長野県には、会社勤めなどキャリアを経て移住しブドウ栽培やワイン造りの道を歩む生産者が少なくない。その一人、伊澤貴久氏に会うため、風光明媚な立科(たてしな)を訪ねた。

長野県立科町。浅間山や蓼科山を望む小高い丘の上に広がる「いざわの畑」を訪れると、日焼けした伊澤貴久氏が笑顔で迎えてくれた。

画像: 伊澤貴久氏 立科町にある「いざわの畑」。丁寧に手入れされた畑ではぐくまれるブドウは、冷涼な立科のテロワールをワインに映し出す。「収穫の時期には、ワイン好きの友人たちが手伝いに来てくれます」

伊澤貴久氏  
立科町にある「いざわの畑」。丁寧に手入れされた畑ではぐくまれるブドウは、冷涼な立科のテロワールをワインに映し出す。「収穫の時期には、ワイン好きの友人たちが手伝いに来てくれます」

長年、証券会社に勤めた後、農業関連ファンドでワイナリーへの投資案件を担当。その仕事を通じて、東御(とうみ)市にある「ヴィラデストワイナリー」の玉村豊男氏から新ワイナリー立ち上げの相談を受ける。のちの「アルカンヴィーニュ」である。この出会いが、伊澤氏を大きく動かした。
「50歳を過ぎたら、自然豊かで涼しい場所で何か物づくりをして暮らしたいと考えていました。自分も周りの人もワイン好きが多いことも後押しとなり、ブドウを育ててワインを造ろうと決意しました。ちょうど立科町がワイン用ブドウの試験栽培を始めるタイミングで研修生を募集していたことを知り、移住を決めたのです」

画像: 伊澤氏が手掛ける「コトー・デ・シュヴェレット」。 左から『タテシナルージュ 2022年』(3630円) 、『カベルネ・フラン 2023年』(3630円)、『メルロー 2023年』(3630円)、『ソーヴィニヨン・ブラン 2024年』(3300円)、『シャルドネ 2023年』(3630円) ※価格はすべて税込

伊澤氏が手掛ける「コトー・デ・シュヴェレット」
左から『タテシナルージュ 2022年』(3630円) 、『カベルネ・フラン 2023年』(3630円)、『メルロー 2023年』(3630円)、『ソーヴィニヨン・ブラン 2024年』(3300円)、『シャルドネ 2023年』(3630円)
※価格はすべて税込

かつて食用ブドウが作られていた荒廃地を切り拓き、2013年からブドウ栽培を開始。白はソーヴィニヨン・ブランとシャルドネ、赤はメルロ、カベルネ・フラン、カベルネ・ソーヴィニヨンなどを手掛ける。

「立科町は日照時間が長く、昼夜の寒暖差がはっきりしている。粘土質土壌でミネラルが豊富です。できる限り自然にやさしい方法で手をかけて栽培し、しっかり熟すまで待ってから収穫します」と伊澤氏。

醸造施設を持たないため、ブドウはアルカンヴィーニュに持ち込み仕込む。野生酵母で発酵し、余計なものを加えず醸されたワインは、果実味豊かでありながらエレガントな味わいだ。
「暑かった23年のカベルネ・フランは、華やかさと驚くほどの凝縮感を備え、品種特有の青っぽさはほとんど感じられない。数年寝かせれば、さらに味わいが溶け込んでいくはずです」と期待を寄せる。

メルロにはやや乾いた印象も見られるが、こちらも熟成によって花開く可能性を感じさせる。
その年ごとにブレンド比率を調整するボルドースタイルの『タテシナルージュ』は、酸味とタンニンのバランスが良く、「食事と合わせるなら、これがお勧めです」と語る。

ワインの名「コトー・デ・シュヴェレット」は「子ヤギの丘」の意。エチケット(ラベル)には、初代看板ヤギのモタとアサが描かれている。
「ヤギが好きで、いつか飼いたいと思っていたんです」と、伊澤氏は愛おしそうに目を細めた。
 立科の豊かな自然の中で、「夢」という原動力が美しいブドウとワインをはぐんでいる。

画像: 第2 の人生で花開いたワイン造り
「いざわの畑」(長野県)

「いざわの畑」
長野県北佐久郡立科町茂田井2599
オンラインショップ
「いざわの畑 ~Coteau des Chevrettes」
https://izawafield.shop-pro.jp
見学不可

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