シャンパーニュ『ドン ペリニヨン ヴィンテージ 2013』がお披露目された。2013年の10月に収穫されたクラシックなヴィンテージだ。醸造最高責任者のヴァンサン・シャプロン氏が4年ぶりに来日し、長期熟成が生み出すハーモニーとエレガンスを、神秘的な雰囲気の中で味わった。
近年、気候変動によって8月の収穫も珍しくないが、2013年は雨が多く、夏前は冷涼だったため、生育に時間がかかり、遅摘みとなった。収穫は9月28日から10月15日まで。ゆっくりと熟したブドウから、複雑で繊細なアロマと精妙な味わいを備えるシャンパーニュが生まれた。
シャプロン氏は「生き生きした味わいと凝縮感の二面性を併せ持っている。フレッシュ感と密度のハーモニーを表現し、2012年よりエネルギッシュ」とヴィンテージ 2013を表現する。
レモンの皮、イエロープラム、マンダリン、チョーキーで、リニアなテクスチャー、クリーミーな泡、緊張感が持続し、ソルティで、焦点のあったフィニッシュ。ドン ペリニヨンを特色づける球体的なバランス感だ。ドザージュはリットル当たり5グラム。
会場では、足元からスモークが立ち上がり、逆光にスリムなシャプロンの姿が浮かびあがった。オーヴィレール修道院から、ヴァレ・ド・ラ・マルヌ地区に立ち込める霧を見下ろした風景を思い出させる演出に、ドン・ピエール・ペリニヨンがシャンパーニュ造りの着想を練った17世紀とも時空を超えてつながったように思う。
お披露目会では、繊細で正確なシャンパーニュに合わせて、大阪にある2ツ星のフレンチ「ラ・シーム」(大阪・中央区)の高田裕介シェフが、味わいからインスピレーションを得た緻密な料理を供した。高田シェフは、アジアの「ベストレストラン50」の2023年版で8位に入った注目のシェフだ。
「春の料理は得意」というだけあって、新タマネギ、スナップエンドウ、コゴミ、ホワイトアスパラガス、フキノトウなど旬の食材に、昆布オイルや貝のだしを合わせて、タイやクエ、仔牛を複雑に調理した、マジカルなお皿が息つくまもなくテーブルに登場した。
山菜のほろ苦味、魚介の塩味や旨味、仔牛がほろりと崩れる食感などは、10年間の熟成を経たドン ペリニヨンの複雑な風味、だし的な旨味、バランス感と素晴らしいハーモニーを奏でた。
text&photographs by Akihiko YAMAMOTO