例年、3月末から4月初旬にボルドーでプリムールの試飲会が行われる。しかし今年に入ってからもコロナの感染が収まらず、今回も現地の試飲はネゴシアン、クルチエなどの関係者、国内の一部買い付け業者のみの閑散とした催しとなった。
ボルドーのプリムール、23アペラシオン、130シャトーを試飲
昨年同様、グラン・セルクル・デ・ヴァン・ド・ボルドー(23アペラシオン、130シャトー)の120本の見本ボトルを自宅に配送してもらい試飲。今回はそのうち上位60本を選んで紹介する。
プリムールは醸造後半年足らずの、まだ樽の中で日々変化している若いワインだ。また見本ボトルのワインはいつ、どの樽から採取したかによって大きく質が異なることが少なくない。
さらに、ブラインドによる試飲結果は毎回のことながら、これまでの経験によって得た各シャトーの質に対する評価に必ずしもそぐわないことがある。しかし今回もブラインドでの試飲評価をそのまま掲載することにした。
ボルドー・ワイン、2020年の特徴
ボルドー・ワインの2020年のミレジムを分かりやすく表現すれば、2018年と2019年、この二つのミレジムの中間に位置すると言えるだろう。また、良いミレジムが3年続くことは稀だが、1988-1989-1990年、1998-1999-2000年、2008-2009-2010年のように3年続きの良年が10年ごとに記録されていて、2018-2019-2000年もこの例に加えられるだろう。
2020年の冬は暖冬で例年より2週間早く発芽し5月末に開花が始まった。しかし、6月に入り不順な天候に変わってベト病が発生し、2018年の再来を心配した。幸い、その後天候が回復し、乾燥した天候となった。一部の畑は8月に始めに夏の干ばつで苦しんだが8月10日ころに雷雨があり、これによって水分ストレスが和らぎ、全体にはよく熟し、最終的に期待以上の良いミレジムとなった。
十分な濃縮とボリューム。長期熟成の期待が持てる年
白品種の収穫は非常に早く8月下旬に始まり9月に始めに終わった。量は少なかったが、新鮮で申し分のない上質のブドウを収穫した。赤品種はメルロの収穫が9月10日ころから一斉に始まり、9月半ばのやや不順な天候を挟んでカベルネの収穫が行われた。
2020年産の特徴は実が小さく、皮が厚く、例年より種が多かったことで、結果として十分濃縮したブドウが収穫できた。右岸を中心にここ数年、糖度の上がりすぎが懸念されているが、2020年はメルロが14度、カベルネは13度程度に落ち着いた。
タンニンの成分指標がこれまでになく高く、同時に酸も十分保たれた。収穫率は40hl程度でこれよって十分な濃縮がもたらされている。各種の分析指標から、2020年はかなり長期熟成の期待が持てるミレジムと言えるといえるだろう。試飲でも、味わいの中間で十分な濃縮とボリューム、そして暑いミレジムだった2019年に比べるとフィニッシュに繊細さと新鮮さが感じられた。
甘口ワインは9月の初めまでに十分熟したが、貴腐の繁殖が始まったのは9月中旬の雨以降でタイミングがやや遅れたため、申し分ない質だが収穫量は例年よりかなり少なくなった。
2020年はコロナ禍がブドウ栽培の面にも影響し、特に収穫人の健康に気を使ったが、最終的に好天の下で落ち着いた収穫を続けることができた年であった。