2月、イタリアのピエモンテ州バローロの生産者「ヴィベルティ・ジョヴァンニ」オーナー兼醸造担当のクラウディオ・ヴィベルティ氏が初来日し、テイスティングセミナーを開催した。
1923年、ヴィベルティ氏の祖父にあたるアントニオ氏がバローロ村のヴェルニィ地区に宿泊施設とそれに隣接するブドウ畑を購入し、宿のレストランで提供するワインの生産を始めた。67年にアントニオ氏の息子、ジョヴァンニ氏が妻のマリアさんとともに家業を継ぎ、畑の拡張、セラー設備の刷新などに尽力した。
そして2004年、末の息子であるクラウディオ・ヴィベルティ氏が3代目として家業に参加し、新たな風を吹き込んでいる。
所有する計21ヘクタールの畑のほとんどがバローロ村の西側に位置し、標高は400~500メートル。ネッビオーロ、ドルチェット、バルベーラ、少量のシャルドネを栽培している。
「こうした気候風土の影響を受け、ヴィベルティ・ジョヴァンニからはエレガントで香り高く、酸が豊かなスタイルのワインが生まれます」とヴィベルティ氏は言う。
生まれ変わったシャルドネ『ランゲ・シャルドネ・リナート』
ランゲ・シャルドネ・リナート 2020年
Langhe Chardonnay Rinato
今回試飲した『ランゲ・シャルドネ・リナート』は、イタリア語で「再生した」「生まれ変わった」を意味する「リナート」を名に冠している。1988年に造られた樽を使ったシャルドネへのオマージュとして、これまでのノウハウに加え、新たなヴィジョンを吹き込んだワインだ。しかし、このワインはジョヴァンニ氏がワイナリーを引き継いだ2004年を機に、一度生産が中止されている。
「実は、ワイナリーを引き継ぐ時、私は『このワインを造りたくない』という条件を提示したのです(苦笑)」とヴィベルティ氏。父のジョヴァンニ氏の造るシャルドネは、樽の風味が強すぎて、ワイナリーの個性が表現されていないと感じたからだった。
その後、ジョヴァンニ氏は畑の大改革に着手した。丘の形に沿って南向きに植えられていたシャルドネを北向きに植え替えることで、酸が高く、アルコール度数のやさしいワインを生み出した。この時、シャルドネはマサル・セレクション(*1)によって選抜されたクローンに植え替えている。
また、醸造面でも工夫を凝らし、使用する樽を変えた。ワインから漂う白い花と洋ナシの香りは、それぞれアカシア樽とオーク樽に由来するものだという。また、10カ月かけてゆっくりとバトナージュ(*2)することで酸化しづらくなり、亜硫酸の使用量を減らすことにも成功した。
オーク樽を使用したかつての醸造技術を踏襲しつつ、より品種個性とテロワールを表現することで、「リナート」という名の通りヴィベルティ・ジョヴァンニのシャルドネは生まれ変わった。
2020年ヴィンテージは熟した洋ナシ、バナナのアロマにブリオッシュ、バター、ハチミツのニュアンスを感じる。クリーミーで繊細な口当たりで、フレッシュで滑らかな味わいだ。
*1 畑に実際に植えられているブドウの樹から良い樹を選び、穂木として台木に繋ぐ方法
*2 熟成中にタンク内を攪拌し、オリの成分を抽出すること
現地の人が楽しむドルチェット
プッブリカーノ・ドリアーニ 2021年
Pubblicano Dogliani
*2024年夏、数量限定で入荷予定
「ぜひ試飲してほしくて」とヴィベルティ氏が急遽用意してくれたのが『プッブリカーノ・ドリアーニ』だ。ドルチェットだけで造られるワインで、ラズベリーやブラックチェリーの香りに、少しラフでいながら心地いいタンニンが楽しめる。
「現地の人々が普段飲むワインがドルチェットで、ドリアーニ村はドルチェットの生まれ故郷です」とヴィベルティ氏。現地の様子を想像しながら楽しみたい。