「モエ・エ・シャンドン」の歴史と技術の結晶ともいえる特別なキュヴェが誕生した。創業280周年というメゾンの歴史を物語るのは”すべてリザーヴワイン”という特別なシャンパーニュ。7月に来日した最高醸造責任者のブノワ・ゴエズ氏がその記念すべきキュヴェについて語ってくれた。。
長きにわたり、世界中で愛されてきた老舗シャンパーニュメゾン「モエ・エ・シャンドン」が、今年、創業280周年を迎えた。その長い歴史を物語るのが、最高醸造責任者ブノワ・ゴエズ氏の卓越したブレンド技術が表現された新しいキュヴェ『コレクション アンペリアル クリエイションNo.1』だ。また、アートとワイン造りの芸術性の融合を求め、アメリカ人アーティストのダニエル・アーシャム氏とのコラボレーションで制作された世界限定85本のアートピースと限定デザインボトルも同時に発売、ワイン愛好家の間で早くも話題となっている。
『コレクション アンペリアル クリエイションNo.1』は、メゾンが何世紀にもわたって培ってきた“サヴォワールヴァン(匠の技)”の結晶とも表現すべきもので、傑出したヴィンテージのリザーヴワインだけを使用、しかも“メゾン初のノン・ドザージュ”という革新的なキュヴェに仕上げている。ゴエズ氏はこう語る。
「このキュヴェは、メゾンの“オートエノロジー(最高醸造技術)”が編み出したもの。代々のセラーマスターたちが何世代にもわたって、卓越した技術とその芸術性を受け継いできました。同時に、メゾンが所有するシャンパーニュ地方最大級のリザーヴワインのコレクションも、キュヴェ誕生の礎となってくれました。実は、私は24年ほど前から、創業280周年に向けての新キュヴェの構想を持っていました。これは、メゾンの挑戦であると同時に、私個人の挑戦でもありました。“人生を賭けたプロジェクト”といってもいいほど熟考を重ねました」
『コレクション アンペリアル クリエイションNo.1』のベースにしたのは2013年ヴィンテージ。この年は収穫が遅かった年で、ブドウはゆっくりと熟し、控えめな果実味とデリケートな酸が魅力的。ゴエズ氏いわく「秋のニュアンスを感じる、クラシックな年」だという。ゴエズ氏は、この落ち着いたニュアンスを持つキュヴェに、完璧なヴィンテージの12年、豊かさを感じる10年、緊張感を持つ08年、太陽を思わせる06年、そしてさわやかさが魅力の00年をセレクトしてブレンド、そして、二次発酵後に瓶内でオリとともに熟成させたエレガントな04年を仕上げに加えて、『コレクション アンペリアル クリエイションNo.1』を完成させた。
「最初は、ベースとなる2013年ヴィンテージを理解することから始めました。このヴィンテージに補足すべきは何なのかを探っていきました。同時に、シュール・リーで保管されているキュヴェをすべてテイスティングし、全体のバランスを取りました。また、当初は、多少のドザージュを考えていたのですが、テイスティングをして、その深みのある味わいに『ドザージュは不要』と決めました。こうして、メゾン初のノン・ドザージュとなったのです」とゴエズ氏。
その味わいは限りなくエレガントで、複雑性と奥行きが感じられる。香りは蜜入りのリンゴやヴァニラ、ブリオッシュが際立ち、それぞれのヴィンテージのキュヴェが美しい熟成を重ねていることを物語る。ヴィンテージのみで造られた特別なシャンパーニュならではの深みを感じさせる。
ゴエズ氏によれば、このプロジェクトは今回だけではなく、2043年に迎えるメゾンの創業300周年という記念すべき節目に向けて、順次新しいシャンパーニュを発表し、「コレクション アンペリアル」のポートフォリオを充実させていく予定だという。
「私は、このたびこの『コレクション アンペリアル クリエイションNo.1』を発表できたことを誇りに思っています。これからもメゾンが実践するこのオートエノロジーを守り続け、そして次世代に渡したいと思っています」
唯一無二の美しきキュヴェは、確かにメゾンの集大成といえる。だが、おそらくは、それはまた新たな伝説の始まりでもあるに違いない。
text by Kimiko ANZAI
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