世界ソムリエ協会(A.S.I.、ウイリアム・ヴターズ会長)が主催する「世界最優秀ソムリエコンクール」の決勝大会が2月12日、パリ郊外のパリ・ラ・デファンス・アリーナで開催され、ラトビアのレイモンド・トムソン氏が優勝した。2位は前回ベルギー大会で2位だったデンマークのニーナ・ヤンセン氏、3位は中国のリーズ・チョイ氏。以下、4位フランス(パスカリンヌ・ペルティエ氏)、5位日本(岩田 渉氏)、6位アルゼンチン(ヴァレリア・ガムペール氏)、7位南アフリカ、8位ニュージーランド、9位オーストリア、10位キプロス、11位ベルギー、12位スイス、13位台湾、14位アイスランド、15位米国、16位ノルウェー、17位マレーシア。

画像: 優勝し、フランスソムリエ協会フィリップ・フォルブラック氏から優勝記念品を受け取るレイモンド・トムソン氏

優勝し、フランスソムリエ協会フィリップ・フォルブラック氏から優勝記念品を受け取るレイモンド・トムソン氏

画像: 今回の「世界最優秀ソムリエコンクール」には、世界65カ国から総勢68人のソムリエがエントリーした

今回の「世界最優秀ソムリエコンクール」には、世界65カ国から総勢68人のソムリエがエントリーした

画像: 準々決勝、準決勝を勝ち抜いて最終戦に残った、デンマーク、ラトビア、中国の代表

準々決勝、準決勝を勝ち抜いて最終戦に残った、デンマーク、ラトビア、中国の代表

フランスでの世界大会開催は1986年から36年振り。コロナ禍で延期される中、フランスソムリエ協会を率いるフィリップ・フォルブラック氏(1992年リオデジャネイロ大会優勝)を中心にオリヴィエ・プシエ氏(2000年のモントリオール大会優勝し)、田崎真也氏(1995年東京大会優勝)など歴代の世界最優秀ソムリエらが尽力し、ワイン、ガストロノミー王国に恥じない世界大会を成功させた。

2月7日から始まった予選で68名の中から17人が選ばれ、さらに決勝前日に行われた準決勝の結果が決勝戦直前に発表され、上位3名が公開の場での本選に臨んだ。決勝戦が行われたパリ・ラ・デファンス・アリーナは2017年に総工費約500億円をかけて建設された、最大収容人員6万人を誇るヨーロッパ最大の完全密閉型屋内スタジアム。世界的なアーティストによるコンサートやさまざまな運動競技が行われている。当日はその一部を仕切り、有料の一般入場者を含め、4000人の観客が見守るなかで、最終戦に残った3人が、3テーブルに客を迎えての接客、サービス、デカンタシオン、デギュスタシオン、ワインリストの訂正などの課題に挑戦した。最後に数枚の写真から該当するワインを答えるクイズ形式の問題が出され観客の興味を引いた。

画像: 授賞式にはジャン・リュック・プトー氏(1983年優勝)、ジャンクロード・ジャンボン氏(1986年優勝)など歴代の優勝者が勢ぞろいし、新しい世界最優秀ソムリエを讃えた

授賞式にはジャン・リュック・プトー氏(1983年優勝)、ジャンクロード・ジャンボン氏(1986年優勝)など歴代の優勝者が勢ぞろいし、新しい世界最優秀ソムリエを讃えた

審査責任者を務めたオリヴィエ・プシエ氏は、ソムリエにとって最も大事なことは接客サービスであり、優勝したレイモン・トムソン氏は常に落ち着いて適格な対応を行った。また、デギュスタシオンについても明快な表現で説明したと高く評価した。これまでの大会では、最終戦に伝統的なワイン消費国の代表が必ず一人は残っていたが、今回は比較的ワインの伝統が新しいラトビア、デンマーク、中国の3国が上位に残り、ソムリエがより国際的な職業として洗練、発展していることをうかがわせるものとなった。

接客、サービス、デカンタシオン、デギュスタシオン、ワインリストの訂正などの課題に挑戦

画像: 一般ワイン愛好家を含め、4000人の大観衆で埋まった大会会場

一般ワイン愛好家を含め、4000人の大観衆で埋まった大会会場

決勝戦は、招待されたフランスのソムリエコースの学生400名のほか、レストラン、ワイン&スピリッツ業界関係者、そして一般ワイン愛好家ら4000人が見守る中で2回の予選を勝ち抜いた3名が各45分間、ソムリエとしての知識、幅広いテイスティング能力、臨機応変で冷静なサービスの技量などを見極める内容の濃い課題に挑戦。

試験は、3テーブルを受け持ち、最初のテーブルでシャンパーニュのサービスとバーテンダーと協力したマルガリータのサービス。その後『シャトー・ディサン2019年』マグナムのデカンタ、さらに提示された4本のボトルと料理の組み合わせ。テーブルサービス後に、4種の白ワインのテースティング、2本の異なる赤ワインのブラインド・テイスティングなどが行われた。

画像: サービスに使われた『ドン ペリニヨン 2013』と『シャトー・ディサン・マグナム 2013年』

サービスに使われた『ドン ペリニヨン 2013』と『シャトー・ディサン・マグナム 2013年』

画像: 白ワインのデギュスタシオンの課題として出された4本のボトル

白ワインのデギュスタシオンの課題として出された4本のボトル

画像: 赤ワインのデギュスタシオンの課題として出された『ペトリュス2012年』と同じく『2003年』

赤ワインのデギュスタシオンの課題として出された『ペトリュス2012年』と同じく『2003年』

画像: 接客、サービス、デカンタシオン、デギュスタシオン、ワインリストの訂正などの課題に挑戦
画像: 3人ともかなりてこずったワインリストの間違いを訂正する問題

3人ともかなりてこずったワインリストの間違いを訂正する問題

世界最優秀ソムリエのタイトルを獲得した、ラトビアのレイモンド・トムソン氏

画像: 授賞式後の記者会見でにこやかに質問に答えるレイモンド・トムソン氏

授賞式後の記者会見でにこやかに質問に答えるレイモンド・トムソン氏

今大会で優勝し世界最優秀ソムリエのタイトルを獲得したレイモンド・トムソン氏は43歳。前回、2019年、ベルギーのアントワープで行われた世界ソムリエコンクールで最終戦に残ったが3位に留まり、捲土重来を期して3年間訓練を積み、見事優勝を果たした。現在、バルト三国最大の都市、ラトビアのリガに設立したファインワイン輸入会社、「バラント・ワイン・コレクターズ(“Barents Wine Collectors”)」のディレクターを務めているほか、共同で立ち上げたプレミアムワイン学習プラットフォーム、「ワインティーチ」を運営している。

表彰式後の記者会見で、「今はまだ、正直夢のような気分だ。フランスのパリ、ワインの聖地で行われた決勝戦で勝てたことがとりわけうれしい。一番大変だったのはストレスをためないように、冷静に振舞うこと。理論的な知識には自信があったが、2019年のベルギー大会ではストレスが敵だった。今回優勝できたのは、それを上手く手なずけることができた為だと思う」と語った。審査にあたったオリヴィエ・プシエ氏は「レイモン・トムソン氏はとても落ち着きがあり、成熟していることが分かった。身のこなしがエレガントで、横顔に過剰なもの、荒々しいものがなく、呼吸も話し方もとてもリラックしていた。面白いことをいうわけではないが、相手と対話しながらユーモアを交えて話すことができる人物だ」と評価した。

ウイリアム・ヴターズ会長は「レイモンド・トムソン氏は今後、ASIの新しい代表となり、グローバルなソムリエのコミュニティに新風を吹き込んでくれるだろう」と祝福の言葉を述べた。知識でお客を押しつぶす様なスタイルを好む古いソムリエもかつてはいたが、そうした世界観はもはや滅んでいる。お客が、この人のサービスを受けて快適な時間を過ごしてみたいと思わせることがソムリエにとって一番大事なことだ。自然な振舞のなかでワインに対する情熱が自ずと伝わることが理想だろう。

コンクール後、会場内で、約2000人の招待客をもてなす夕食会が開かれ、各料理にあわせて多種多様なワインが振舞われた。着席したテーブルは偶然、次の世界最優秀ソムリエコンクール、リスボン2026年大会を主催するポルトガルのグループのもので、ポルトガル大使やポルト、ドウロワインの生産家らが、「次回リスボンの大会ではポルトだけでなく、ポルトガルにはさまざまな質の高いワインがあることを訴え、紹介したい」と抱負を語っていた。

画像: 授賞式後の夕食会では、日本酒『玉の光』、シャンパーニュ『ドン ペリニヨン 2013』などが振舞われた。

授賞式後の夕食会では、日本酒『玉の光』、シャンパーニュ『ドン ペリニヨン 2013』などが振舞われた。

画像: 「第17回A.S.I.世界最優秀ソムリエコンクール パリ大会」日本代表の岩田渉氏は5位、優勝はラトビアのレイモンド・トムソン氏

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