石灰岩の広がる独特の土壌
ニュージーランドには優れたピノ・ノワール産地が多い。最大の産地はマルボロで、内陸のセントラル・オタゴも評価が高いが、世界の専門家が今注目しているのがワイパラ・ヴァレーとノース・カンタベリーだ。クライストチャーチから北に1時間のこの地は、石灰岩が広がる珍しい土壌で、ペガサス湾から冷たい海風が吹き付ける。
「ピラミッド・ヴァレー」はノース・カンタベリーを代表するワイナリー。ブルゴーニュに傾倒していたマイク&クラウディア・ワーシング夫妻が1999年に土地を購入して、ピノ・ ノワールとシャルドネを自根で植え始めた。バイオダイナミックスで栽培するワインは、短期間で高い評価を得た。
スティーブ・スミスMWとアメリカ人の投資家ブライアン・シェス氏が2017年に引き継いでからも、その勢いは衰えない。単一畑『ピノ・ノワール アース・スモーク 2 0 1 9年』は、注目のワインメディア『ヴィノス』で4月に行われたニュージーランド・赤ワイン特集で最高点の98点を獲得した。
「ドメーヌ・デュジャック」譲りの全房発酵
最良のブルゴーニュと見紛うよう なチョーキーな個性とエネルギーが、ここのピノ・ノワールの持ち味。それもそのはず。ワインメーカーの ヒュー・キンチ氏は、ブルゴーニュの「ドメーヌ・デュジャック」やサンタ・バーバラの「ホナタ」など、世界に冠たるワイナリーで経験を積んだ。ニュージーランドを知り尽くすスミスMWのアドバイスも受けて、全房発酵をデリケートに取り込んだエレガントなワインに仕上げている。ムルソーの「ドメーヌ・ルーロ」のファンというだけあって、シャルドネも抑制されて、緊張感が溢れている。ブルゴーニュ愛好家ならブックマークはマストの造り手である。
ここでは、秀逸な単一畑の『ホーム・ヴィンヤーズ・シリーズ』だけでなく、代表的な産地から造る『アペラシオン・シリーズ』も充実している。ニュージーランドワインをある程度飲んだ人なら、マルボロ、ノース・カンタベリー、セントラル・オタゴの違いがきれいに表れている味わいに印象づけられるだろう。
「センス・オブ・プレイスを表現するのが私の仕事。ニュージーランドの産地の多様性を表現するのが楽しい」
世界を知り、ニュージーランドの各地でも経験を積んだ彼の造るワインは飲むたびに発見がある。
text by Akihiko YAMAMOTO
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