画像: ティム・モンダヴィ氏 故ロバート・モンダヴィ氏の次男。2005年に新ワイナリー『コンティニュアム』を設立し、「ボルドー品種を使った唯一の赤ワイン」造りにフォーカス。昨今、モンダヴィ家の4世代目がワイン業界で活躍の場を広げ、ワイン名コンティニュアム(“継続する”の意)を地で行く活動にまい進しているが、子供たちには、目的をクリアにしてやり続けることを徹底させている

ティム・モンダヴィ氏
故ロバート・モンダヴィ氏の次男。2005年に新ワイナリー『コンティニュアム』を設立し、「ボルドー品種を使った唯一の赤ワイン」造りにフォーカス。昨今、モンダヴィ家の4世代目がワイン業界で活躍の場を広げ、ワイン名コンティニュアム(“継続する”の意)を地で行く活動にまい進しているが、子供たちには、目的をクリアにしてやり続けることを徹底させている

ワイナリーの創立者兼醸造家のティム・モンダヴィ氏が3年ぶりに来日し、『コンティニュアム』およびセンティアム・プロジェクトから誕生した白ワイン『センティアム』の新ヴィンテージを披露した。コンティニュアム4ヴィンテージの垂直試飲では、ティム氏が愛し、ラベルにも描かれている品種カベルネ・フランのブレンド比率の変化についても言及した。

4代にわたるファミリーの継承

画像: 4代にわたるファミリーの継承

1919年、イタリア移民のチェザレ・モンダヴィ氏がカリフォルニアでワインビジネスに参入したことが契機で、モンダヴィ家のワイングロワーとしての歴史が始まった。2代目長男のロバート氏が1966年にロバート・モンダヴィ・ワイナリーを興し、多くの偉業を成し遂げて、カリフォルニアワインの実力を世界に知らしめた。フランスのシャトー・ムートン・ロートシルトのフィリップ男爵とのコラボレーションでは『オーパス・ワン』を誕生させ、3代目次男のティム氏がファースト・ヴィンテージから2004年まで共同のワインメーカーとして活躍。ロバート・モンダヴィ・ワイナリーが上場企業になった後は紆余曲折があり、買収される事態に陥るが、2005年、ティム氏は父親と姉と一緒に『コンティニュアム』を設立する。2008年から2009年にかけてナパ・ヴァレーの東側ヴァカ山脈のプリチャード・ヒルに約69ヘクタールの畑を購入し、コンティニュアム・エステートで活動を開始した。
“グランクリュ・クラスのワインを造る”、“父親を超えるワイン造り”という目標を掲げてきたティム氏。20年余りの歳月が経過した今、ソノマ・コーストで『レイン』を立ち上げた4代目長男カルロ氏&三男ダンテ氏や、祖父が造ったソーヴィニヨン・ブランに敬意を表した『センティアム(フィーリング、感覚の意)』に注力している次女キアラさんの存在はとても誇らし気だ。
コンティニュアム“Continuum”は、ラテン語で、継続や継承を意味する“continuus”に由来するが、ティム氏は「コンティニュアムには、学び続けるという意味もあり、大自然が相手だと、複雑で理解できないことも多々あるが、常に学習していく姿勢は大事にしたい」と強調した。

画像: 2023センティアムソーヴィニヨン・ブラン メンドシーノ 「センティアムはユニークなワインプロジェクトで、ゴールは高品質のソーヴィニョン・ブランの中でのベストポジション。ボルドーともカリフォルニアとも違う。敢えて言うならロワールのディディエ・ダグノー シレックスに近いと思う」とティム氏。 ロバート・モンダヴィ氏が欧州でワイン造りを学び、従来とは異なる辛口のソーヴィニヨン・ブランをリリースさせた時、差別化を図る意味で、呼称を“フュメ・ブラン”にして一世を風靡した。ブドウは1945年に植樹したアイ・ブロックの古樹だったことから、醸造家キアラさんは祖父に敬意を表し、古い樹齢のソーヴィニヨン・ブランを使い、『センティアム』を完成させた。これはメンドシーノ・カウンティのレッドウッド・ヴァレーにある1940~60年代のブドウ樹で、畑の所有者は高齢のご夫妻。海からの影響も受けるが、畑に水晶(クオーツ)があり、それらがワインに高いミネラルを与えている。エチケットはアーティストでもあるキアラさんが描いたアイリス、裏ラベルには長女カリッサさんの詩が記載されている

2023センティアムソーヴィニヨン・ブラン メンドシーノ
「センティアムはユニークなワインプロジェクトで、ゴールは高品質のソーヴィニョン・ブランの中でのベストポジション。ボルドーともカリフォルニアとも違う。敢えて言うならロワールのディディエ・ダグノー シレックスに近いと思う」とティム氏。
ロバート・モンダヴィ氏が欧州でワイン造りを学び、従来とは異なる辛口のソーヴィニヨン・ブランをリリースさせた時、差別化を図る意味で、呼称を“フュメ・ブラン”にして一世を風靡した。ブドウは1945年に植樹したアイ・ブロックの古樹だったことから、醸造家キアラさんは祖父に敬意を表し、古い樹齢のソーヴィニヨン・ブランを使い、『センティアム』を完成させた。これはメンドシーノ・カウンティのレッドウッド・ヴァレーにある1940~60年代のブドウ樹で、畑の所有者は高齢のご夫妻。海からの影響も受けるが、畑に水晶(クオーツ)があり、それらがワインに高いミネラルを与えている。エチケットはアーティストでもあるキアラさんが描いたアイリス、裏ラベルには長女カリッサさんの詩が記載されている

画像: 2022コンティニュアム・エステート プロプライエタリー・レッド ナパ・ヴァレー ナパ・ヴァレーの東ヴァカ山脈の高台にあるプリッチャード・ヒルの自社畑に育つカベルネ・ソーヴィニヨンやカベルネ・フラン、プティ・ヴェルドやメルロをブレンドしたワイン。標高は400~490メートル、安山岩の巨礫が混ざったヒルサイド・ヴィンヤードで、土壌は石質ローム層のロック・ハムブライト・ローム(85%)と火成岩や変成岩が風化してできたソブランテ・ローム(15%)。ティム氏のカベルネ・フラン愛が詰まった最新ヴィンテージ2022年は初ヴィンテージ2005年からの17ヴィンテージのなかで最もカベルネ・フランの比率が多く、コンティニュアムの今後の指針となりうるスタイル

2022コンティニュアム・エステート プロプライエタリー・レッド ナパ・ヴァレー
ナパ・ヴァレーの東ヴァカ山脈の高台にあるプリッチャード・ヒルの自社畑に育つカベルネ・ソーヴィニヨンやカベルネ・フラン、プティ・ヴェルドやメルロをブレンドしたワイン。標高は400~490メートル、安山岩の巨礫が混ざったヒルサイド・ヴィンヤードで、土壌は石質ローム層のロック・ハムブライト・ローム(85%)と火成岩や変成岩が風化してできたソブランテ・ローム(15%)。ティム氏のカベルネ・フラン愛が詰まった最新ヴィンテージ2022年は初ヴィンテージ2005年からの17ヴィンテージのなかで最もカベルネ・フランの比率が多く、コンティニュアムの今後の指針となりうるスタイル

カベルネ・ソーヴィニヨンファーストではないワイン造り

モンダヴィ時代はヴァレー・フロア(平坦地)で30年程、また、ヒルサイドで20年、ワイン造りに関わってきたティム氏だが、栽培品種に関して「ボルドーではカベルネ・ソーヴィニヨンがメインだと思われているが、実はメルロが80%で、残り20%がカベルネ・ソーヴィニヨンやフラン、プティ・ヴェルド。ただ、メドックだけを見ると、カベルネ・ソーヴィニヨンが85%で、15%がメルロやフラン、マルベックだ。ナパも同じで、ヴァレー・フロアだとカベルネ・ソーヴィニヨンが主体、メルロは樹勢が強いので、味わいにもハーブ的な要素が出てくる。一方、ヒルサイドは土壌的にも樹勢が強くなることがないので、メルロやフランに適していると実感している。コンティニュアムの畑は44区画に分類され、各ブロック毎に手入れや醸造を実施している。カベルネ・フランはソーヴィニヨンと比べるとやわらかで、アロマ豊か。きめ細かなタンニンがあり、メルロも同様でしなやか。
複雑味のあるワインを造るために、畑や斜面の向き、台木やクローン等、多くの要素がある。栽培比率はカベルネ・ソーヴィニヨンとカベルネ・フランが各45%、プティ・ヴェルドとメルロが各5%なので、最終的には、使用品種の割合はこれに準ずるかも」と語った。

画像: 左から順に#1~#5 #1:2023年センティアム 品種 ソーヴィニヨン・ブラン99%、セミヨン1%。 早めに収穫し、丁寧にプレスした後、一晩静置させる。醸造にはステンレス、コンクリート、使用済フレンチオークの3種を各33%ずつ使用。ストーンフルーツのアロマ、レモンのような溌溂感があり、リフレッシュ効果の酸味が際立つ。ティム氏は「クラシックなボルドー品種セミヨンを1%使うことで、シルキーさやクリーミーさが加わる」とコメント #2:2018年コンティニュアム 品種 カベルネ・ソーヴィニヨン54%、カベルネ・フラン31%、プティ・ヴェルド9%、メルロ6% 生育期は全体的に気温低めで十分な日照量があり、ヴェレゾン後も涼しい気候の恩恵を受けた。エステート全体の収量も十分で、活き活きした酸と複雑味を備えたぶどうが収穫できた。フレンチオーク樽(新樽63%、一年使用35%)、コンクリート製アンフォラに移し、22カ月間熟成、無濾過・無清澄で瓶詰め #3:2019年コンティニュアム 品種 カベルネ・ソーヴィニヨン50%、カベルネ・フラン37%、プティ・ヴェルド7%、メルロ6% 冬の低温と多雨が生育期間のスタートを遅らせたが、夏までに気温は安定した。9月の気温の降下でハングタイムが長くなり、完熟を待って収穫できた。フレンチオーク樽(新樽66%、1~2年使用樽34%)で22カ月間熟成、コンクリート製アンフォラ使用、無濾過・無清澄で瓶詰め #4:2021年コンティニュアム 品種 カベルネ・ソーヴィニヨン45%、カベルネ・フラン35%、メルロ11%、プティ・ヴェルド9% 干ばつを受け、生育期の降水量は例年の3分の1程度。春は平均的な天候が続き、結果的に穏やかな生育期間で、約38度に達した日は6日のみ。収穫は例年より若干早く9月27日には終了した。フレンチオーク樽(新樽60%、使用樽37%)、コンクリート製アンフォラ3%で21カ月間シュール・リー熟成、無濾過・無清澄で瓶詰め #5:2022年コンティニュアム 品種 カベルネ・ソーヴィニヨン45%、カベルネ・フラン43%、プティ・ヴェルド8%、メルロ4% 春には雷と雹、生育期の総雨量は600㎜に達した。収穫直前には熱波もあり、ジェットコースターのような目まぐるしい変化のある年だった。フレンチオーク(新樽58%、使用樽39%)、コンクリート製アンフォラ3%で21カ月間シュール・リー熟成、無濾過・無清澄で瓶詰め

左から順に#1~#5
#1:2023年センティアム
品種 ソーヴィニヨン・ブラン99%、セミヨン1%。
早めに収穫し、丁寧にプレスした後、一晩静置させる。醸造にはステンレス、コンクリート、使用済フレンチオークの3種を各33%ずつ使用。ストーンフルーツのアロマ、レモンのような溌溂感があり、リフレッシュ効果の酸味が際立つ。ティム氏は「クラシックなボルドー品種セミヨンを1%使うことで、シルキーさやクリーミーさが加わる」とコメント
#2:2018年コンティニュアム
品種 カベルネ・ソーヴィニヨン54%、カベルネ・フラン31%、プティ・ヴェルド9%、メルロ6%
生育期は全体的に気温低めで十分な日照量があり、ヴェレゾン後も涼しい気候の恩恵を受けた。エステート全体の収量も十分で、活き活きした酸と複雑味を備えたぶどうが収穫できた。フレンチオーク樽(新樽63%、一年使用35%)、コンクリート製アンフォラに移し、22カ月間熟成、無濾過・無清澄で瓶詰め
#3:2019年コンティニュアム
品種 カベルネ・ソーヴィニヨン50%、カベルネ・フラン37%、プティ・ヴェルド7%、メルロ6%
冬の低温と多雨が生育期間のスタートを遅らせたが、夏までに気温は安定した。9月の気温の降下でハングタイムが長くなり、完熟を待って収穫できた。フレンチオーク樽(新樽66%、1~2年使用樽34%)で22カ月間熟成、コンクリート製アンフォラ使用、無濾過・無清澄で瓶詰め
#4:2021年コンティニュアム
品種 カベルネ・ソーヴィニヨン45%、カベルネ・フラン35%、メルロ11%、プティ・ヴェルド9%
干ばつを受け、生育期の降水量は例年の3分の1程度。春は平均的な天候が続き、結果的に穏やかな生育期間で、約38度に達した日は6日のみ。収穫は例年より若干早く9月27日には終了した。フレンチオーク樽(新樽60%、使用樽37%)、コンクリート製アンフォラ3%で21カ月間シュール・リー熟成、無濾過・無清澄で瓶詰め
#5:2022年コンティニュアム
品種 カベルネ・ソーヴィニヨン45%、カベルネ・フラン43%、プティ・ヴェルド8%、メルロ4%
春には雷と雹、生育期の総雨量は600㎜に達した。収穫直前には熱波もあり、ジェットコースターのような目まぐるしい変化のある年だった。フレンチオーク(新樽58%、使用樽39%)、コンクリート製アンフォラ3%で21カ月間シュール・リー熟成、無濾過・無清澄で瓶詰め

画像: 2018年 凝縮した黒系果実、ローリエやセージ、アーシーさ、シルキーなテクスチャー、土壌由来のミネラル 2019年 赤系果実や赤い花、野生のハーブやスパイス、酸味も健在、厚みがあり、マスキュランな印象 ※2020年は山火事の影響でワインは生産していない 2021年 黒系果実や野生のベリー、黒鉛、複雑味があり、中盤以降酸味とタンニンが持続する長熟タイプ 2022年 黒系果実、下草、タバコ、酵母による旨味、時間の経過で上質な酸味、ワンワードなら“ハーモニー”

2018年
凝縮した黒系果実、ローリエやセージ、アーシーさ、シルキーなテクスチャー、土壌由来のミネラル
2019年
赤系果実や赤い花、野生のハーブやスパイス、酸味も健在、厚みがあり、マスキュランな印象
2020年は山火事の影響でワインは生産していない
2021年
黒系果実や野生のベリー、黒鉛、複雑味があり、中盤以降酸味とタンニンが持続する長熟タイプ
2022年
黒系果実、下草、タバコ、酵母による旨味、時間の経過で上質な酸味、ワンワードなら“ハーモニー”

世界市場に認められるまで「オンリーワンの赤ワイン」に専念し、新しいワイン造りに興味を示す子供たちのリクエストにも応じることなく、不動を貫いてきたティム氏が、センティアム・プロジェクトをスタートさせることに至った流れを語る姿は、子煩悩そのものだった。自分の家族&姉マルシアさんの家族と力を合わせて、コンティニュアム(継承)し続けているモンダヴィ家にとって終着点はないようだ。

text & photographs by Fumiko AOKI

【問い合わせ先】
WINE TO STYLE TEL.03-5413-8831

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