ソムリエと樋口真一郎氏(髭男爵)と学ぶ品種の勉強会。ワイン用ブドウ品種について、基礎知識から味わい方まで、とことん学ぶ連載。本誌『ワイン王国 128号』にも詳しく掲載されているので、併せてご覧ください。(デジタル版はこちらから→https://www.stereosound-store.jp/fs/ssstore/bsw_wk/wk128)
第1回目の「カベルネ・ソーヴィニヨン」に続く今回のテーマは「サンジョヴェーゼ」。「パレスホテル東京」ソムリエの瀧田昌孝氏と樋口真一郎氏と一緒に、イタリア全土で最も普及している黒ブドウ品種であるサンジョヴェーゼの魅力に迫る。
サンジョヴェーゼのいろは
生育が遅く晩熟型で、主要産地であるイタリア中部のトスカーナ州の土壌と相性が良い。キアンティ、キアンティ・クラッシコ、ブルネッロ・ディ・モンタルチーノの主要品種として名高い。突然変異を起こしやすくクローン(亜種)が多いのが特徴。
<主な香り>
レッドチェリーなど赤系果実がメイン。産地により黒系果実やブラックオリーヴなども
<味わい>
みずみずしい酸と豊富なタンニンが特徴。果実味豊かでフレッシュなものから、重厚で凝縮感のあるものまで多種多様
<シノニム>
ブルネッロ、プルニョーロ・ジェンティーレ、モレッリーノ、サンジョベートなど
バラエティ―豊かで自由な品種
ワインを飲み慣れている樋口氏も「どんな品種か、実はあまり考えたことがなかった」というサンジョヴェーゼ。イタリア、主にトスカーナ州を代表する品種だが、どんな特徴があるのだろうか。瀧田氏に解説してもらった。
「トスカーナ州は各地で高品質なワインが生産されており、その赤ワインのほとんどがサンジョヴェーゼ主体。基本の香りはザクロやレッドプラムなどの赤系果実で、産地によって黒系果実になる場合も。味わいはみずみずしさを持ちながらもドライな酸が特徴です。」
また、産地ごとに多彩な表情を見せるサンジョヴェーゼは、料理との相性の幅がとても広いという。
「醤油やみりんなど和風調味料とも合いますよね」と樋口氏。コンビニで買ったサンジョヴェーゼにはピザ味のポテトチップスを合わせるという樋口氏のスタイルに対して、瀧田氏は「それ、すごくいいと思いますよ。自由にカジュアルに楽しめるのがサンジョヴェーゼの魅力ですから」と太鼓判を押した。
これぞ! サンジョヴェーゼ 7選
品種の個性がしっかりと表現された7アイテムを紹介。
造り手や産地による味わいの違いを知り、お気に入りの1本を見付けよう。
『フェルシナ ベラルデンガ キアンティ・コッリ・セネージ 2018年』
ラズベリーやイチゴなどの赤系果実の香りに、ローズマリーやユーカリのような清涼感、ほのかにアニスやリコリスのニュアンスも。口当たりは滑らかで、果実の甘やかさとドライでみずみずしい酸のバランスが心地よく、親しみやすい味わい。
『カステロ・ダルボラ・キアンティ・クラシコ 2019年』
イチゴやザクロの凝縮感のある赤系果実にスミレのアロマ。粘土石灰質土壌に由来するミネラルのニュアンスが上品な印象。口に含むと果実の旨味がじわっと広がるボリュームのある味わい。中盤から後半にかけて丸みのある酸をしっかりと感じ、余韻も長い。
『チェッキ キャンティ・クラシコ“ストーリア・ディ・ファミリア”赤 2019年』
ブルーベリーやブラックベリー、カシスなどの黒系果実を煮詰めたような甘く凝縮感のある香りに、クローヴのようなスパイスのニュアンスが重なる。熟したブドウのジューシーな果実味と穏やかで持続性のある酸、タンニンが口の中でバランス良くまとまる。
『チンギアーレ サンジョヴェーゼ 2020年』
ブルーベリージャムを思わせる火を入れた黒系果実の香りに、シナモンに似た甘苦いニュアンスもあり複雑。口に含むと凝縮感がありパワフルな印象。酸は穏やかで果実味が豊か。中盤から感じる
力強いタンニンが骨格を形成する、ボリュームのある1本。
『サッソアッローロ 2018年』
カシスやブラックベリーなどの黒系果実の香りにヘーゼルナッツや干しブドウ、ほのかにコーヒーも感じられ複雑。口に含むと熟した果実の甘さが広がる。中盤からドライな酸とエレガントなミネラルが一気に現れ、豊かなタンニンを伴い、長い余韻へと導く。
『“ラ・セルヴァネッラ”キアンティ・クラッシコ・リゼルヴァ 2015年』
レッドプラムやザクロの熟した赤系果実に、干しブドウなどのドライフルーツやリコリスの香りが重なる。骨格のある酸が、熟したブドウの豊かな果実味や滑らかなタンニンを支え、アフターまで導く。口中できれいにまとまり、旨味と充実感のある味わい。
『チェッキ ヴィノ・ノービレ・ディ・モンテプルチアーノ 赤 2016年』
赤スグリを思わせる赤系果実や、スミレのやさしいアロマ。ハーブやシダなどの植物のニュアンスも重なる。冷涼な産地由来のミネラル感とレモンのようなさわやかさ。繊細な酸がしっかりと感じられ、果実味とタンニンとのバランスも良い。
多彩な味わいを料理に合わせる
7本のワインを試飲し、樋口氏は「サンジョヴェーゼが実に個性豊かなことに驚きました。フレッシュで親しみやすいものから凝縮したタイプまで多彩。共通してしっかりとした酸があり、それが料理との相性を高めることが実感できました」と振り返った。
瀧田氏によると、冷涼な年には栽培が難しいとされてきたサンジョヴェーゼだが、温暖化の影響や醸造技術の進歩により、質の高いワインが増えたという。
価格も味わいも多彩なサンジョヴェーゼ。みんなでサンジョヴェーゼと料理を持ち寄って楽しむのも良さそうだ。
本誌では、今回登場したワインのより詳しい解説や、それぞれのワインに合わせたい料理など、さらに充実した内容をお届け。瀧田氏、樋口氏と一緒に、サンジョヴェーゼをマスターしよう!