スペインの土着品種「ボバル」をご存知だろうか。DOウティエル・レケーナを代表する土着品種であり、DOの栽培面積の約7割を占めている黒ブドウ品種だ。
海あり山あり、そしてお米の産地でもあるスペインのバレンシア県は、日本の食文化にも通じるところがある。ボバルを使ったワインと、日本料理や日本の家庭料理との親和性は高く、今後、知られざるスペインの土着品種として脚光を浴びる可能性が見込まれている。
今回は「銀座 スリオラ」シェフソムリエの菊池貴行氏が、日本料理店「旬菜 おぐら家」にてボバルを使ったワイン10本と和食の相性を検証し、そのポテンシャルを探った。
和食によく用いられる魚介や鶏肉、牛肉。そして根菜や苦味のある青野菜。あらゆる食材とオールマイティな相性の良さを発揮するボバルワイン。
また、山椒やワサビなどの和の香辛料とのマッチングの良さも魅力だ。
柔らか海老しんじょうとあわ麩蒸し
海老の甘味とあわ麩のふんわり感に、膨らみのある黒ブドウのスパークリングを合わせて。
× タルシス・ウニコ・ブリュット・レセルバ 2016年
黒ブドウのボバルを使い、36カ月間の瓶内2次発酵を経たスパークリングワイン。豊かな泡立ち。エストラゴンやオレンジの花のアロマに柔らかでやさしいミネラル感が残る。
線の細いカバだと負けてしまいそうなところですが、アプリコットのような甘味を持つボバルの泡なら、海老やあわ麩、だしの旨味と同調します。
牡蠣と大浦ゴボウ サクサク揚げ しば漬けタルタル
牡蠣の濃厚なミネラル感を余韻に残す。ゴボウの土っぽさや日本の漬け物とも相性良し。
× ラ・ノビシア 2018年
スミレやイチゴ、赤い花などの華やかな香り。タンニンはきめ細かく、シルキーなタイプ。牡蠣の生臭みを抑え、磯の風味を長く余韻にとどめる。
日本の伝統的な漬け物であるしば漬けを刻んでタルタルに忍ばせることによって、ボバルのワインが持つタンニンのきめ細かさとのマッチングがさらに増してくる印象ですね。
聖護院大根と大山鶏団子 炊き合わせ 柚子がけ
柚子が香る大根と山椒を利かせた鶏肉に、酸とスパイス 香豊かなボバルを重ねて相乗効果を。
× パラヘ・トルネル 2016年
完熟したベリーの香りと豊かなスパイス香。生き生きとした酸と果実味のバランスがいい。
山椒のパンチが効いた鶏団子と、酸が生き生きとしてスパイシーなワインとの相性は抜群です。大根の滋味深さも引き出してくれます。
× ボバル・デ・サンファン・ティント 2018年
ベリーやメントール、ロー ズマリー、リコリスの香り。 さわやかさを感じる華やかなワイン。ハーブのタッチとベリー香が鶏肉を引き立てたてる。
鳴門鯛とセリの炊き合わせ
しなやかなボバルが炭火の香りをまとった鯛の甘味を引き出しつつ、セリの青みを包み込む。
× ビリャ・デ・アドノス・ボバル 2017年
スミレの花やブラックベリーの香り。若々しさがありながら酸はしっとり、滑らか。
× トロ・ロコ・スペリオール 2018年
ベリーやスパイスの香りに若々しい酸と優しいタンニン。果実味をコクが引き締める。
和牛と筍しゃぶしゃぶ 木の芽 あんかけ
黒系果実の味わいの凝縮感のあるボバルが和牛のとろみ とあん、炭火焼きの筍にマッチ。
× エル・ボバル・デ・エステナス 2018年
カシスやスミレのリキュール、凝縮感のある香り。完熟した果実味にタンニンや苦味も。スパイス感豊かでカシスやベリーのアロマを持った濃厚なボバルが牛肉と溶け合う。
× ファウスティーノ・リヴェロ・ウレシア レセルバ 2015年
熟したブドウのアロマにオリエンタルスパイスの香りと果実味。余韻にリッチなオーク香。
和牛炭火焼き ふきの唐ソースがけ
和牛の脂身の甘味とふきの唐の滋味深さに、ボバルの奥深い味わいがしみじみと染みわたる。
× パルシモニア・アウトール 2017年
ブラックベリーの果実香にロースト香も。ふくよかな果実味と滑らかなタンニンが特徴的。
× ラス・ドセス 2016年
イチゴのコンポートやバルサミコの香り、ユーカリのトーンも。豊かなタンニンと果実味。甘い香りとやさしい果実味が肉に寄り添う。
ボバルと和食の確かな親和性
ボバルは、メニューや調理法が多岐にわたる居酒屋やバルで重宝されるアイテムになりそうです。実際、レストランのワインペアリングコース中の1アイテムとしてもボバルは重宝しています。家庭でも、素朴な料理と合わせて気兼ねなく飲めるのがうれしいですね。
和食によく用いられる魚介や鶏肉、牛肉。そして根菜や苦味のある青野菜。あらゆる食材とオールマイティな相性の良さを発揮したボバルワイン。
また、山椒やワサビなどの和の香辛料とのマッチングの良さも魅力だ。
スペインの土着品種の中では地味だが、滋味深いボバルのワイン。その懐の広さと包容力に魅了されることは間違いない。ぜひ一度ボバルを体験して、我々の普段の食文化との相性の良さを体験してみてはいかがだろうか。
取材協力
旬菜 おぐら家
問い合わせ先:DOウティエル・レケーナ・プロモーション日本事務局
㈱アケヒ内 https://www.vinos-utiel-requena-jp.com/