「1855年格付けグラン・クリュ・クラッセ評議会(CONSEIL des GRANDS CRUS CLASSÉS en 1855、フィリップ・カステジャ会長)」は、2025年ヴィンテージについて、ボルドーを拠点に活躍する6名のワインコンサルタントにインタビューを実施した。以下の2025年産評価は、6人の発言の要旨をまとめたものだ。

エリック・ボワスノ博士(ボワスノ醸造研究所)

アクセル・マルシャル教授(アクセル・マルシャル・コンサルティング)
2025年のボルドーは、極端な気候条件と高度な栽培・醸造技術が融合した特筆すべきヴィンテージとして、収穫直後から注目を集めている。特に、2025年産の生育、収穫、醸造を現場で見守ってきたボルドーの醸造コンサルタント達は一様に「極めて高い品質の大変期待されるミレジーム」と評価している。また、市場も一様にこのヴィンテージを歓迎しており、厳しい状況が続くボルドーに笑顔を取り戻す年となりそうだ。
2025年の生育サイクルは極めて早く、すべての段階で成長が前倒しとなり、「スプリントの年」と呼ぶにふさわしい速さを示した。
夏は記録的な暑さとなり、7月と8月上旬(色づき直後)に二度の熱波が襲来した。同時に深刻な水分不足も発生したが、ブドウ樹は多くの土壌でこの極端な温度に耐え、各品種が完璧な成熟を達成した。病害の懸念もほとんどなく、栽培作業は順調に進んだため、生産者は比較的落ち着いて対応できた。
当初、夏の進行とともに2022年の再来を懸念する声もあった。しかし8月末から9月上旬の降雨が転機となり、太陽の猛威を和らげ、過度なアルコール上昇を回避した。この降雨後、ブドウは腐敗の心配なく着実に成熟を進め、醸造家は最適な収穫タイミングを慌てることなく選択できた。

ジュリアン・ヴィオ氏(ローラン&アソシエ)

ジュリアン・ラヴニュ氏(ドゥルノンクール・コンサルタント)
本年のワインが示す卓越した凝縮感は、極めて低い収量に起因する。収量減少には二つの要因が重なった。第1に、2024年ヴィンテージの影響が直接2025年に及び、平年と比べて房数が著しく少なかった。第2に、水分ストレスの結果、すべての品種で果粒が非常に小さくなった。エリック・ボワスノ氏は、特にメルローの果粒重量がこれほど低かった例を知らないと述べている。
収穫は極めて早期に始まり、地域によっては8月中旬から開始された。メドックでは1989年以来の早さを記録した。収穫期は高気圧に守られた秋らしい天候が続き、昼夜の大きな気温差がブドウの「新鮮さ」と「純粋さ」を保証した。
醸造においては、迅速かつ的確な介入が求められた。ロラン&アソシエ・ボルドーのジュリアン・ラヴニュ氏は、その作業を「光のような速さで、正確かつ的を絞った介入」と表現している。職人技と呼ぶべき精密なケアが、凝縮した果実から密度あるテクスチャーと、非常にボルドーらしい味わいの表現を引き出した。
ワインの特徴:古典と現代の融合
2025年のワインは、赤・辛口白・貴腐のすべてが高い水準を示す稀有な成功年である。
赤ワイン
凝縮感は際立つが、プロファイルはむしろ細身だ。アルコール度数は低めで、アロマの強さとフレッシュさがバランスを保つため、重さよりもエレガンスが前面に出る。タンニンは柔らかく、しなやかで非常に長い余韻を残す。ワインは印象的な滑らかさを持ち、飲みやすさが際立つ。アロマは過熟の影響が出ることなく非常に豊か。また、植物的要素は目立たず、見た目は濃厚でありながら酸度が保たれているため、驚くほどのフレッシュで、バランスが取れている。

ヴァレリー・ラヴィーニュ博士(ヴァレリー・ラヴィーニュ・コンサルタント)

トマ・デュクロ氏(ウノチーム)
白ワインと貴腐ワイン
辛口白も高評価だ。猛暑を乗り越えつつ、白ブドウはアロマのポテンシャルと酸を保ち、力強くかつ繊細な表現を示した。貴腐ワインは収量こそ少ないが、極めて高い品質水準に達しており、本当に美味なる貴腐が収穫された。
気候変動への適応力を証明
2025年ヴィンテージの成功はその年の優秀さを超える意味を持っている。つまり、2025年産の成功はボルドーの栽培品種が気候変動の激化に適応する力を持っていることの証明だともいえる。そして、世界中の消費者の関心を取り戻す理想的な基盤となることが期待されている。
凝縮感と優雅さ、そして予想外のフレッシュさを併せ持つ2025年ボルドーは、伝統を継承しつつ現代的な嗜好にも応える新時代のミレジムで、今後、ボルドーの新たな象徴的な年として語り継がれるものになると期待されている。

