「ルイ・ロデレール」最高醸造責任者兼副社長のジャン・バティスト・レカイヨン氏が来日した。帝国ホテル東京の日本料理レストラン「寅黒」で‟メゾンの新しい顔”である『COLLECTION 243』について語ってくれた。
「皆さん、お久しぶり! 再会できてうれしいです」――。「ルイ・ロデレール」最高醸造責任者兼副社長のジャン・バティスト・レカイヨン氏は、顔なじみのワインジャーナリストたちに囲まれながら満面の笑みを浮かべた。場所は、帝国ホテル東京の日本料理レストラン「寅黒」。日本の四季を映した繊細な料理で食通を魅了することで知られる。秋の食材とともにルイ・ロデレールのシャンパーニュを味わうという趣旨だが、ここにはルイ・ロデレールの”新しい顔”が待っていた。
それが、この11月にリリースされる『ルイ・ロデレール COLLECTION 243』だ。これは、メゾンのフラッグシップであった『ルイ・ロデレール ブリュット・プルミエ』に変わって、2020年に新たに『COLLECTION 241』として誕生したもの(非売品)。21年には『COLLECTION 242』が初めて発売されており、『COLLECTION 243』は2度目のリリースとなる。
実は、日本のワインメディアは、昨年ルイ・ロデレールから『COLLECTION 242』リリースのニュースを受け取っており、オンラインでもレカイヨン氏のセミナーが行われたが、対面でのセミナーは3年ぶりということもあり、レカイヨン氏の喜びもひとしおだったのだ。
乾杯の後で、レカイヨン氏はこう語った。
「長年愛されてきた『ブリュット・ブルミエ』を『COLLECTION』に変えることは、リスクを伴った大きな冒険でした。ですが、この20年間の気候変動をかんがみると‟私たちはより自然に寄り添ったスタイルのシャンパーニュを造るべきではないか”という考えに行きついたのです。地球温暖化はシャンパーニュ地方でも進んでいて、ブドウも以前より早く完熟するようになりました。自然に対する危惧は常にあり、私たちは気候変動にきちんと向き合っていかなくてはならないと考えていますが、マイナス面だけを見てもいけない。今の気候で、どんなシャンパーニュが造れるか、取り組まなくてはいけないと思ったのです」
そして、レカイヨン氏が導き出した答えが「フラッグシップを、メゾンのスタイルからテロワールの表現へと舵を切ること」だった。その年に収穫したブドウの個性を生かしつつ、リザーヴワインをアサンブラージュすることでメゾンのスタイルを表現する。その新たな思いを、レカイヨン氏は『COLLECTION』に込めた。結果、仕上がったのは、ヴィンテージの魅力をたたえつつも、透明感と優雅さに満ちた‟ルイ・ロデレールらしさ”を感じさせるキュヴェだった。
レカイヨン氏のセミナーの後、「寅黒」の料理と『COLLECTION』との‟マリアージュの宴”が始まった。これは、『COLLECTION 241』『COLLECTION 242』『COLLECTION 243』を飲み比べ、同時に「先付(伊勢海老・翡翠茄子・白味噌)」「揚物(穴子俵揚げ・牛蒡・昆布塩)」「椀物(松茸すり流し・煮麺・新銀杏)」「造り(紅葉鯛・うに・生のり・山葵・新いくら・帆立ムース)」と自由なペアリングを楽しみ、魅力を探ろうという試み。
驚いたのは『COLLECTION』を通じて、メゾンのスタイルに全くブレがなく、エレガンスとピュアさを表現していること、そして、どれもが個性に溢れていたことだ。
例えば、2016年のブドウが中心の『COLLECTION241』は塩味のあるミネラルとまろやかな果実味を感じさせ、17年のブドウを軸とした『COLLECTION 242』は熟成感と繊細さに満ちている。そして、18年を中心とした『COLLECTION 243』は、芳醇で奥行きのある味わいだ。それぞれのシャンパーニュはテロワールの特徴を備えながら、すべての料理に自然に寄り添って、個々の美食シーンを楽しませてくれるのだ。
11月リリースの『COLLECTION243』に関していえば、日本料理との相性が‟極めて”良いことだろうか。「先付」では伊勢海老の自然な甘さに寄り添い、「揚物」では牛蒡の土っぽさをより魅力的に変える。そして「椀物」では松茸すり流しの香り豊かなだしをしっかりと受け止める。「造り」では、うにとの相性が抜群だ。
レカイヨン氏は言う。
「‟COLLECTION”は完成形でなく、私たちの進化の過程と言っていい。より高みを目指すべく、日々自然と向き合って、ルイ・ロデレールらしいシャンパーニュを造り続けたいと思っています」