メゾン「フィリポナ」は、現当主シャルル・フィリポナ氏の祖父に当たるオーギュストとピエール・フィリポナ兄弟が1910年にマルイユ・シュル・アイで創業したネゴシアン(ワイン商)だ。シャンパーニュの数あるメゾンの中で創設がそれほど古いわけではないが、オーヴィレール修道院の最後の修道院長ドン・ジャン・ロワイエが残した遺書の中に、アヴリル・ル・フィリポナと呼ばれる人物が1522年にアイとデジー村の間にある「ル・レオン」と呼ばれる畑を所有していたことが記されている。

この畑を今でもメゾン・フィリポナが所有していることから、フィリポナ家はシャンパーニュで最も古い栽培家の一つだとして1522年に大変こだわっており、その年代を記したフィリポナの代表的キュヴェ『フィリポナ キュヴェ・1522』を販売している。

画像: 500周年記念誌『シャンパーニュの中心の500年の歴史』

500周年記念誌『シャンパーニュの中心の500年の歴史』

画像: 記念詩を共同執筆したメゾン「フィリポナ」のシャルル・フィリポナ社長(右)

記念詩を共同執筆したメゾン「フィリポナ」のシャルル・フィリポナ社長(右)

この記念すべき1522年から今年2022年が500年目(1522-2022)に当たることからメゾン・フィリポナは今春から幾つかの記念行事を開催している。6月27日にパリの「コレージュ・デ・ベルナルダン」で開かれた記念夕食会もその一つ。2000年からメゾン・フィリポナを率いるシャルル・フィリポナ社長と歴史家でジャーナリストのイヴ・テソン氏がまとめた『シャンパーニュの中心の500年の歴史』と題された書物の出版記念会を兼ねたもので、シャルル・フィリポナ氏の息子でメゾン・フィリポナの輸出部門を担当する、16代目に当たるフランソワ・フィリポナ氏や、フィリポナ・ブランドの各地区の営業担当者、ブドウ納入業者、輸入業者、主要な顧客、ワインジャーナリストなど150人が招かれた。
会場となった「コレージュ・デ・ベルナルダン」は1248年にパリ大学で学ぶシトー派修道士の宿泊施設として作られたもので、当時の歴史的な建築様式である高い丸天井が残っており、特に東洋人には大変エキゾティックな印象を与える。

画像: 「クレソンとキャヴィアの茶わん蒸し」

「クレソンとキャヴィアの茶わん蒸し」

画像: 新キュヴェ『レゼルブ・ペルペチュエル』

新キュヴェ『レゼルブ・ペルペチュエル』

画像: 「スペイン産赤身のマグロのグリル」

「スペイン産赤身のマグロのグリル」 

画像: 「4種の薬味を使ったセロリとトマト料理」

「4種の薬味を使ったセロリとトマト料理」

料理を担当したのはパリの二つ星レストラン「ラ・レゼルヴ・パリ」のジェローム・バンクテル氏。“先付け”として出された「クレソンとキャヴィアの茶わん蒸し」に合わせて用意された『レゼルブ・ペルペチュエル』は、500周年を記念して新たに作られたキュヴェで、瓶詰されたばかりの2020年産がマグナムでサービスされた。ヴァン・クレールの状態だが、フィリポナの辛口でピュアな妥協のない味わいがはっきりと感じられる。フィリポナは「*ソレラシステム」で造るリザーヴワイン(暦年のワイン1/3に新しい年のワイン2/3を組み込んだもの)を使ってノン・ミレジメ『ロワイヤル・レゼルヴ』を造っている。一方、今回発表されたノン・ミレジメ『レゼルブ・ペルペチュエル』は45hlのフードル熟成させた特別なリザーヴワインが使われている。原理的にはこれまでの「ソレラ」と変わりないが、古いワインが2/3、新しいワインが1/3とブレンド比率が逆になっている。

今回瓶詰された『レゼルブ・ペルペチュエル』(マグナム2022本)はフィリポナの記録を未来に残す“タイムカプセル”の役割を担うことになっており、5年毎に100本のマグナムが1世紀に亘って定期的に市場に出されることになっている。最初の100本は2027年に市場に出される予定だ。

画像: ブルターニュ産の発酵乳、レ・リボをつかった家禽肉料理

ブルターニュ産の発酵乳、レ・リボをつかった家禽肉料理

画像: 『1522 L.V. Grand Crus 2002』

『1522 L.V. Grand Crus 2002』

料理に合わせて出されたシャンパーニュは『グラン・ブラン2012 エクストラ・ブリュット』、『1522ロゼ プルミエクリュ2012 エクストラ・ブリュット』『1522 L.V.グランクリュ2002 エクストラ・ブリュット』『クロ・デ・ゴワス2012 エクストラ・ブリュット』などいずれも“2”で終わるミレジム。最後のデザートには30gの残糖がある『シュブリーム・レゼルヴ2009 セック』を合わせた。

フィリポナといえばプレステージュ・キュヴェ『クロ・デ・ゴワス』を思い浮かべる人が多いだろう。1935年に、当主の大叔父に当たるピエール・フィリポナが購入した5.5ヘクタールのこの畑は、マルイユ・シュル・アイ村の入り口にあり、マルヌ川に向かって真南に45度の急斜面で切れ落ちている。2000年代の初めに2回ほどこの畑の収穫に参加したことがある。まだ若かったが足の震える思いをしたのを覚えている。今回サービスされた2012年産は今世紀の最も良いミレジムの一つで、素晴らしい酸が長く続く辛口のシャンパーニュだ。気取ったところがなく、シンプルでピュアな作りにフィリポナの頑な哲学が感じ取れる。

画像: メゾン・フィリポナの名声を支えるプレステージュ・キュヴェ『クロ・デ・ゴワス』

メゾン・フィリポナの名声を支えるプレステージュ・キュヴェ『クロ・デ・ゴワス』

『クロ・デ・ゴワス2012』とともにこの夕食会を盛り上げたのが『1522 L.V.グランクリュ2002』だ。このキュヴェは前述したように、フィリポナ家のルーツと言われるアヴリル・ル・フィリポナが1522年にリューディ「ル・レオン」を所有していたという故事に基づくもの。2002年は2012年と並ぶシャンパーニュの当たり年で、内容の詰まった、ボリューム感のある充実した味わいが長く残る。特に、今回サービスされた『1522 L.V.グランクリュ2002』はL.V.("Long Vieillissement"《長期熟成》)の文字が記された特別ボトルで、20年の熟成を経てこの催しのために直前にデゴルジュマンされたもの。活力があり、シャンパーニュの奇跡的な力を感じさせるものだった。

画像: 1248年建設の「コレージュ・デ・ベルナルダン」

1248年建設の「コレージュ・デ・ベルナルダン」

画像: 夕食会に先立って行われた演奏会

夕食会に先立って行われた演奏会

メゾン・フィリポナは1986年にフィナンシエール・グローブ社、そしてマリーグ・ブリザール・グループを経て、1998年からボワゼル・シャノワンヌ・グループ(ランソンBCC)に属しているが、メゾンの全ての管理はシャルル・フィリポナ氏に委ねられている。22haの自社畑とアイ、アヴネ、マルイユ・シュル・アイ、ミュティニなどの長期契約の栽培家から納入されるグランクリュ、プルミエクリュのキュヴェ(一番搾り)を使い、樽熟成のソレラをリザーヴワインとして用いる一族のシャンパーニュ作りの伝統は完璧に引き継がれている。

画像: 『1522 L.V.グランクリュ2002 エクストラ・ブリュット』

『1522 L.V.グランクリュ2002 エクストラ・ブリュット』

画像: シャルル・フィリポナ氏と輸出を担当する息子で16代目に当たるフランソワ・フィリポナ氏

シャルル・フィリポナ氏と輸出を担当する息子で16代目に当たるフランソワ・フィリポナ氏

*ソレラシステム……スペインのシェリーで行われている熟成のシステムで、下段の樽から一部のワインを抜き出して瓶詰めし、減った分のワインを上段の樽から移して補う。若いワインが古いワインに混ぜらるため、各特徴が合わさり均質なワインに仕上がり、熟成感も出る

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