2026年2月、パリで開催された「ワイン・パリス&ヴィネクスポ」において、元NBAプロバスケットボール選手のトニー・パーカー氏と、「メゾン・ウエスマン」を率いるロベール・ウエスマン氏が新しく立ち上げたシャンパーニュブランド、「トニー・パーカー&ロベール・ウエスマン」の発表会が開かれた。
「メゾン・ウエスマン」は、ジェネリック医薬品企業アルボジェン(Alvogen)、バイオ医薬品「アルボテック(Alvotech)」の創業者として知られるアイスランド出身の実業家、ロベール・ウエスマン氏が2016年に立ち上げたワイナリーグループ。ワイン事業を始めたきっかけは、フランス・ベルジュラック地方にある12世紀の古城、シャトー・ド・サン・セルナンの購入だ。その後、シャトーのあるベルジュラック、さらに南仏リムーにドメーヌを購入し、テロワールの尊重と醸造の精度を重視したワイン造りを行っている。また、ノラ・ジョーンズさんやJJジュリウス・ソン氏とのコラボレーションを通して、国際的な知名度が低いアペラシオンの情報発信に取り組んできた実績も評価されている。今回のプロジェクトはシャンパーニュという産地での新たな展開となる。

著名人とのコラボレーションをブランド戦略の一環として位置付けており、2025年にはグラミー賞歌手のノラ・ジョーンズさんが共同オーナーとして参画し「This Life」シリーズを発表。今回のトニー・パーカー氏との提携は、こうした一連のパートナーシップの延長線上にある。また、ベルジュラック地方ではシェフ、ティエリー・マルクス氏が手がけるレストランもオープンした。
プロジェクトの構造と役割分担
トニー・パーカー氏は、「サンアントニオ・スパーズ」で4度のNBA優勝を果たしたフランス出身の元選手で、引退後、ワイン事業に携わっている。両者は、ロベール・ウエスマンが持つ「ヴィニョーブル・デ・ヴェルド」での非公式なテイスティングの席で出会い、それぞれの事業における共通の価値観をもとに協業を決めたという。パーカー氏はこのブランドの共同オーナーとして新しい法人に出資しており、ロベール・ウエスマンとともに、キュヴェの方向性策定、テイスティング、ラベルデザインを含むブランドの主要な意思決定に関与した。しかし、パーカー氏はロベール・ウエスマンのワイン事業を統括する「メゾン・ウエスマン」本体の株式は保有しておらず、新しいシャンパーニュブランドの運営と技術面の管理はメゾン・ウエスマンが担う。
シャンパーニュの醸造パートナーには、シャンパーニュ地方最大規模を誇る協同組合連合「テロワール&ヴィニュロン・ド・シャンパーニュ(TEVC)」が選ばれた。アサンブラージュはTEVCの醸造チームが主導し、ウエスマン氏とパーカー氏がそのプロセスに加わって最終的なスタイルの承認を行った。
2つのキュヴェの概要

『TP9(ブリュット)』
『TP9(ブリュット)』はトニー・パーカー氏が現役時代に背負った9番のジャージにちなんで名付けられたノン・ミレジメ シャンパーニュ。ムニエ72%(マルヌ渓谷)、ピノ・ノワール20%、シャルドネ8%(セザンヌ地区)。ムニエを主体とした個性的なブレンドで3年間の熟成を経てリリース。ドザージュ8g/l、アルコール度数12.5%。
淡い黄色に美しい金色の反射を見せる澄んだ色合いで、細やかな気泡がエレガントに立ち昇る。モモやフルーツのジャム、ナッツに続き、キャラメリゼしたタルト・タタンを思わせる印象的でリッチな香りが広がる。口当たりは丸みがあり、柔らかで、柑橘のさわやかな酸が心地いい。フィニッシュには穏やかなスパイスが感じられ、バランスのよい余韻が残る。フランスでの小売価格は35ユーロで、一般流通チャンネルでの販売が予定されている。

『フォー・リングス ミレジメ 2014年』
『Four Rings ミレジメ 2014年』はパーカーが獲得した4つのNBA優勝リングにちなんで命名された。2014年は、熟成ポテンシャルに優れた例外的なヴィンテージ。このキュヴェはその年の最良のワインを10年間、澱とともに熟成させたプレステージキュヴェ。シャルドネ60%(トレパイユ、モングー地区)、ピノ・ノワール30%(プティット・モンターニュ・ド・ランスおよびオーブ)、ムニエ10%(プティット・モンターニュ・ド・ランス)。ドザージュ8g/l、アルコール度数12.5%。「シンフォニー」と呼ばれる胴の丸みが強調された専用ボトルを使用しており、この形状により、熟成中に瓶内の酵母とワインの接触面積が増し、澱の自己分解による複雑味が引き出されるという。
淡い金色の輝きをまとった美しい色調で、香りにはトーストしたパン、柑橘類、白い花のニュアンスが繊細に絡み合う。口に含むと、レモンゼストの生き生きとした酸が広がり、やがて温かなブリオッシュを思わせる豊かなコクのある味わいへと移行する。エレガントな余韻が長く続き、熟成によって生み出された奥行きのある味わいが楽しめる。こちらはホテル、バー、レストラン、高級飲食店など業務用チャンネル限定での展開となる。
「メゾン・ウエスマン」は"過小評価されているテロワールから質の高いワインを生産する"というコンセプトを掲げており、ボルドーに隠れて国際的な知名度が比較的低い南西フランスの産地の注目度を高めることを事業の柱の一つとしている。今回のシャンパーニュへの参入は、ベルジュラックおよびリムーに続く地理的な拡張であるとともに、著名人とのブランドコラボレーションを軸とする同社の国際展開戦略の一環だ。
現時点で『TP9』および『フォー・リングス』の市場投入時期について詳細は明らかにされていないが、日本を戦略的に重要な市場の1つとして位置付け、日本のワイン市場を熟知する人材を投入して、輸入取扱業者の選定を進めている。

