった」(コングスガード氏)
父が判事であったことから名付けた『ザ・ジャッジ』はコレクターも垂涎のワイン。この伝説的なワインはもともと祖父が稼業をしていた土地を開墾し、植樹したことに始まる。自身でワイナリーを興す前は、ニュートンのワインの一部にこの畑のブドウも使っていたが、独立した後の2001年に父が亡くなった時、この畑のブドウで非売品のメモリアルワインを造った。それを試飲したワイン評論家から高い評価を受け、正式に商品化した。この素晴らしいワインの味わいの秘密は、その収量の少なさにある。ブドウの樹勢が弱いうえに実る果実が小さいため、一般的な収穫量よりきわめて少ない1エーカー(0.4ヘクタール)当たり1トンほどの収穫量しかない。
モモやアーモンドの種のような香り。塩味のようなニュアンスが特徴で、ずっと口に入れていても香りが続くような長い余韻がある。
続いて赤ワインも試飲した。『シラー ナパ・ヴァレー 2018年』はカーネロスの海が隆起した土地から生まれる。涼しいうえに火山性土壌というカーネロスの中でも特別な場所にあり、2.5エーカー(約1ヘクタール)から250~300ケースほどの量が造られている。
「ニュートン時代、フランスに影響を受けて最初ヴィオニエを栽培していたのですが、フランスで素晴らしいシラーに出会ってシラーのワインを造り始めたのです。コート・ロティよりはエルミタージュのようなニュアンスではないでしょうか」
黒系果実の緻密さと黒コショウのようなスパイス感も。滑らかなタンニンとエレガントな酸が備わっている。ステンレス発酵で3週間スキンコンタクトする。発酵中はポンピングオーバーを行い、新樽率50パーセントで熟成。
ブルゴーニュから学んだワイン造りを忠実に実践しつづけているコングスガード氏。今では逆にブルゴーニュの生産者が教えを請いに、コングスガード氏のもとを訪れるそうだ。現在は2011年にワイナリーに加わった息子、アレックス氏とともに栽培・ワイン造りを行っている。アレックス氏の意見も要所に取り入れているそうで、これからのコングスガードの行く末を注視したい。
ワインに関する問い合わせ先:㈱中川ワイン 03-5829-8161