ローヌ地方の名門「E.ギガル」が造る『コート・デュ・ローヌ ロゼ』は、まろやかな果実味に酸味がしっかりと感じられるバランスの良い味わいで、魚介から鶏肉、豚肉まで守備範囲が広い。価格も手ごろで家飲みにぴったりな1本だ。今回、人気の中国料理店とビストロの2店にこのロゼに合う料理を提案してもらい、マリアージュの可能性を探った。
「水新菜館」とのスペシャルマリアージュ
「もともとこの地で造られるワインが好きで、E.ギガルは特に好きなメゾンの一つです」と語る、「水新はなれ 紅(ホン)」オーナー・ソムリエの寺田泰行氏。とりわけ『コート・デュ・ローヌ ロゼ 2020年』はリーズナブルで美味しいと、同店でもオンリストしているという。
飲み口が心地よく、南仏由来の果実味がしっかりと感じられてフードフレンドリーなコート・デュ・ローヌ ロゼ。寺田氏に「水新菜館」の料理と合わせて、中国料理とのマリアージュをレクチャーしてもらった。
「グルナッシュの果実味、サンソーとシラーのスパイス感、香りのふくよかさは、花椒によるしびれるような辛さの麻マー、唐辛子のヒリヒリとした辛さの辣ラーのどちらの味とも好相性。また、料理の辛味とワインの甘味の相乗効果によって両者の美味しさが一層引き立ちますよ」
餃子/エビチリ
餃子は餡に入った豚肉の肉汁、タレの酸味がコート・デュ・ローヌ ロゼの果実味や程よい酸と調和する。エビチリのソースの辛味には、ワインの程よいタンニンが寄り添う。ワインを10℃くらいにしっかり冷やしてタンニンをじやすくすると、よりチリソースとの相性が良くなる。
【Point!】
餃子は粗めに挽いた豚肉を野菜よりも多めに加え、肉汁がたっぷり出るようにすると、果実味豊かなワインに負けない味わいになる。エビチリは辛いほうが、骨格のあるワインとの相性が一層高まり、甘酸っぱい味ともマッチ。
お勧めは餃子、エビチリ、 葱肉(ツンロー)冷麺。なかでもロゼの色鮮やかな見た目にもマッチするエビチリは、寺田氏いわく間違いのない組み合わせだ。餃子は酢醤油や食べるラー油など、付けダレを変えてもこのロゼに合わせやすく、それぞれのタレによって異なるマリアージュポイントが楽しめる。葱肉冷麺は冷たい料理なので、コート・デュ・ローヌロゼもしっかり冷やして飲みたい。
葱ツンロー肉冷麺
黒コショウとゴマ油で和えた細切りのチャーシューと長ネギを乗せた冷たい麺に、ゴマ醤油ダレをかけて。具と麺、タレが一体となるよう、混ぜ合わせて食べる。サンソーとシラーが持つスパイスのニュアンスが、黒コショウの香りやピリ辛な味わいと同調する。夏に味わう冷たい麺料理は、全般的にロゼとの相性が良い。
【POINT!】
卵、キュウリ、トマトなどが乗ったいわゆる「冷やし中華」にしても。ロゼは守備範囲が広いため、具やタレを変えても受け止めてくれる。
「麻婆豆腐や坦々麺、よだれ鶏など、その他の辛い料理にも合い「水新菜館」とのスペシャルマリアージュますよ。一方で、酢豚やカニ玉といった、甘酢を使った料理とも相性が良い。ご家庭の食卓でも親しまれる中国料理とぜひ楽しんでいただきたいですね」
「ビストロ グラヴィ」とのスペシャルマリアージュ
「ローヌ地方を代表する有名な生産者であり、安定したぶれない味わいが素晴らしいですね」と話すのはワインディレクターの田邉公一氏だ。『コート・デュ・ローヌ ロゼ』を家庭で楽しむヒントをもらった。
「産地を意識した料理をコーディネートすると、普段のおうち飲みがランクアップしますよ」
つまりローヌでよく食べられている、魚介、トマト、オリーヴオイルを使った料理を考えると失敗がないという。
「食材の色合わせも重要。エビ、赤カブやパプリカなど、ロゼの色に合わせて赤っぽい食材を選びましょう。2品くらいをワインとの掛け算で楽しむと気分も盛り上がります」
甘エビとイシダイのカルパッチョ
甘エビのコンソメジュレがけイシダイと甘エビの刺し身に、甘エビからとっただし入りのソース、おろしたライムの皮とパクチーの花のみじん切りをトッピング。パプリカのソースを添えたロゼ色のひと皿。新鮮な魚介の淡白な旨味とワインのミネラリーさがきれいに寄り添い合う。主張しないパクチーの風味とシラー由来のスパイシーさもぴったりマッチ。
【POINT!】
イシダイは手に入りやすいマダイに、魚介のコンソメは昆布やカツオのだしでも。「トマトやラディッシュ、パプリカなどを使ってロゼとの色を合わせるとよく合います」(田邉氏)
コート・デュ・ローヌ ロゼに合わせて築地「ビストロ グラヴィ」のオーナー・シェフ、島五輝(い つき)氏に料理を作ってもらった。島氏の提案はスープ・ド・ポワソンと甘エビとイシダイのカルパッチョ。島氏もワインの産地である南仏やロゼ色をイメージして料理を考えたという。
「スープ・ド・ポワソンは南仏を代表するスープ。アニスの風味がワインの華やかさとスパイシーな味わいによく合います。甘エビとイシダイのカルパッチョはロゼ色そのもの、魚介の繊細な旨味にロゼの果実味とミネラル感が寄り添います。添えたパクチーの風味がロゼのスパイシーさと調和します」と田邉氏。
スープ・ド・ポワソン
アナゴと魚のあらをオーブンで焼き、タマネギやセロリなどのたっぷりの香味野菜、タイムやローリエ、アニスなどのハーブやスパイスを入れて煮込み裏ごしした。アナゴの脂の旨味とワインが持つタンニン、お互いのスパイシーさが響き合い、華やかな果実味が凝縮したスープの旨味を引き上げる。
【POINT!】
魚はタイやスズキなど何でもOK。「酸味を感じるしっかりとした味わいのロゼなので、煮詰めて旨味を凝縮した料理と好相性。レモンを添えるとより近付きます」(島氏)
今回、田邉氏と島氏のペアリングの方程式がぴったり重なった。ワインの産地から紐解く食材選びと調理法、ワインとの色合わせは、確実なペアリングの答えを導く方法だ。いつものおうち飲みを格上げするヒントは、ワインの産地とワインの色に隠れている。
text by Mie NAMBA(水新菜館)、Uta KOBAYASHI(ビストロ・グラヴィ)
photographs by Koumei KADOWAKI
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