国内外で高い評価を受ける「安心院葡萄酒工房」。地元・大分県安心院町のブドウにこだわったワイン造りを貫く。徹底した土づくりから始まる自社畑での歩みと、これからの挑戦について工房長・古屋浩二氏に聞いた。

安心院葡萄酒工房の最大の畑「大見尾圃場」。ブドウの量産体制を整えるとともに、新品種の試験栽培も継続されている
山間を走る細い道を抜けると、一気に視界が開ける。大分県宇佐市にある「大見尾圃場(おおみおほじょう)」。安心院葡萄酒工房の中で、最も新しく、最も広いブドウ畑だ。 工房長の古屋浩二氏が畑を案内してくれる。

古屋浩二氏
「安心院葡萄酒工房」工房長・ヴィンヤードマネジャー。三和酒類入社後、『いいちこ』の製造管理を経て、洋酒の開発・製造に携わる。海外での研修・実務経験を積み、2001年から工房の立ち上げに参画。
ワイナリー運営や自社畑の管理を担い、安心院ワインの品質向上に尽力。21年からは日本酒製造も担当
「安心院は由布岳などの名峰を望む盆地で、雨雲が届きにくい土地です。年間を通じて晴天が多く、降水量が非常に少ないため、ブドウがしっかりと熟し、凝縮感のある果実になります」
大見尾圃場は耕作放棄地を改良し、2021年からブドウの栽培を開始した。26年にも新たな苗木の植栽を予定している。
「5年目を迎え、4割ほど収穫ができるようになりました。27年ころには10割に達するかもしれません」と古屋氏は手応えを語る。
15ヘクタールに22区画があり、白ブドウは安心院を代表するシャルドネのほか、アルバリーニョ、プティ・マンサン。黒ブドウはピノタージュ、ビジュノワール、ノートン、ピノ・ノワール、スパークリングワイン用のムニエなど、多彩な品種が成果を見せつつある。
同工房の自社畑はこの大見尾に加え、 下毛(しもげ)、 矢津(やづ)の計3カ所。いずれも棚栽培でビニールの傘をかけている。
「垣根と棚の両方で栽培を試み、ブドウの育ち方や収穫量、品質を比較検討し、現在の形に至りました」
徹底した土づくりとともに多様な品種を栽培し、「適地適種」を探る。畑の段階から手間と時間を惜しまず追求を重ね、その積み重ねが実を結びつつある。
ワイナリーの代名詞といえば『安心院スパークリングワイン』。今やワイナリーを代表する存在だ。当初はデラウェアで醸造していたが、古屋氏はシャンパーニュに倣い、シャルドネを用いた瓶内2次発酵に挑戦。リザーヴワインを仕込みながら改良を重ね、「日本ワインコンクール」で金賞・部門最高賞を7度受賞するなど輝かしい成果を収めてきた。
2021年には「シャンパン&スパークリングワイン・ワールド・チャンピオンシップ」で日本初の銀賞を受賞し、その後も3度にわたり同賞を獲得。さらなる進化を目指し、次のステージへと歩みを進めている。
「現在はシャルドネのみを使ったブラン・ド・ブランですが、ピノ・ノワールやムニエも栽培しており、将来的にはブラン・ド・ノワールの製造も視野に入れています」。すでに「極果」シリーズのスパークリングではピノ・ノワールを使用している。
安心院の象徴的な品種といえばアルバリーニョだ。11年に初めて植樹し、現在は三つの圃場で栽培。

左から
『安心院ワイン アルバリーニョ 下毛 2024年』
『安心院ワイン アルバリーニョ 矢津 2024年』
『安心院ワイン アルバリーニョ 大見尾 2024年』
※価格は3801円(税込)
アルバリーニョは3カ所の異なる圃場で造られている。ラベルに示されている●印は、3カ所圃場があることを示しており、名前の位置は標高を表している。「下毛」は香り高くフレッシュ、「矢津」は凝縮感がありアールグレイのようなニュアンス。「大見尾」は下毛よりも複雑で厚みのある味わいだ
「畑ごとに異なる個性のアルバリーニョが収穫でき、圃場ごとに3種のキュヴェをリリースしています」と古屋氏。飲み比べも楽しい。
23年には「極果」シリーズが登場。
「良質なブドウで素晴らしいワインができた時に、そのままボトルに込めたいと思いました」文字通り“究極”の安心院ワインである。

右から
『安心院スパークリングワイン 極果〈白〉2021年』(7788円)はシャルドネとピノ・ノワールを使用し、骨格ある味わいに。さらに熟成させた『同〈熟成白〉2014年』(2万3100円)。『安心院ワイン 極果 アルバリーニョ 2023年』(7315円)は完熟果実と花のような香りが広がる。『安心院ワイン 極果 ビジュノワール 2022年』(7700円)は、新樽100%で完熟ブドウの力を引き出したスタイル。豊かな厚みと凝縮感が広がる
※価格はすべて税込 ※写真は、現在発売中の4アイテム
この安心院の地でのワイン造りは半世紀を超え、原料への探究は終わらない。
「宇佐市に自生するヤマブドウと、シャルドネやメルロなどの既存品種を交配し、新たな品種の開発に大分県とともに取り組んでいます。畑やブドウと真摯に向き合いながら、醸造においても挑戦は尽きません。この地だからこそできるワイン造りを追求していきたい」と語る古屋氏。その手は日本酒造りにも及んでおり、挑戦はさらに広がっている。
「安心院葡萄酒工房」
安心院町下毛798
TEL. 0978-34-2210
※問い合わせ先 三和酒類㈱
https://www.sanwa-shurui.co.jp
見学可
### 「安心院葡萄酒工房」ワイナリーショップ 売れ筋TOP3

1位
『安心院 スパークリングワイン』
(税込3851円)
シャルドネ100パーセント。きめ細やかな泡が楽しめる辛口のスパークリングワイン。

2位
『安心院ワイン ピノ・ノワール』
(税込4210円)
上品な赤い果実の香りと、華やかな余韻が広がる辛口の赤ワイン。

3位
『安心院ワイン アルバリーニョ 下毛』
(税込3801円)
フレッシュな白桃や柑橘の香りが広がる、凛とした余韻の辛口白ワイン。

