ベルナール・マグレ氏が率いる「ヴィニョーブル・ベルナール・マグレ」は名声を持つボルドーの四つの格付けアペラシオンにシャトーを所有していることで知られている。
今年も4シャトー、(「シャトー・パップ・クレマン《Grand Cru Classé de Graves》」、「シャトー・ラ・トゥール・カルネ《Grand Cru Classé 1855. Haut-Médoc》」、「シャトー・フォンブロージュ《Saint-Emilion Grand Cru》」、「クロ・オ・ペラゲ《Premier Grand Cru Classé de Sauternes 1855》」)と「シャトー・レ・グラン・シェーヌ(Medoc)」、計5シャトーのプリムール試飲ボトルを関係者に配布した。
2021年は、栽培家の経験と技量、そして栽培哲学が試されたミレジム
挨拶文の中でベルナール・マグレ氏は「多くの人が理解しているように、われわれ栽培家にとってこのミレジムは本当に挑戦しがいのあるものだった。冷涼で湿度の高い天候が長期間続き、生育期間を通して多くの天候上の危険に直面した。しかし、幸いにも夏以降は天候が回復し、よい条件下で収穫を終えることができた。私たちが蓄積したボルドーのブドウ畑に関する格別な経験が、この年のさまざまな自然の障害をすべて克服し、この2021年ミレジムの5シャトーのワインを皆さまにお届けすることを可能にした」と語っている。
確かに、これほど栽培家の経験と技量、そして栽培哲学が試されたミレジムはあまりない。すべての困難が怒涛のように繰り返し襲ってきたヴィンテージだ。だから、完璧なワインは極めて少ない。濃縮の欠けるやや軽いワインが多い。しかし心地よいワインがあちこちで見つかる。ベルナール・マグレのボトルも、樽香から解放され、伸び伸びとした果実味、新鮮さが感じられた。
「シャトー・パプ・クレマン」
CHÂTEAU PAPE CLÉMENT
シャトー・パプ・クレマン
(Grand Cru Classé De Graves)
「シャトー・パプ・クレマン」のブドウ園を最初に造ったのはボルドーの貴族ベルトラン・ド・ゴット。かれはボルドーの大司教を経て、1305年から1314年までクレマン5世の名で教皇をとなったことから、教皇栽培家(Pape-Vigneron)と呼ばれた。
収穫は9月28日から10月14日。成育期間を通して涼しい気温が続き、適度な糖分とフレッシュなアロマ、そしてゆっくりとした熟成による申し分のないフェノールの成熟が得られた。
最新鋭の機械を使い、ソフトに除梗し、光学式選別機で選果。発酵前マセラシオンを10℃で24時間から48時間かけて行った後、木桶とステンレスタンクで醸造。セレクションした酵母で発酵をスタートさせ、その後自生酵母で15日から20日間アルコール発酵。発酵後のマセラシオンは約10日間。その後、不活性ガスで覆いながらマールを圧搾。バリックでマロラクティック発酵を行い、その後バリック(91パーセント)とフードル(9パーセント)で熟成。
2021年ヴィンテージはフィネスとフレッシュさが際立つワインだ。特にスミレやカシスなどの力強く複雑な黒い果実の香りがあり、時間と共に甘草のニュアンスやチョコレートのニュアンスが加わる。さらにエレガントで控えめなスパイシーなニュアンスとスモーキーさが混じりあい心地いい。
収穫は例年より1週間遅い9月8日から9月23日。収穫時の朝の気温が4℃前後と低く、ブドウのアロマの鮮度が保たれ、力強さ、フレッシュさが際立っており、アロマの質も素晴らしい。
醸造容器は多様で、50パーセントを8、10、15、20hlのフードル(新樽比率16パーセント)で、47パーセントを225、320,350、400、500リットルのバリック(新樽比率21パーセント)で行う。わずかながらセラミック製の桶(2パーセント)とトヌルリ・アルマ社特製の底がセラミックで覆われたバリックも(1パーセント)も使用している。アルコール発酵は15度から22度で15日間。
明るいイエローで柑橘、白い果実、エキゾチックフルーツのアロマ、ペストリーと上質なスパイスの香りも漂う。味わいに力があり、ブーケの複雑さとともにワインの心地よさが口全体に広がる。さらにミネラルや爽やかな塩気が長く伸びていく。
赤スグリ、ラズベリー、カシスの香りにブリオッシュやスパイシーなアロマが交じり合う。適度な緊張感と美しいシルキーの感触、さらにフィニッシュが長く、程よいフレッシュさとテクスチャーが感じられる。
淡い色彩で美しいグリーンの反映がある。柑橘類やエキゾチックフルーツの表情豊かなアロマ。空気に触れさせると花のアロマが出てくる。味わいはエレガントでフレッシュ、ほどよいボディがある。フルーティーでフローラルなアロマがフィニッシュまで続き、とても魅力的。
「シャトー・ラ・トゥール・カルネ」
CHÂTEAU LA TOUR CARNET
シャトー・ラ・トゥール・カルネ
(Grand Cru Classé En 1855.Haut-Médoc)
「シャトー・ラ・トゥール・カルネ」の最初の収穫は、1337年から1453年まで続いた王位継承をめぐる内戦(百年戦争)のさ中、1409年と言われる。後に、フランスの偉大な哲学者、モンテーニュのファミリーがオーナーとなった。
メルロの収穫が9月28日から10月8日。カベルネ・ソーヴィニヨンが10月4日から10月14日。液体窒素使ったシステムで収穫ブドウを冷やしし、2~5日間、8℃で発酵前マセラシオンを行った後木桶とステンレスタンクで醸造。新樽を使い一部(7パーセント)ヴィニフィカシオン・アンテグラルを行う。熟成は新樽1/3、一年樽1/3、二年樽1/3。
美しく鮮やかな濃い赤色。新鮮な果実のアロマ、ヴァニラのタッチが加わりブーケがより複雑になる。口に含むとピュア―でビロードのようなアタック、バランスがあり、フィニッシュの長さが素晴らしい。
収穫はソーヴィニヨン・ブランが9月21日と27日、セミヨンが9月27日。夜間、早朝に収穫し、冷蔵車で醸造所に運ぶ。全房圧搾。醸造は20パーセントを新樽のバリックで、残りを400リットル樽で15日間。その後、バトナージュを行いながら滓と共に熟成。
グリーンの反映が混じる美しい薄い金色。最初の香りは、白い果実、洋ナシ、桃のアロマ。グラスを回すとミネラル、少しパイナップルの香りが感じられる。口に含むと丸く厚みのあるアタック。程よい酸味があり、口の中でバランスが取れる。
「シャトー・フォンブロージュ」
CHÂTEAU FOMBRAUGE
シャトー・フォンブロージュ
(Saint-Emilion Grand Cru)
「シャトー・フォンブラージュ」は、15世紀のカノール家からベルナール・マグレズ家まで、六つの家系が代々受け継いできた。2012年の格付けでグラン・クリュ・クラッセの格付けを得た。最初の収穫は1599年。
メルロの収穫が9月30日から10月7日、カベルネ・フランが10月7日から18日。テロワール別、品種別、樹齢別に区画を分け、さらにその区画内で樹勢・成熟度マップを用いてさらに選別して収穫。テーブル上で選別後除梗し、光学式選別機にかける。
一部のタンクは8℃、3~5日間、発酵前マセラシオンを行う。醸造は木製、ステンレス製、コンクリート製タンク(80hlと72hl)を使って行う。さらにワインと木の調和のとれたマリアージュを実現するために、70個のバリックを使ってヴィニフィカシオン・アンテグラルを行う。
キュヴェゾンはメルロが28〜32日、カベルネ・フランが26〜28日。マロラクティック発酵は樽(新樽2/3、1年樽1/3)またはタンク(ステンレスとコンクリート)で行う。熟成16ヶ月間(35パーセント新樽、65パーセント1年樽)。
濃い赤色。チェリー、ブラックベリー、ラズベリーのアロマにスパイシーなアロマが混じる。口に含むと、まろやかでシルキーな味わいが広がり、タンニンのエレガントさが感じられる。最後にアロマの豊かさと長くまろやかな後味が続く。
「クロ・オ・ペラゲ」
CLOS HAUT-PEYRAGUEY
クロ・オ・ペラゲ
(Premier Grand Cru Classé DeSauternes En 1855)
ボンム村にあるソーテルヌ1855年格付け1級シャトーの一つ。17世紀の創設で、最初の収穫は1618年。村の丘の最高峰に位置する比類なき立地が、このテロワールに特別な条件を与えている。
10月1日に最初の収穫を、次いで2回目、2回目の収穫を10月14日、21日に、そして10月28日に最後の収穫を行った。ボンム村の畑の収穫率7.7hl、バルサック村の畑の収穫率が10hl。新樽と1年樽で醸造。
エキゾチックなフルーツと花のピュアな香り。砂糖漬けとローストのニュアンスが混ざり合い、フレッシュさアロマの複雑さが感じられる。また程よい酸がワインに十分な緊張感を与えている。
「シャトー・レ・グラン・シェーヌ」
CHÂTEAU LES GRANDS CHÊNES
シャトー・レ・グラン・シェーヌ
(Médoc)
サンテステフから15kmほど北上した、ガロンヌ河沿いの、かつて港町として栄えたサン・クリストリー・デュ・メドック村にある。美しい砂質土壌の葡萄園を持つシャトー。最初の収穫は1880年。
セレクション酵母使用。キュヴェゾン28-30日。熟成は50パーセントタンク、45パーセントバリック、5パーセントジャール。
深い紫色。熟したイチゴやチェリーなどの赤い果実の香りに加え、メントールや甘草の香り。デリケートな口当たり、シルキーなタッチ、そして長い余韻につながるフレッシュさが感じられる。