2026年10月1日、ピエール・ガニェール経営のパリのレストラン「ガヤ」で、「メゾン・ジャン・ロロン(Maison Jean Loron)」のプレス向け試飲昼食会が開かれた。出席した「メゾン・ジャン・ロロン」の社長ティエリー・ベリコーは、シャブリのメゾン・ラロッシュに14年間在籍し、2017年からはボーヌのメゾン・シャンピーも率いた。ロロンの社長就任は2024年12月。ベリコー社長とともに、ボージョレの醸造を担うテオファン・グロー氏、マコンの醸造を預かるセリーヌ・イルシュ氏も同席した。

1711年創業、二つの産地にまたがる体制

「メゾン・ジャン・ロロン」は1711年創業の老舗。ボージョレとマコネの境にあるラ・シャペル=ド・ガンシェ村のポンタヌヴォーに本拠を置く。社屋の北側はマコネ、南側はボージョレに属する。ベリコー氏は「片足をボージョレに、片足をマコネに置く。それが当社のDNAだ」と説明した。

ボージョレは「ドメーヌ・ロロン」の傘下に4つの拠点(シェナの「ドメーヌ・ド・ラ・ロシェル」、ジュリエナの「ドメーヌ・ド・ラ・ヴィエイユ・エグリーズ」、モルゴンの「シャトー・ベルヴュ」、セルシエの「シャトー・ド・ラ・テリエール」)を持つ。各拠点で醸造する体制をとり、10のボージョレクリュのうち8つを手がける。ボージョレの扱いは約170ha。一方、マコンは「ドメーヌ・オーヴィーグ」を拠点にシャルドネ村のマコン・シャルドネが22ha、プイィ・フュイッセが9ha弱。「メゾン・ジャン・ロロン」の従業員は100人、うち畑の耕作と醸造技術部門が40人。

畑の再編を進めており、この15年で自社畑の約70%を植え替えた。現在も50haを改植中だ。垣根仕立てにして機械化を可能にし、畝間に草を生やして花崗岩土壌の流出を防ぐ。赤ワインは2009年以来、醸造中に亜硫酸を加えていない。2026年の収穫は8月17日に始まり、9月1日には全区画で終わった。この夏は最高気温が40℃を超え、正午の畑の地表は50℃に達したという。

画像: 左から、ボージョレの醸造を担うテオファン・グロー氏、ティエリー・ベリコー社長、マコンの醸造を担うセリーヌ・イルシュ氏

左から、ボージョレの醸造を担うテオファン・グロー氏、ティエリー・ベリコー社長、マコンの醸造を担うセリーヌ・イルシュ氏

アペリティフ:度数を抑えた2本、「ボージョレ・ヴィラージュ」と「マコン・シャルドネ」

試飲昼食会で最初に供されたのはアルコール度数が10.5%と極めて低く作られた「ボージョレ・ヴィラージュ・アンコール+ガメイ2025(Beaujolais-Villages, Encore+ Gamay 2025)」と「マコン・シャルドネ・シャルドネ・ド・シャルドネ2025(Mâcon-Chardonnay, Chardonnay deChardonnay 2025)」の2本。いずれも、完熟したブドウを収穫して通常どおり醸造した後、ワインの一部を逆浸透膜にかけてアルコールと水だけを取り出し、アルコールを抜いたうえで水分を戻す。濾過されるのは分子の小さいアルコールと水のみで、香りの成分はワインに残る。辛口であることに加え、カロリーは平均20%低い。もちろん、添加物も保存料も使わない。アルコール度数を約2度下げただけで、原産地呼称は維持した。軽いが、ガメイ、シャルドネの味わいははっきり残っていて、技術的な手が加えられたことによる違和感は全くない。新しい消費傾向に対応する注目される対応だ。

ベリコー氏は「ノンアルコールワインという考え方には与しない」と述べ、あくまでワインという製品にこだわることを強調した。そして、味の均衡は9〜9.5%までなら保てるとの見方も示した。フランスではすでに発売済みで、今後世界市場に広げていく。

画像: アルコール度数を10.5%に抑えた『ボージョレ・ヴィラージュ・アンコール+ガメイ 2025年』(左)と、『マコン・シャルドネ・シャルドネ・ド・シャルドネ 2025年』(右)

アルコール度数を10.5%に抑えた『ボージョレ・ヴィラージュ・アンコール+ガメイ 2025年』(左)と、『マコン・シャルドネ・シャルドネ・ド・シャルドネ 2025年』(右)

ボージョレ全体でみると赤の生産が大半で、ボージョレ白の畑はボージョレ全体で500haにとどまる。そんな、貴重なボージョレ白として高い評価を受けているのが、「ボージョレ白・プランセス・リーヴェン 2025(Beaujolais blanc, Princesse Lieven 2025)」だ。南部ピエール・ドレ地区の標高420m、粘土石灰質の畑で有機栽培したシャルドネを用い、半分を樽で10カ月熟成させる。シャルドネの新鮮さが際立った素晴らしいボトルだ。ベリコー氏は着任時、樽の風味が勝っていると感じ、樽香を抑えるよう醸造チームに求めたと明かした。今後は標高が高く、東向きか北向きの区画を選んで白を増やす計画だ。しかし、クレマンは造らないという。

ボージョレ白に続いて、マコネ地区にあるメゾン・ロロン傘下の「ドメーヌ・オーヴィーグ」のボトルを試飲した。醸造は、アルザス出身のセリーヌ・イルシュ氏が担当する。

画像: 左から『ボージョレ白・プランセス・リーヴェン 2025年』、『マコン・ソリュトレ・プイィ 2023年』、『プイィ・フュイッセ・プルミエ・クリュ・ラ・フレリー 2024年』、『プイィ・フュイッセ・ヴィエイユ・ヴィーニュ 2021年』、『プイィ・フュイッセ・レ・ヴィラージュ 2019年』

左から『ボージョレ白・プランセス・リーヴェン 2025年』、『マコン・ソリュトレ・プイィ 2023年』、『プイィ・フュイッセ・プルミエ・クリュ・ラ・フレリー 2024年』、『プイィ・フュイッセ・ヴィエイユ・ヴィーニュ 2021年』、『プイィ・フュイッセ・レ・ヴィラージュ 2019年』

『マコン・ソリュトレ・プイィ 2023年』(Mâcon-Solutré-Pouilly)
は、ソリュトレの岩山とプイィ山に挟まれた標高350〜400mの畑。澄んだ果汁をステンレスタンクに移し、20〜22℃でアルコール発酵とマロラクティック発酵を進める。澱とともに約7カ月熟成し、フレッシュさを保つため春に瓶詰めする。樽は使わない。2023年は日照の多い年で、2.5g/lの残糖がある。柑橘の香りにメントールとミネラルのニュアンスが加わり、フレッシュさと豊かさを併せ持つ、マコネの白らしいスタイルである。

『プイィ・フュイッセ・プルミエ・クリュ・ラ・フレリー 2024年』(Pouilly-FuisséPremier Cru, La Frérie )
はソリュトレ・プイィ村の1級畑。酸化鉄が混じる赤い粘土。1〜3年使用の樽でアルコール発酵とマロラクティック発酵を行う。その後、澱とともに樽で11カ月、続いてステンレスタンクで5カ月熟成する。2024年は雨が多く、カビ防止に化学薬剤を使えない有機栽培には厳しい年だったという。内容があり、酸が素晴らしい。

『プイィ・フュイッセ・ヴィエイユ・ヴィーニュ 2021年』(Pouilly-Fuissé,Vieilles Vignes)
はソリュトレ・プイィ村周辺の古木のシャルドネから造るキュヴェ。2021年は氷点下7〜8℃の春霜に続いて雹に遭い、収穫を大きく失った。樽でアルコール発酵とマロラクティック発酵を行い、澱とともに約16カ月熟成。バトナージュはヴィンテージに合わせて調整する。瓶詰め前に、必要に応じて軽い清澄と濾過を施す。樽が効いたクラシックなつくりだ。

チーズには『プイィ・フュイッセ・レ・ヴィラージュ 2019年』(Pouilly-Fuissé,Les Villages)
が出された。フュイッセ村の複数の区画のシャルドネをブレンドした有機栽培のキュヴェ。発酵は自然に任せる。熟成は80%をステンレスタンク、20%を樽(うち50%が新樽)で、澱とともに約12カ月。教会で初めて仕込んだヴィンテージで、工事が終わらないなかでの醸造だったという。味わいは豊かで丸く、ミネラルと張りがあり、余韻には軽いトーストとヘーゼルナッツが感じられる。

画像: フュイッセ村にある12世紀のロマネスク教会を改修した「ドメーヌ・オーヴィーグ」の醸造所。内陣に現在156樽が積まれている

フュイッセ村にある12世紀のロマネスク教会を改修した「ドメーヌ・オーヴィーグ」の醸造所。内陣に現在156樽が積まれている

赤:区画名を冠した3つのクリュ

画像: 区画名を冠したボージョレのクリュ3本。左から『ブルイィ・ピエルー 2025年』、『フルーリー・モンジュナ 2022年』、『モルゴン・ジャヴェルニエール 2020年』

区画名を冠したボージョレのクリュ3本。左から『ブルイィ・ピエルー 2025年』、『フルーリー・モンジュナ 2022年』、『モルゴン・ジャヴェルニエール 2020年』

メイン料理の鴨のフォワグラのポシェには、区画名を記したボージョレのクリュボトル赤3本が並んだ。ボージョレのクリュでは現在、プルミエ・クリュ導入の動きがあり、同社はそれを見据えて区画の個性を打ち出している。

『ブルイィ・ピエルー 2025年』(Brouilly, Pierreux)
シャトー・ド・ラ・テリエールで醸造。青い石(ピエール・ブルー)を母岩とする古い粘土質土壌で、保水力があり収量が安定している。畑はやや北向きで約2ha。来年から新たに植えた2haが生産に加わる。全て除梗し、15日以上かけて穏やかに抽出する。2025年は乾燥した年で収量が低く、2022年や2020年ほどの香りの濃縮はない。しかし、口にガメイの豊かさ、バランスの良さが感じられ、後口が長い。

『フルーリー・モンジュナ 2022年』(Fleurie, Montgenas)
シャトー・ベルヴュで醸造。マドンヌの丘に近い南向き斜面、標高388mのモン・ジュナの中腹。2.5ha強の区画で、深さ20〜50cmの砂質の花崗岩土壌。ステンレスタンクで醸造し、花の香りを生かす。現在販売中のヴィンテージは2022年産。フランボワーズとイチゴの香りにスミレのニュアンス、ビロードのようなタンニン、丸く肉付きのある味わい。今回の試飲で最も高い評価点をつけた。

『モルゴン・ジャヴェルニエール 2020年』(Morgon,Javernières)
同社が自ら“グラン・クリュ”と位置づける区画、ジャヴェルニエールで作られる。ピエルーに近いピエール・ブルーの土壌だが、より深く、ワインにも奥行きと密度が出る。樹齢は平均80年を超え、30%は110年以上。除梗し、年に応じて3〜4週間の長い醸しを行う。熟成は澱とともに、3分の1をアンフォラ、3分の2を樽(3回使用まで)で最低10カ月、その後ステンレスタンクで1年。力強く骨格がありながら重さはなくエレガント。

ドメーヌ別

画像: ドメーヌ別

メゾン・ジャン・ロロンの売上高は5,000万ユーロ。ロロンブランドでの販売は200万本で、うち自社畑のワインは良年で最大80万本という。ボージョレ・ヌーヴォーの比率を尋ねると、ベリコー氏は「当社にとっては取るに足らない」と答えた。そして、日本の輸入元にも、クリュのボトルを積極的扱うことを取引の条件にしたという。

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