今年9月、南アフリカの瓶内2次発酵ワイン「メトード・キャップ・クラシック」(MCC)が50周年を迎える。これを記念し、キャップ・クラシック生産者協会(CCPA)会長で「グラハム・ベック・ワインズ」醸造長のピーター・フェレイラ氏がオンラインセミナーを開催した。
MCCは南アフリカワインの成長株で、現在は257社により年間1000万本近く醸造されている。80パーセントを輸出し、日本は8番目に多い輸出国となっている。CCPAは1992年に誕生した。大規模ワイナリー(年間50万本以上を生産)7社が生産量の70パーセントほどを占める。7社のうちの1社が、西ケープ州ロバートソンにある「グラハム・ベック・ワインズ」だ。
今年設立31年目を迎えるグラハム・ベック・ワインズ、は、MCCワイン専門の生産者だ。高品質のスパークリングワインを生む秘密を、醸造長のフェレイラ氏が語った。
好条件が詰まった産地
ワイナリーがあるロバートソンは、北と南を山脈に囲まれた産地。日射量が多く、夏場は昼夜の温度差が15℃以上にもなるため、完熟したブドウ、酸が備わったブドウが得られるとあり、MCC用のブドウにとっては大きなアドバンテージだ。土壌は石灰質土壌が多く、シャルドネやピノ・ノワールに適している。
自社畑
自社畑は区画ごとに生育管理し、収穫を行っている。原酒の醸造も区画ごとに行う。
2021年、初めて夜間収穫を試みたという。気温も果実の温度も低い状態でセラーに運べるため、セラーで一度冷却する手間がない。労働環境を考えても、熱い日中に行うよりも15℃くらいと涼しい夜間に収穫するほうがメリットが大きい。
ハウススタイル
自社畑のほか、約30パーセントを長期契約の畑でまかなっている。インド洋付近、太西洋付近などさまざまな産地のブドウを得て「さまざまな特徴を持つブドウを集め、絵具で絵を描くようにハウススタイルを表現する」とフェレイラ氏は言う。
一貫した味わい、スタイルを保つために、ワイナリーでは140以上のリザーヴワインをストックしている。
『ブリュット NV』
ハウススタイルを表現したアイテム。年により8~15パーセントのリザーヴワインを使い、毎年同じ味わいを表現する。鮮やかで軽快なシャルドネの特徴がきれいに表れている。現行はシャルドネ51パーセント、ピノ・ノワール49パーセント。(希望小売価格2550円)
『ブリュット ロゼ NV』
『ブリュット NV』とは反対に、アタックにピノ・ノワールが表れ、シャルドネが補助的に表れて全体を支えている。現行はピノ・ノワール66パーセント、シャルドネ34パーセント。ラズベリー、イチゴなどの軽やかな果実味。(希望小売価格2550円)
『ブリュット ブラン・ド・ブラン 2017年』
フェレイラ氏が特に気に入っているというアイテム。ミネラルのアロマが、ロバートソンの石灰岩土壌を表現している。4年以上熟成させることでスパイスやスモーキーな香りが備わった、複雑なワインとなっている。(希望小売価格3150円)
『ブリュット ロゼ 2015年』
ピノ・ノワール92パーセント、シャルドネ8%。熟したイチゴ、ラズベリーの果実味が際立っている。きめ細かな泡がやさしく口中を満たす。(希望小売価格3150円)
『ウルトラ ブリュット 2015年』
シャルドネ100パーセント。酸がしっかりと備わった高品質なブドウが収穫できた年だけ造る。熟した柑橘類、モモの風味。ブリオッシュやハチミツの香りも。ドライさとさわやかな果実味が弾ける。(希望小売価格4500円)
『キュヴェ・クライヴ 2015年』
ワイナリーのアイコンワイン。良年のみ、最も出来の良いブドウで造る。「2015年はとても良い年。ストラクチャーがあり、明るいテクスチャーが見事です」とフェレイラ氏。
この銘柄をベンチマークとし、ワイナリー全体の品質向上を目指している。基軸の一つはプレステージシャンパーニュで、高品質なシャンパーニュを飲んで日夜研究しているという。(希望小売価格6050円)
「メトード・キャップ・クラシック」(MCC)の規則改定
2021年から、最低熟成期間が9カ月から12カ月に変更となった(認定は22年から)。これはフェレイラ氏が長い間目指してきた規定だ。MCCの可能性を信じているフェレイラ氏は、グラハム・ベック・ワインズではNVで15~18カ月、ミレジム(ヴィンテージ付きのもの)で4年以上、プレステージキュヴェで5年以上の熟成をすでに行っている。
南アフリカのMCC、次なる飛躍に大きな期待がかかる。
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