![画像: 「ジャパンチーズアワード2020」セミナー
気鋭の生産者4人が2020年のチーズ造りと将来を語る](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783513/rc/2020/12/02/76c0e2e2f1978dc493c7f1cb3383577117305a65_xlarge.jpg)
10月に開催された「ジャパンチーズアワード2020」(NPO法人チーズプロフェッショナル協会主催、農林水産省後援)の表彰式が12月1日に行われ、式後にチーズ生産者によるディスカッション・セミナーが開催された。
セミナーには、今回のアワードで最優秀部門賞を初受賞した4生産者が登壇。2020年のチーズ造りの状況と、将来について語った。
![画像: 登壇したチーズ生産者 (鹿児島)「kotobukicheese」景山淳平氏 (京都)「るり渓やぎ農園」片岡明宜氏 (埼玉)「秩父やまなみチーズ工房」高沢徹氏 (岩手)「田野畑山地酪農牛乳株式会社milk port NAO」吉塚雄志氏 (写真左から)](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783513/rc/2020/12/02/d2e9eafe8fa99870c01e7609341f9fcf6131ee7c_xlarge.jpg)
登壇したチーズ生産者
(鹿児島)「kotobukicheese」景山淳平氏
(京都)「るり渓やぎ農園」片岡明宜氏
(埼玉)「秩父やまなみチーズ工房」高沢徹氏
(岩手)「田野畑山地酪農牛乳株式会社milk port NAO」吉塚雄志氏
(写真左から)
――今年はコロナウイルス感染拡大の影響があり、いつもと違う年になったと思います。
吉塚 うちのお客さんは県内が約8割を占めますが、これまで培ってきた関係が強く、そのためそれほど影響は大きくなかったです。
ただ、2017年に工房をスタートした時は勢いにまかせてという感じだったので、今になって熟成庫の設計に問題が見付かってきました。修理するための資金集めにクラウドファウンディングを設定したところ、当初300万円を目標にしていたのですが、最終的に600万円集まりました。われわれが進める「山地酪農」(放牧を基本とした酪農)に理解を持ってくれる人が増えたのだと実感しました。
![画像: 「田野畑山地酪農牛乳株式会社milk port NAO」吉塚雄志氏](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783513/rc/2020/12/02/a7c2b202d35072145347ee48c3fe613683978d50_xlarge.jpg)
「田野畑山地酪農牛乳株式会社milk port NAO」吉塚雄志氏
高沢 非常事態宣言が出されてからは、新商品の開発に専念しました。解除後は都心に近いこともあり、比較的早く人が戻ってきましたね。地元の人たち、飲食店や旅館などにも協力をいただき、常に在庫が切れないようにと注文をいただいていました。
また、今年はネット通販が伸びました。システムのケアを細かく行ったのも効果があったと思います。
![画像: 「秩父やまなみチーズ工房」高沢徹氏](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783513/rc/2020/12/02/3785699376d913b38651128224c3071238d1a06c_xlarge.jpg)
「秩父やまなみチーズ工房」高沢徹氏
片岡 うちは3月の終わりから5月の前半は売り上げが落ち込みました。直売所を閉め、レストランやホテルからの注文もなくなり、今もその影響が続いています。
一方で、ネット通販がかなり伸びまして、全体としては直販の落ち込みをカバーする売り上げがありました。うちは山羊乳のチーズ専門ということもあって認知度が低かったのですが、ここ1~2年はずいぶん知られてきたように思います。チーズ全般に対する関心が高まっているおかげですね。
![画像: 「るり渓やぎ農園」片岡明宜氏](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783513/rc/2020/12/02/a2b066aec268a6b309a3e75351606089090ef3cb_xlarge.jpg)
「るり渓やぎ農園」片岡明宜氏
景山 当社は90%以上がスーパーマーケットなどの小売店での取り扱いなので、売り上げは確保できました。ネット通販の注文も増えました。「芋焼酎のチーズ」など鹿児島らしい商品も開発しているので、それも支持されている一因だと思います。
![画像: 「kotobukicheese」景山淳平氏](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783513/rc/2020/12/02/b92ff1362af498d41014ea5f9d8859183b7b1785_xlarge.jpg)
「kotobukicheese」景山淳平氏
――日本のチーズはこんなに美味しくて個性豊か、ということをまずは知ってもらうことが大事です。それにはネットやSNSが有益ですね。
吉塚 そうですね。今はネット社会ですから、日本全国、そして世界とつながるために必要です。
高沢 海外のチーズもたくさん入ってきている今、価格競争という面では日本のチーズは厳しい立場にあります。でも造り手の思い、背景、ストーリーを直接伝えられるのが、造り手が近くにいる「日本のチーズ」のメリット。ネットで情報を発信したりお客さんに伝えたりしながら、理解してもらい、買ってもらう、ということを今後も実践していきたいです。
――来年の抱負を聞かせてください。
吉塚 山地酪農を全国、そして世界へ広げたいです。ミルクを供給してくださる酪農家さんのためにもいいチーズを造りたい。て
高沢 より美味しいチーズが造れるように努力したいです。安心・安全、そして地元秩父の良さを生かしたチーズに取り組むつもりです。
コロナ禍で生産を減らした時に実験的な試みをいろいろ行ったのですが、その一つとして自社製の乳酸菌を試しました。また県内の「弓削田醤油」に生きた酵母を使った醤油があって、それを使ってウオッシュしたチーズも造りました。今までにない味に仕上がりました。
片岡 今回のアワードでは、うちはフレッシュチーズが受賞しました。なので後は熟成タイプもがんばりたいです。将来的には、高原地帯の観光牧場にすることを夢見ています。粗飼料の自給も目指しています。
景山 私はイタリア、フランスでブルーチーズ造りを学んできました。うちも今ようやくブルーチーズが商品化できるようになりましたので、今後安定して造れるようにしたいです。
さらに、今知り合いのパティシエに協力いただいているのですが、鹿児島の美味しい牛乳で造るアイスクリームを商品化して広めたいと考えています。チーズはもちろん、乳製品の開発に力を注ぎたいです。