既に報道されているように、「シャトー・シュヴァルブラン」「シャトー・オーゾンヌ」は昨年夏の申請書類提出の際、選考基準に不満だとして今回の格付けにエントリーしないことを宣言した。そして「シャトー・アンジェリュス」は、前回の格付けに不当に介入したとして有罪判決を受けたことに反発して格付けを拒否した。この3シャトーに代わって新たにどのシャトーがプルミエ・グラン・クリュ クリュ・クラッセAに昇格するかに注目が集まった。また、審査委員会から、試飲の評価点が低いことを指摘されたプルミエ・グラン・クリュ クリュ・クラッセBの「シャトー・ガフリエール」が6月に急遽エントリーを取りやめた。このプルミエ・グラン・クリュ クリュ・クラッセBに昇格する新しいシャトーがあるかも注目された。

しかし、これまで、新しい格付けが発表されるたびに不満を持つシャトーが訴訟を起こし、その正当性をめぐる裁判で地元の栽培家の間の不和が拡大してきた。このため、今回はその愚をできるだけ避けるために、販売価格に影響し、特に関心の高いプルミエ・グラン・クリュ クリュ・クラッセの異動を最小限にしようとする政治的配慮が強く働いた。その結果、前回、プルミエ・グラン・クリュ クリュ・クラッセAへの昇格に失敗し、そのリベンジを図るために多大な投資を行い、顕著な質の向上が認められた「シャトー・フィジャック」をプルミエ・グラン・クリュ クリュ・クラッセAに昇格させるだけに止め、その他のプルミエ・グラン・クリュ クリュ・クラッセに関しては全て前回通りに据え置いた。このため、格付けAへの昇格を期待していた「シャトー・カノン」「トロロン・モンド」「クロ・フルテ」などに失望が広がった。

画像: プルミエ・グラン・クリュ クリュ・クラッセAに昇格した「シャトー・フィジャック」。トップ画像は、シャトー・フィジャックのファミリー

プルミエ・グラン・クリュ クリュ・クラッセAに昇格した「シャトー・フィジャック」。トップ画像は、シャトー・フィジャックのファミリー

2010年に92歳で亡くなった「シャトー・フィジャック」のオーナー、ティエリー・マノンクール氏は「シャトー・フィジャック」のプルミエ・グラン・クリュ クリュ・クラッセAへの昇格を切望していたと言われ、今回の格付けでの昇格は、跡を継いだマリー・フランス・マノンクール夫人の悲願だった。8日に発表したコミュニケの中で、「1892年からマノンクール家が所有するシャトー・フィジャックは、長年にわたる持続的な努力、強いアイデンティティ、テロワールの卓越した資質、毎年生産する優れたワイン、サンテミリオンの中での我々の特異性が報われた結果です。私たちは、この決定に誇りと感謝の気持ちを持ち、これからも偉大なワインを愛する人たちに幸せを届け続けます」と誇らかに語っている。また、ティエリー・マノンクール氏の娘、オルタンス・イドワンヌ・マノンクール氏も「ティエリー・マノンクールルの家族とシャトー・フィジャックのチームにとって、数十年にわたって成し遂げた仕事が認められたということで大変誇りに思います」と語っている。

画像: マダム・マナンクール(中央、)と二人の娘、ブランディンヌ・ド・ブリエ・マノンクールさん(左)、オルタンス・イドワンヌ・マノンクールさん(右)

マダム・マナンクール(中央、)と二人の娘、ブランディンヌ・ド・ブリエ・マノンクールさん(左)、オルタンス・イドワンヌ・マノンクールさん(右)

プルミエ・グラン・クリュ クリュ・クラッセに関しては、他のシャトーに統合されて消滅したシャトー(「シャトー・ダッソー」の一部となった「フォリー・ド・スシャール」や「カントゥス」の一部となった「グラン・ポンテ」や「ラロゼ」など)、格付けを申請しなかったシャトー(「シャトー・オーゾンヌ」のオーナー、ヴォーティエ家が所有する「シャトー・ラ・クロット」「キノー・アンクロー」など)がある。そして、今回、新たに幾つかのシャトーが昇格し、プルミエ・グラン・クリュ クリュ・クラッセは前回の64シャトーから71シャトーに増えた。

画像: サンテミリオン・グランクリュ・クラッセ協会、フランソワ・デスパニュ会長

サンテミリオン・グランクリュ・クラッセ協会、フランソワ・デスパニュ会長

2018年からサンテミリオン・グラン・クリュ クラッセ協会(Association de Grands Crus Classés de Saint-Emilion)の会長を務めるフランソワ・デスパニュ氏は、格付け発表直後の電話インタビューに次の様に答えた。

「一つの降格もない今回の格付けは幅広いコンセンサスを得られるものと思う。また、プルミエ・グラン・クリュ クリュ・クラッセに幾つかのシャトーが仲間入りし計95シャトーなったが、前回の格付けシャトー計92シャトーと比べて大きな変化はなくバランスがとれたものだ。今回、幾つかのシャトーが格付けの申請を見送ったが、ミシュランの格付けと同じで、既に十分な名声があり、格付けリストへの掲載は必要ないという判断をされたのだろう。私はそれぞれのシャトーの選択を尊重したいと思っている」

新しい格付け発表と同時に、サンテミリオン・ワイン評議会(Conseil des Vins de Saint-Emilion)がコミュニケとプレス向け資料を配布した。その文面は格付けの透明性、客観性、様々な妥当性を強調し、関係者が一体となって格付けを保持することがサンテミリオン全体の価値、利益を守ることにつながる、そのためには結束が必要性だと訴えており、関係者が今回の格付けをなんとか穏便に受け入れられるよう配慮したことが伺える。

「降格すれば訴訟がおき裁判沙汰になるが昇格ならば争いは起きない」今回の格付けについて、サンテミリオンの格付けを見守ってきた、『グラン・セルクル・デ・ヴァン・ドボルドー』のアラン・レイノ会長はこう要約している。

画像: 『グラン・セルクル・デ・ヴァン・ドボルドー』のアラン・レイノ会長

『グラン・セルクル・デ・ヴァン・ドボルドー』のアラン・レイノ会長

新たな2022年のサンテミリオン格付けは以下の通り

画像: 新たな2022年のサンテミリオン格付けは以下の通り

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