来日した「ドメーヌ・ド・モンティーユ」の当主、エティエンヌ・ド・モンティーユ氏は、新天地サンタ・リタ・ヒルズで造る「ラシーヌ」について、「カリフォルニアに道を拓いてくれた先駆者に感謝している。カリフォルニア・ワインがどうあるべきか、その知識を惜しみなく披露してくれた彼らがいたからこそ、今の自分がいる」と語った。

画像: ブルゴーニュの家族経営の「ドメーヌ・ド・モンティーユ」当主、エティエンヌ・ド・モンティーユ氏。カリフォルニアの「ラシーヌ」のほか、2016年に北海道・函館のプロジェクトもスタート。今年10月からワイナリー建設を開始した

ブルゴーニュの家族経営の「ドメーヌ・ド・モンティーユ」当主、エティエンヌ・ド・モンティーユ氏。カリフォルニアの「ラシーヌ」のほか、2016年に北海道・函館のプロジェクトもスタート。今年10月からワイナリー建設を開始した

アメリカでの夢の実現

ブルゴーニュ地方のヴォルネイ村で300年以上の歴史を有する名門「ドメーヌ・ド・モンティーユ」の当主エティエンヌ・ド・モンティーユ氏の夢の一つがアメリカでのワイン造りであった。19歳から1年間生活したカリフォルニアで、ワインを楽しむ環境の素晴らしさや学べることの多さに魅了された。さまざまな体験は家業を引き継ぐ心の糧になった。

ブルゴーニュが活動の場になった彼にとって、信頼するシェフ・ド・カーヴのブライアン・シーヴ氏がアメリカ出身だったことは、とてもラッキーだった。

画像: 2016年、「ドメーヌ・ド・モンティーユ」当主のエティエンヌ・ド・モンティーユ氏と、シェフ・ド・カーヴのブライアン・シーヴ氏は、カリフォルニアの冷涼エリア、AVAサンタ・リタ・ヒルズに特化したワイナリー「ラシーヌ」に着手。翌年17年には、エティエンヌ氏の長年の友で、シャンパーニュメゾン「ピエール・ペテルス」当主のロドルフ・ペテルス氏がプロジェクトに参画。22年の秋にはシャンパーニュ製法のスパークリングワインをリリース予定。ラシーヌは将来的に現在の倍の量の生産量を目安にしているので、スティルワインは7000~7500ケース、スパークリングワインは2000ケース程度になる

2016年、「ドメーヌ・ド・モンティーユ」当主のエティエンヌ・ド・モンティーユ氏と、シェフ・ド・カーヴのブライアン・シーヴ氏は、カリフォルニアの冷涼エリア、AVAサンタ・リタ・ヒルズに特化したワイナリー「ラシーヌ」に着手。翌年17年には、エティエンヌ氏の長年の友で、シャンパーニュメゾン「ピエール・ペテルス」当主のロドルフ・ペテルス氏がプロジェクトに参画。22年の秋にはシャンパーニュ製法のスパークリングワインをリリース予定。ラシーヌは将来的に現在の倍の量の生産量を目安にしているので、スティルワインは7000~7500ケース、スパークリングワインは2000ケース程度になる

醸造面と経済面の見地から

2016年、エティエンヌ氏とブライアン氏はひと月にわたり、オレゴンのウィラメット・ヴァレー、カリフォルニアのソノマ・コースト、 サンタ・クルーズ・マウンテンズ、そしてサンタ・リタ・ヒルズを巡回し、最後に訪問したサンタ・リタ・ヒルズなら、自分たちが求めているワイン造りができると確信した。加えて、ソノマ・コーストやサンタ・クルーズ・マウンテンズのように土地が高騰してしまったエリアではないほうが最適と考えた。

カリフォルニアでは標高の高さが冷涼エリアの特徴になっているが、サンタ・リタ・ヒルズは山脈が東西に走り、西側にある太平洋から冷涼な風や霧の影響を受ける。それにより、アルコール度数は高すぎず低すぎず、フェノール分が豊かで、酸をしっかり蓄えたブドウができる。

画像: 醸造面と経済面の見地から

土壌はライムストーンそのものではないが、同類のアルカリ性土壌であり、珪藻土が特徴。これがワインにミネラル感をもたらす。ラシーヌは山脈にはさまれた渓谷にあり、方角もテロワールに反映されていて、標高もさまざま。これらの多様性によって、複雑味が備わったワインができる。

カリフォルニアのテロワールでブルゴーニュのタッチを表現

画像: 供出された7アイテム。左から『サンタ・リタ・ヒルズ キュヴェ シャルドネ 2018年』『サンフォード&ベネディクト・ヴィンヤード シャルドネ 2018年』『ベントロック・ヴィンヤード シャルドネ サンタ・リタ・ヒルズ 2018年』『ウェンズラウ・ファミリ―・ヴィンヤード シャルドネ サンタ・リタ・ヒルズ 2018年』『サンタ・リタ・ヒルズ キュヴェ ピノ・ノワール 2018年』『ラ・リンコナーダ・ヴィンヤード ピノ・ノワール サンタ・リタ・ヒルズ 2018年』『サンフォード&ベネディクト・ヴィンヤード ピノ・ノワール サンタ・リタ・ヒルズ 2018年』

供出された7アイテム。左から『サンタ・リタ・ヒルズ キュヴェ シャルドネ 2018年』『サンフォード&ベネディクト・ヴィンヤード シャルドネ 2018年』『ベントロック・ヴィンヤード シャルドネ サンタ・リタ・ヒルズ 2018年』『ウェンズラウ・ファミリ―・ヴィンヤード シャルドネ サンタ・リタ・ヒルズ 2018年』『サンタ・リタ・ヒルズ キュヴェ ピノ・ノワール 2018年』『ラ・リンコナーダ・ヴィンヤード ピノ・ノワール サンタ・リタ・ヒルズ 2018年』『サンフォード&ベネディクト・ヴィンヤード ピノ・ノワール サンタ・リタ・ヒルズ 2018年』

ラシーヌのワイン造りはブルゴーニュに倣う形で行っている。全房発酵の比率も、サンタ・リタ・ヒルズのピノ・ノワールは50パーセント、ラ・リンコナーダ・ヴィンヤードとサンフォード&ベネディクト・ヴィンヤードのピノ・ノワールは3分の2と多めだ。結果として、果梗が果皮の色を吸収するので、最終的にワインの色調はライトになる。

画像: 粘土質ロームと砂質ロームの2区画の畑のブドウをブレンドした『ベントロック・ヴィンヤード シャルドネ サンタ・リタ・ヒルズ 2018年』。塩味、旨味、厚みがバランス良く相まったシャルドネ。赤身好きの当主を満足させたワサビを添えたマリアージュ

粘土質ロームと砂質ロームの2区画の畑のブドウをブレンドした『ベントロック・ヴィンヤード シャルドネ サンタ・リタ・ヒルズ 2018年』。塩味、旨味、厚みがバランス良く相まったシャルドネ。赤身好きの当主を満足させたワサビを添えたマリアージュ

画像: 『ラ・リンコナーダ・ヴィンヤード ピノ・ノワール サンタ・リタ・ヒルズ 2018年』。岩が多い畑で、土壌は深い粘土質ローム。「ブドウ果粒は小さく、ミステリアスな畑」と当主。生き生きした色調、香りはバラの花びら、ルバーブ、月桂樹、コショウ、ミネラル、余韻の広がり

『ラ・リンコナーダ・ヴィンヤード ピノ・ノワール サンタ・リタ・ヒルズ 2018年』。岩が多い畑で、土壌は深い粘土質ローム。「ブドウ果粒は小さく、ミステリアスな畑」と当主。生き生きした色調、香りはバラの花びら、ルバーブ、月桂樹、コショウ、ミネラル、余韻の広がり

ロバート・パーカー全盛時代には、濃い色調のピノ・ノワールが高く評価されていたが、今の風潮では、逆に何かしているのではないかと疑問視されることもある。

「もともと、ピノ・ノワールは淡い色調なので、私はそれより“輝き”が大事だと思っている」と当主は言葉を添えた。続けて「ラシーヌにとって2018年は2回目のヴィンテージだが、納得できるワインができた。カリフォルニアのテロワールで、ブルゴーニュのビジョンやタッチを表現していきたい。飲み手に、今までのカリフォルニア・ワインになかったものを感じてもらえれば嬉しい」と語り、テイスティングディナーを締めくくった。

画像: 「好きな食事と好きなワインを楽しむ主義なので、定番ではなく自由に」と語っていた当主。ピノ・ノワールに合わせて「焼肉にく崎」自慢の大分県産ブランド鶏卵“蘭王”でサーロインとのマリアージュを満喫

「好きな食事と好きなワインを楽しむ主義なので、定番ではなく自由に」と語っていた当主。ピノ・ノワールに合わせて「焼肉にく崎」自慢の大分県産ブランド鶏卵“蘭王”でサーロインとのマリアージュを満喫

次なるヴィンテージ、そしてペテルスと組んだスパークリングワインの登場が楽しみだ!

text & photographs by Fumiko AOKI

アイテムに関する問い合わせ先

WINE TO STYLE㈱ TEL.03-5413-8831

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