photographs by Koumei KADOWAKI

山梨県といえばワイン造りの歴史も古く、日本ワイン産業をけん引してきた産地だ。山梨県が「ワイン県」を宣言してから5年を迎え、3月9日(土)に山梨県甲府市にある「常磐ホテル」で「日本ワインサミット」が開催された。全国からワイン愛好家約280人が詰めかけた。

第一部のシンポジウムに先立ち、ワイン県知事の長崎幸太郎氏(山梨県知事)は「ワイン県宣言を通して、山梨県だけではく日本ワインの振興に貢献したい」と挨拶をした。

ワイン県知事の長崎幸太郎氏(山梨県知事)

今回、コーディネータを務めた田崎真也氏は、同副知事に任命されている。「山梨県は日本ワイン産業のリーダーシップをとりながら、これから日本ワイン全体の発展に寄与したいというお話しだったので副知事の任命をお受けました」と副知事として山梨県ワインの発信役を担っている。

ワイン県副知事の田崎真也氏

この日、シンポジウムに登壇したのは、「酒類総合研究所」前理事長の後藤奈美さん、「ヴィラデストワイナリー」(長野県)の玉村豊男氏、「山﨑ワイナリー」(北海道)の山﨑太地氏、「高畠ワイナリー」(山形県)の松田旬一氏、「都農ワイン」(宮崎県)の赤尾誠二氏、「中央葡萄酒」(山梨県)の三澤彩奈さん。田崎氏が進行を務める形でシンポジウムはスタートした。

独立行政法人 酒類総合研究所 前理事長 後藤奈美さん

風土を生かしたワイン造り

まず、北は北海道、南は宮崎まで、それぞれがブドウ栽培をしている土地や取り組みについての解説から。

「山﨑ワイナリー」がある北海道・三笠市は年間降雪量15メートルという雪深いエリア。畑は雪で覆われるため、ブドウ樹は雪の中で越冬する。冷涼な環境を生かしたブドウ栽培、醸造行っている。

北海道は温暖化の影響でブドウ栽培適地として期待が高まっているが、山﨑氏はそのメリットとして「ブドウが熟すようになりました」と解説。実際、2019年産のピノ・ノワールで造ったワインはアルコール度数が11.5パーセントだったのに対して、2021年産は14パーセントでリリースしたという。しかしながらこれまで北海道では発生しなかった病気や害虫が発生したりと注意すべき点はあるとのこと。

山﨑ワイナリー 代表取締役 山﨑太地氏

宮崎県の「都農ワイン」は美しい日向灘と尾鈴連山に囲まれた牧内台地にある「海の見えるワイナリー」。年間降雨量4000ミリと雨が多く、さらに収穫時期の台風の発生などブドウの栽培にハンデを背負うが、夏は35℃を超える日はなく、4月~10月までの日照時間は130時間ありフルーティーで華やかな風味のブドウが育つという。「ブドウ生育時期でも2000ミリ降雨量が多いので創生栽培による土作りを行い、水はけをよくしています。レインカットも使います」と赤尾氏。後藤さんは「ソーヴィニヨン・ブランや甲州は涼しい産地より甘い香りが出るのが特徴ですね」と評した。

都農ワイン 代表取締役 赤尾誠二氏

再び、冷涼な産地、山形県へ。「高畠ワイナリー」がある高畠町の冬は積雪が10メートル超えることもあるが、夏の暑さは40℃を超す日もあるなど年間を通して寒暖差が激しいエリア。「2010年くらいから特に黒ブドウ、カベルネ・ソーヴィニヨンに力を入れています。マスカット・ベーリーAも盛んで、酸がしっかりした甘い香りを抑えたワイン造りを行っています」

田崎氏も「伊勢志摩サミットの際、ブラインド・テイスティングでワインをセレクトしましたが、マスカット・ベーリーAは最終的に選ばれたのが山形産のワインでした。ポリフェノールのポテンシャルが素晴らしく、酸とのバランスが良かった」と語った。

高畠ワイナリー 醸造部リーダー 松田旬一氏

続いては昨年100周年を迎えた山梨県勝沼町の「中央葡萄酒」の三澤さん。「甲州をとても大切にしています。日本人にとってのお米と同じ感覚で、あって当然のもの」と甲州愛を語った。2016年から少しずつ有機栽培に取り組んできて、昨年一部の畑で有機JAS規格を取得したという。このことで「産地への思いがより強くなった。今までなかったような甲州を畑から造っていきたい」と抱負を述べた。

中央葡萄酒 取締役・グレイスワイン栽培醸造責任者 三澤彩奈さん

長野県東御市の標高850メートルの丘の上で、2003年から醸造を始めた「ヴィラデストワイナリー」。玉村氏は「もともと桑畑だった南西に広がる土地をみて、フランス人ならここにブドウを植えるだろう」と思いワイン造りを開始したそうだ。そして日本で初めて、民間のワイン学校「千曲川ワインアカデミー」を開講し、今では卒業生のワイナリーは40軒を超えた。信州ワインバレーを形成したリーダー的存在だ。「ワイン造りを志す移住者でワイン産地が形成されてきたという珍しいエリアです」(玉村氏)

ヴィラデストワイナリー 代表取締役会長 玉村豊男氏

生産者が語る日本ワインの未来

シンポジウムは、それぞれの熱い思いや抱えている課題など話題が多岐にわたり、興味深い内容となった。最後に、日本ワインのこれからに話しがおよんだ。

山﨑氏は「良いワインを造るのが最終目標ではなく、地域の課題に伴走できるワイン造りを行いたい」と、ワインでの町興しを目指す。

三澤さんは「日本人だからできることを行っていきたい。“風土と熟成”というテーマで山梨ワインを造りたい」と述べた。

資材の高騰はワイン造りに負荷をかけているが、熟成期間を短くしたりとコストを下げることも考えなければならない、と話すのは松田氏。ワインを売ることに関しては「自分たちの造るワインのストーリーが飲み手に伝わるようにショップでのイベントやスタッフへの啓蒙も続けたい」(松田氏)

赤尾氏は「土地に合った品種の選定が大事です。病気に強いものやクローンを選んでいくことが必要です」と持続可能な農業に注力していく。

玉村氏は「日本ワインは、日本の食文化に与える影響は少ないかもしれません。それでもフランスやアメリカなど諸外国のワインと比べる時代はもう過ぎた。風土の個性を認めるべき」と日本ワインの今後の在り方を提言した。

新品種「ソワノワール」をお披露目

シンポジウムの最後には30年以上かけて開発した交配品種「ソワノワール」という新品種で造ったワインがお披露目された。

ソワとはフランス語で「絹」という意味。スムーズで絹のような舌ざわりから、この名を付けられた。同じく山梨県が開発したビジュノワールよりタンニンが滑らかで、収穫時期が早いことから9月に台風が発生する恐れのある日本には適している。2022年に品種登録申請を行い、あと5、6年で商品化できる見込みだ。

メルロとピノ・ノワールを交雑したソワノワールを試験醸造したワイン

愛好家が日本ワインのセールスマン!

シンポジウムの後には交流会も開かれた。50以上の日本ワインが集まり、山梨県の特産品を使ったフィンガーフードとともに愛好家同士、交流を深めた。交流会では長崎山梨県知事も参加。

「全国各地から参加してくださった皆さんの熱気に、ワイン県設立初期の目標は達成できたように感じました。日本ワインの素晴らしさを皆さんで共有していただき、皆さんが日本ワインのセールスマンであってほしい」と今後に期待を込めて語った。

品種や醸造方法など9つのテーマで集められた試飲ワイン

「鶏もつ煮 赤ワイン風味のムース」はマスカット・ベーリーAと最高のペアリングをみせた

参加者と交流を深めた長崎山梨県知事

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