来日した「ドメーヌ・ド・モンティーユ」の当主、エティエンヌ・ド・モンティーユ氏は、新天地サンタ・リタ・ヒルズで造る「ラシーヌ」について、「カリフォルニアに道を拓いてくれた先駆者に感謝している。カリフォルニア・ワインがどうあるべきか、その知識を惜しみなく披露してくれた彼らがいたからこそ、今の自分がいる」と語った。
アメリカでの夢の実現
ブルゴーニュ地方のヴォルネイ村で300年以上の歴史を有する名門「ドメーヌ・ド・モンティーユ」の当主エティエンヌ・ド・モンティーユ氏の夢の一つがアメリカでのワイン造りであった。19歳から1年間生活したカリフォルニアで、ワインを楽しむ環境の素晴らしさや学べることの多さに魅了された。さまざまな体験は家業を引き継ぐ心の糧になった。
ブルゴーニュが活動の場になった彼にとって、信頼するシェフ・ド・カーヴのブライアン・シーヴ氏がアメリカ出身だったことは、とてもラッキーだった。
醸造面と経済面の見地から
2016年、エティエンヌ氏とブライアン氏はひと月にわたり、オレゴンのウィラメット・ヴァレー、カリフォルニアのソノマ・コースト、 サンタ・クルーズ・マウンテンズ、そしてサンタ・リタ・ヒルズを巡回し、最後に訪問したサンタ・リタ・ヒルズなら、自分たちが求めているワイン造りができると確信した。加えて、ソノマ・コーストやサンタ・クルーズ・マウンテンズのように土地が高騰してしまったエリアではないほうが最適と考えた。
カリフォルニアでは標高の高さが冷涼エリアの特徴になっているが、サンタ・リタ・ヒルズは山脈が東西に走り、西側にある太平洋から冷涼な風や霧の影響を受ける。それにより、アルコール度数は高すぎず低すぎず、フェノール分が豊かで、酸をしっかり蓄えたブドウができる。
土壌はライムストーンそのものではないが、同類のアルカリ性土壌であり、珪藻土が特徴。これがワインにミネラル感をもたらす。ラシーヌは山脈にはさまれた渓谷にあり、方角もテロワールに反映されていて、標高もさまざま。これらの多様性によって、複雑味が備わったワインができる。
カリフォルニアのテロワールでブルゴーニュのタッチを表現
ラシーヌのワイン造りはブルゴーニュに倣う形で行っている。全房発酵の比率も、サンタ・リタ・ヒルズのピノ・ノワールは50パーセント、ラ・リンコナーダ・ヴィンヤードとサンフォード&ベネディクト・ヴィンヤードのピノ・ノワールは3分の2と多めだ。結果として、果梗が果皮の色を吸収するので、最終的にワインの色調はライトになる。
ロバート・パーカー全盛時代には、濃い色調のピノ・ノワールが高く評価されていたが、今の風潮では、逆に何かしているのではないかと疑問視されることもある。
「もともと、ピノ・ノワールは淡い色調なので、私はそれより“輝き”が大事だと思っている」と当主は言葉を添えた。続けて「ラシーヌにとって2018年は2回目のヴィンテージだが、納得できるワインができた。カリフォルニアのテロワールで、ブルゴーニュのビジョンやタッチを表現していきたい。飲み手に、今までのカリフォルニア・ワインになかったものを感じてもらえれば嬉しい」と語り、テイスティングディナーを締めくくった。
次なるヴィンテージ、そしてペテルスと組んだスパークリングワインの登場が楽しみだ!
text & photographs by Fumiko AOKI
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