「EXPO 2025 大阪・関西万博」が開幕! 「いのち輝く未来社会のデザイン」というテーマのもと、158の国と地域や国際際機関、企業が参加し、連日多くの来場者が押し寄せている。ワイン王国編集部は開幕前のプレスDAYにフランス館を取材した。

東ゲートでは、ミャクミャクが三つ指をついてお出迎え「いらっしゃいませ」
最寄駅の地下鉄夢洲駅に近い東ゲートから入場し、今回の万博の象徴「大屋根リング」の下をくぐると、趣向を凝らした各国のパビリオンが立ち並ぶ。フランス館は劇場のカーテンのようなベールで覆われ、ロゼシャンパーニュを思わせるカラーのスロープが輝くドラマチックで開放的な外観に、期待が高まる。

大屋根リングを越えると、「フランスパビリオン」が見えてくる
フランス館は多くの企業や団体がサポートしているが、中でも主要四つは「ゴールデンパートナー」と呼ばれる。ルイヴィトン、クリスチャン・ディオールといった世界的ラグジュアリーブランドを展開する「LVMHグループ」、保険と資産運用のグローバルグループ「アクサ」などと並びその一角を成すのが、アルザスワイン委員会。ワイン産地がフランスパビリオンに加わるのは、万博始まって以来初のことだという。
フランス北東部、ドイツとの国境近くに位置するアルザス地方。「モザイク」と称されるほど複雑で多様な土壌が存在し、多くのブドウ品種を育み独自のワインを生み出している。フランスのワイン産地の中では冷涼で、いきいきとした酸を持つ白ワインが生まれる。白ブドウの栽培が9割を超え、リースリング、ゲヴュルツトラミネール、ピノ・グリ、ミュスカなど多彩。また近年、アルザスA.O.C.の中で唯一認可されている黒ブドウ、ピノ・ノワールから生まれる赤ワインも脚光を浴びている。世界に先駆けて有機栽培やビオディナミ農法を手掛けた産地でもあり、自然と共存しながら持続可能なワインを生み出す生産者は多い。


アルザス地方の地下深く、地球の中心へと引き込まれていく。まるで根のように、岩の間に入り込み、地下の豊かな土壌を探索
フランス館では、アルザスワインの豊かな風土や魅力に触れる展示が見どころだ。一歩足を踏み入れると、なんとそこは土の中。さまざまな土壌が幾重にも層になっており、アルザスという土地が紡いできた時間、そしてテロワールの複雑さを、その世界に没入するように体感することができる。
「この土の中深くに根を伸ばし、ブドウは複雑で豊かな味わいになるのです」と、案内してくれたアルザスワイン委員会(CIVA) 広報のシャルル・デュラン氏。さらに、特徴的な細長いボトルを模った入口をくぐると一気に光が溢れ、アルザスワインを食と楽しむ世界観が美しく幻想的な展示で表現されている。

中庭に作られた「オリーブガーデン」には、南フランスから運んできた樹齢1000年のオリーブの樹が鎮座している
館内には、彫刻家ロダンによる手をモチーフにした作品があちこちに展示されている。フランスが誇る「サヴォアフェール=職人技」を体現しているという。「私たちのもの造りへの思いや歴史を、『手』を通じて伝えられたら」とシャルル氏。ハイブランドの旅行カバンも洋服も、そしてワインも。人の手、人の営みから生まれたと、改めて気づかされる。


フランス館の目玉の一つが、アルザスワインのテイスティングだ。パビリオンの4階に位置する「ビストロ」では、78のドメーヌより約80種ものアルザスワインを15日ごとにローテンションしながら提供。このビストロでは、「メゾンカイザー」が運営しており、アルザス料理とのペアリングも楽しめる。食と楽しむことで真価を発揮するアルザスワインの魅力を、万博の華やかな雰囲気の中、体感できるはず。ほかに、同じくゴールドパートナーであるモエ ヘネシーのシャンパーニュ「モエ エ シャンドン」などもオンリストする。

万博にはワイン産地を擁する国のパビリオンも多く、レストランでの提供も。ワイン文化に触れ、識り、酔いしれるーー。ワインラヴァーならではの、贅沢でとっておきの万博の楽しみ方だ。

text by Asako NAKATSUMI