「コンチャ・イ・トロ」の社長職を筆頭にさまざまなポジションを歴任してきたチリ出身のアグスティン・フネウス氏が所有するカリフォルニア州ラザフォードの「クインテッサ」と、古巣の「スクリーミングイーグル」で、それぞれ醸造と栽培を担当していたアンディ・エリクソン&アニー・ファヴィア夫妻が2023年に立ち上げた「ファヴィア」。旧知の仲の彼らが新たな夢の実現のためにパートナーシップを結んだ。
昨秋、フネウス・グループの輸出担当ディレクター、ディエゴ・ギャーレイ氏が来日。「クインテッサ」と「ファヴィア」のワインを紹介した。
クインテッサはすべて自社畑で、オーガニックおよびビオディナミによるワイン造りに特化。年々、酒質の高いワインを造り出している。現在、ソーヴィニヨン・ブランが主体の白『イルミネーション』と、ボルドーブレンドの赤『クインテッサ』の2アイテムを生産。フラッグシップのクインテッサはカベルネやメルロ、プティ・ヴェルドに、チリを代表する品種カルメネールをブレンドしているのが特徴である。2018年から『ラ・プラス・ド・ボルドー』に参画し、ネゴシアン経由の販売になった。
一方のファヴィアはカリフォルニア州の新しいAVAクームスヴィルにある。火山の爆発で地殻変動が起き、すり鉢状の地形になったエリアで、サンパブロ湾からの風の影響を受ける冷涼な産地である。自社畑だけでなく、購入ブドウを含め、シングルヴィンヤードや単一のAVAのワインを手掛けているので、コンセプトはブルゴーニュのワイン造りに近いといえる。ボルドー系品種中心で、アンディ・エリクソン&アニー・ファヴィア夫妻が愛するカベルネ・フランに力を入れている。2022年からクインテッサ同様、ネゴシアン経由での販売方式になっている。
7年前にオークヴィルの「オーパス・ワン」の裏手にあるブドウ畑を入手したアグスティン・フネウス氏は、ブドウ樹の植え替えに着手し、新規ワイナリーの構想を練っていた。昨年初め、アンディ&アニー夫妻とパートナーシップを締結したことで、ブドウ畑は共同所有となり、夫妻はフネウス氏から独占使用権を得て畑を使用。2026年にはファヴィアのワイナリーも完成する予定だ。
フネウス氏とタッグを組んだアンディ&アニー夫妻が、待望の自社畑でどのようなワインを造り出すのか。新たな動向に注視したい。
text & photographs by Fumiko AOKI