2025年11月に運用開始となった関西電力送配電によるレンタルワインセラーサービス「La cave Takarazuka(ラ・カーヴ・タカラヅカ)」の全貌を全3回にわたり紹介するウェブ連載。最終回は、大阪・肥後橋の三ツ星レストラン「HAJIME」シェフソムリエ塚元晃氏がカーヴを訪問。塚元氏が抱いた率直な印象と、プロならではの洞察をリポートする。

——塚元さん、今日はよろしくお願いします。今、JR宝塚駅からタクシーで「La cave Takarazuka」へと向かっていますが、最初に塚元さんのご経歴を簡単に教えていただけますか?

塚元 今日はとても楽しみに伺いました。私は1978年岡山県の生まれで、現在は兵庫県神戸市の在住です。大学卒業後、「ホテルオークラ神戸」に就職してサービスマンとしてのキャリアをスタートし、次に、関西でもっともワインのストックを多く持つと言われる「オーベックファン神戸」に移りまして、そこでシャンパーニュやブルゴーニュ、ボルドーなどのグランヴァンをサーブする機会を多数得ました。その後、神戸の「THE SORAKUEN」ではウェディングやレストランの立ち上げを経験し、2024年からは大阪の「HAJIME」でシェフソムリエとして勤務しています。その傍ら、「アカデミー・デュ・ヴァン大阪校」でも講師を務めています。

——関西圏の飲食業界やワイン事情になじみの方でいらっしゃるのですね。

塚元 はい、そうですね。ただ、神戸に住んでいながら、関西圏でこうしたレンタルワインセラーサービスという事業がスタートしていることを恥ずかしながら今回まで存じ上げませんでした。こうしたビジネスが関西圏で果たして成り立つのか、関西電力送配電さんがどういう経緯でプロジェクトをスタートさせたのか、興味津々です!

自宅にすでにセラーを持つ人の第2、第3のセラーとして

画像: 左から、企画部新規事業推進グループリーダー 山口耕平氏、同グループ 飯嶌かがりさん、増田咲良さん

左から、企画部新規事業推進グループリーダー 山口耕平氏、同グループ 飯嶌かがりさん、増田咲良さん

山口 ようこそ、いらっしゃいました! 本日は、初めてセラーへいらっしゃるお客さまをお迎えするように、塚元さんを私どもプロジェクトチームの3人がご案内させていただきます。当施設には、2台の専用駐車場を併設しております。駐車場から建物のエントランスまではスロープとなっておりますので、お客さまがお車でワインを持ち込まれた際も、段差なくアプローチいただけます。台車もご用意しておりますので、ぜひご活用ください。

塚元 とてもモダンな建物ですね。すでに申し込みされたお客さまは、近隣の方が多いのですか? それとも遠方から来られる方が多いのでしょうか。

増田 私どもが想定していたよりは、遠方の方が多い印象です。近畿だけでなく、四国や中国地方からのお客さまもいらっしゃいます。お客さまの中には、ご自宅をはじめ別の場所にも数百本から数千本のワインをお持ちという方もいらっしゃるようでした。

塚元 ここ宝塚市の近隣ですと、西宮市や芦屋市在住の方の反応はいかがでしょうか?

山口 お隣り西宮市在住の方からのお問い合わせは非常に多いですね。

塚元 そうですか。芦屋市在住の富裕層の方は、ご自宅にすでにとても巨大なセラーをお持ちの方も多いですから、わざわざ他へ預けなくて済むのでしょうか?(笑)

山口 ご自宅のセラーがすでにいっぱいで、さらにもっと預けられる場所を探されている、という方やリスク分散という観点から安心して預けられるレンタルワインセラーを探されている方もいらっしゃいます。

塚元 たしかに、これまでお会いしてきた関西エリアの富裕層のワインラバーの方たちの中には、より良い保存環境のセラーを探されているという声もよく聞きました。配送サービスなどもあるのでしょうか。

山口 現状は、こちらのエントランスに設置しております宅配ボックスへ、ご自宅やご贔屓のお店からワインを直送していただくことは可能でございますが、宅配ボックスからご契約区画への移動につきましては、お客さまご自身でお願いしております。なお、セラーからご自宅などへの発送のご希望もいただいておりますので、さらなるサービス拡充に向けて検討を進めてまいりたいと考えております。

塚元 なるほど。将来的には、「La cave Takarazuka」へ郵送によるワインの預け入れだけでなく、セラーからご自宅への配送も行えるようになると、商圏が全国規模へと広がる可能性がありそうですね。

店舗デザインもすべて自社内で。ボトムアップのプロジェクト

——エントランスを入ると、セラーへ通じる非常に分厚いいかにも頑丈な扉が見えますね。

塚元 この扉もまるで高級レストランのエントランスのようで、お洒落ですね! 「La cave Takarazuka」のロゴも店舗デザインも、そのディテールに至るまでとてもよくできていると思うのですが、これはどなたが?

増田 実はすべて自社内で考えましたので、そう言っていただけて嬉しいです。

塚元 えっ!? このロゴもですか? ワイン関係のお仕事をもともとされていたわけではないですよね?

増田 ワイン関係の仕事をしていたわけではないのですが、構想段階から多大なるご支援をいただいてきましたワイン業界の方々などにアドバイスをいただきながら完成させました。

塚元 こちらのお客さまはワインマニアの方々も多いと思うのですが……。送配電会社がどうしてレンタルワインセラー事業を? なぜこのようなプロジェクトが立ち上がったのですか?

山口 私と増田で2023年の4月にこのプロジェクトを構想し、計画期間と1年間の工期を経て、25年11月に営業を開始しました。この建物は一般の建物よりも停電に強い2系統受電設備を保有しており、ワインセラー事業においては停電対策が不可欠であることから着想を得ています。加えて、弊社の経営理念に含まれる「『あたりまえ』を守り、創る」にも親和性があると考えております。 また、グループ会社でセキュリティ事業を行っている会社があることもそのきっかけの一つです。

塚元 そうなんですね、上司の方から指令が出たわけではないんですね、すごいですね!

山口 そう言っていただけて嬉しいです。会社としても「挑戦」の精神を大切にしており、さまざまな領域での社会や地域の皆さまのお役立ちを目指しています。昨年からはこちらの飯嶌もチームに加わり、現在3人の社員でプロジェクトを担っています。

ここTakarazukaから“熟成ワイン”の価値観を変えていく

——それでは、いよいよセラー内部をご案内いただきましょう。

飯嶌 こちらのセラーは、お客さまが24時間365日、自由に出入り可能です。基本的に常時消灯、人感センサーで紫外線を出さない照明が付く仕組みになっています。温度は14℃±1℃、湿度は70%±10%になります。

塚元 お客さまから温度設定についてご要望をいただくことはないですか? もっと低い温度がいいとか、高いほうがいいとか……。

飯嶌 ご要望をいただいたことはありますね。

塚元 ワインの保管にパーフェクトな温度設定は一般的に13℃から15℃と言われていますが、ワイン好きの方の中には、長期熟成の際、酸化防止剤の少ないシャンパーニュなど、酸化を極力最小限に抑える目的でより低温を好む方もいらっしゃいます。逆に、早期熟成を望む方だと、高めの温度を希望される方もいます。

山口 そういったお客さまの声をもとに、今後サービスの付加価値を追求していきたいですね。

画像1: ここTakarazukaから“熟成ワイン”の価値観を変えていく

増田 それでは、ウォークインタイプのセラーからご案内させていただきます。左手にありますスライドドアになったお部屋がウォークインタイプのセラーでして、キャビネットで500本が収容可能となります。そして、右手がロッカータイプのセラーとなりまして、観音扉になった100本収容タイプ、片開き扉になった50本収容タイプの2種類ございます。サービスとして用意しておりますこの赤いストッカーをお使いいただくと、ロッカー内にきれいに収まります。棚板の高さは自由に変更いただくことができ、ワインの木箱やラックなど、お客さまのお好みに合わせてロッカー内部を自由にカスタマイズしていただくことも可能です。

塚元 利用料金を教えていただけますか?

増田 ウォークインタイプが月額税込で6万5000円、ロッカータイプの100本収容が1万6500円、50本収容が8800円となります。

塚元 なるほど。そのくらいの金額であれば、飲食店で独立を考えていて、店舗ができるまでワインのストックを少しずつ増やしていきたいという方の利用価値もありそうですね。自宅に大型の高級ワインセラーを1台買うとなると、それだけでも中古車が買えるくらいの金額になりますからね! ワインセラーはわれわれソムリエにとっても、とても大きな買い物です。

——たしかに、飲食店オーナー予備軍にも活用いただけそうですね。

塚元 ソムリエ視点からワインの保存や熟成に関して申し上げますと、シャンパーニュやブルゴーニュのグランヴァンは、熟成を重ねた時にこそ、そのクラス感の違いをもっとも楽しめるもの。私が勤務する「HAJIME」では、海外からのお客さまが7〜8割を占めますが、とくに欧米からのお客さまがどんなワインを注文するかというと、有名な造り手のワインであっても、最新ヴィンテージなどはまず注文しないのです。ブルゴーニュでいえば、2010年代前半のヴィンテージなど、10年以上熟成したワインが好まれます。つまり、彼らは日本人よりはるかに“熟成ワイン”というものに親しみがある。シャンパーニュラバーもしかりです。「貴重なものを飲む」「時間がつくり出したワインを飲む」ということに、大きな価値観を見出しているわけです。

——なるほど、究極のワイン好きがたどり着く“熟成ワイン”という美味しさ。

画像2: ここTakarazukaから“熟成ワイン”の価値観を変えていく

塚元 おそらくここにワインを預けようとされる方には、「美味しいワインを飲みたい」という共通項の下、さまざまなニーズがあるとは思うのですが、私としては、少しずつ日本でも“熟成ワイン”に対する意識と価値観が上がっていったらいいなと。それも、ここ関西から、そうした理解が少しずつ広がっていったらいいなと思います。

山口 将来的には私たちも、お客さまとインポーター、ワインショップの方、地域の飲食店などと協働して、ロビー横のイベントスペースを利用してさまざまなワインイベントができればと考えています。その第一弾として、ワインショップとのタイアップによる試飲会も企画中です。

塚元 私にもできることがあれば、いろんな方をご紹介させていただくなど、人と人とをつなぐお手伝いができれば嬉しい限りです。ワインをたくさんストックしている方々には「空ける機会を狙っているけど、その機会がなくてどんどんワインが貯まっていく」とおっしゃる方が多い。そうした「体験を共有したい」というニーズは大いにあると思います。関西でこうしたレンタルワインセラー事業を始められたパイオニアである「La cave Takarazuka」が、そうした場をつくり出していくことは、大きな意義があると思います。

——これから、この場所が関西圏のワインを取り巻くコミュニティの中心になっていく。そのポテンシャルが充分に感じられますね。本日はありがとうございました。

店舗データ

La cave Takarazuka

画像: 店舗データ

兵庫県宝塚市鶴の荘3-20
アクセス:
車で  中国自動車道 宝塚ICより5分
バスで 鶴之荘バス停より徒歩1分
電車で 阪急 清荒神駅より徒歩15分
阪急・JR宝塚駅より徒歩25分
月額料金:
500本収容ウォークインタイプ(部屋内寸 幅180×奥行120×高さ275cm) 6万5000円
100本収容ロッカータイプ(内寸 幅78×奥行57×高さ81cm) 1万6500円
50本収容ロッカータイプ(内寸 幅55×奥行57×高さ57cm) 8800円
※各税込

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