text by Kimiko ANZAI,photographs by Chateau Angelus

ボルドーの名門「シャトー・アンジェリュス」主宰のソムリエ・コンクール「トロフェ・アンジュリュス」の栄えある第1回大会で、近藤佑哉氏が優勝を飾った。優雅でありながらも緊張感に満ちたトロフェ・アンジェリュスの全容をリポートすると同時に、シャトー・アンジェリュスの”日本への思い”もひも解く。

2023年11月22日、「パレスホテル東京」においてトロフェ・アンジェリュス第1回大会決勝とガラ・ディナーが開催された。シャトー・アンジェリュス8代目オーナー、ステファニー・ド・ブアール・リヴォアルさんが本大会審査委員長として来日、また、審査員に「日本ソムリエ協会」会長の田崎真也氏、漫画『神の雫』著者の亜樹直氏(樹林ゆう子さん、樹林伸氏)を迎え、進行を日本ソムリエ協会副会長の石田博氏が行うなど、コンクールは日本ソムリエ協会の強力なサポートのもと、華やかに進められた。

画像: 大会審査員。(左から)石田博氏、田崎真也氏、ステファニー・ド・ブアール・リヴォアルさん、樹林ゆう子さん、樹林伸氏。緊張感に満ちた雰囲気の中、厳正な審査が行われた

大会審査員。(左から)石田博氏、田崎真也氏、ステファニー・ド・ブアール・リヴォアルさん、樹林ゆう子さん、樹林伸氏。緊張感に満ちた雰囲気の中、厳正な審査が行われた

実は、日本はトロフェ・アンジェリュス初の開催地として選ばれた場所だった。ステファニーさんはこう語る。

「日本は、ファイン・ワインに対する知識を持つ、成熟した市場。これは、ソムリエの皆さまの不断の努力と大きな貢献によるものでしょう。当シャトーが日本に紹介されて約30年が経ちましたが、私たちは、さらに日本で飛躍したいと考えました。そこでソムリエの皆さまにもう一度『シャトー・アンジェリュス』と向き合っていただき、優勝者には1年間、アンバサダーとして私たちと手を携えてほしいと考えたのです」

トロフェ・アンジェリュス実施要綱の発表は2019年に行われ、第一次選考のショートエッセイ、第二次選考の面談とブラインド・テイスティングと進み、ファイナリストも決まった。だが、世界的に猛威をふるったコロナ禍で、2020年2月に予定されていた大会は延期され、ようやく今年、晴れの日を迎えることができたのだ。

栄冠は誰の手に? プレゼンテーションと実技による審査

当日登壇したファイナリストは、近藤佑哉氏(レカングルーブ総支配人兼エグゼクティヴソムリエ)、野村大智氏(NOT A HOTEL MANAGEMENT プロジェクトマネジャー兼ワインディレクター)、須藤亜希さん(ビストロ ヨシミチ共同経営者)の3名。決勝では『シャトー・アンジェリュス』の日本における認知度の個人的認識と、日本市場で行っていきたいプロモーションについて、パワーポイントを使用してのプレゼンテーションと、『シャトー・アンジェリュス1995』に合わせて選んだ料理を審査員にサービスする実技により審査された。

その後、ガラ・ディナーを挟み、ステファニーさんが優勝者を発表。「ユウヤ・コンドウ」の名が呼ばれると、場内には大きな拍手が鳴り響いた。

画像: サービス実技を行う近藤氏。『シャトー・アンジェリュス1995年』は、まず室温を確認、18時55分に抜栓、19時にデキャンタ―ジュを行った。「95年ヴィンテージの繊細さを楽しんでいただくために小さめのデキャンタを選び、温度を16~18℃に調整しました」と近藤氏。95年に合わせ、「パレスホテル東京」のメニューから選んだのは”アワビと黄ニラのXO醤炒め”。XO醤の辛味にはメルロのやさしい果実味が合うと考えた。グラスは、シルキーなタンニンが感じられるよう、あえて小さめのものを用意。ゲストが料理の辛味を感じた際には、大きめのグラスを用意しておくなど、〝次の手〟も考えていた

サービス実技を行う近藤氏。『シャトー・アンジェリュス1995年』は、まず室温を確認、18時55分に抜栓、19時にデキャンタ―ジュを行った。「95年ヴィンテージの繊細さを楽しんでいただくために小さめのデキャンタを選び、温度を16~18℃に調整しました」と近藤氏。95年に合わせ、「パレスホテル東京」のメニューから選んだのは”アワビと黄ニラのXO醤炒め”。XO醤の辛味にはメルロのやさしい果実味が合うと考えた。グラスは、シルキーなタンニンが感じられるよう、あえて小さめのものを用意。ゲストが料理の辛味を感じた際には、大きめのグラスを用意しておくなど、〝次の手〟も考えていた

的確な理論と実技でトロフィーを手に

優勝の喜びを、近藤氏はこう語る。

「トロフェ・アンジェリュスの記念すべき第1回大会で優勝できたことは、とても光栄でした。有名シャトーであるため、これから大会への注目度も高くなると思いますので、私もさらに自己研鑽を積まなくてはと強く思いました。同時に、アンバサダーとしてシャトー・アンジェリュスの魅力を多くの方々に伝えていきたいです」

そして、近藤氏はシャトー・アンジェリュスの魅力をこう解説してくれた。

「ブドウ栽培やワイン造り、プロモーションまで、常に進化すべくチャレンジを続けている生産者で、伝統と革新を融合したようなチーム作りが魅力です。大きな生産者はなかなか”顔”が見えにくいのですが、シャトー・アンジェリュスは哲学が明快で”顔”がはっきりと見えるのも素晴らしい」

また、予選から決勝まで約3年半のブランクに際して、モチベーションの保ち方をどうしたのか聞いてみると、こんな答えが返って来た。

「自己研鑽は常に心掛けていましたので、モチベーションが下がることはありませんでした。助けられたのは、運営の中軸を担ってくださったソムリエ協会のご担当者が、開催に向けての準備や調整について、常に我々選手を気遣い、コンタクトを取ってくださったこと。おかげで、むしろ大会が待ち遠しくなるほどでした」(笑)

画像: 的確な理論と実技でトロフィーを手に

近藤氏が優勝した理由を、ステファニーさんはこう語る。

「10分という短いプレゼンテーションの時間で、近藤さんはシャトー・アンジェリュスの日本マーケットにおける現況を的確にとらえつつ、発展させるための企画を明確に提案してくれました。さらに、『シャトー・アンジェリュス1995年』のサービス実技においては、ワインの温度やグラスについて詳細に説明がなされ、また、合わせる料理に『アワビのXO醤ソース』を選んだ理由も明快でした。近藤さんは、ハイスコアで勝者となりました」。

新たなワインコンクールとして誕生した「トロフェ・アンジェリュス」は、近藤氏の言葉通り、今後の注目度は高くなっていくことだろう。大会に挑戦するソムリエたちは、シャトー・アンジェリュスを通じてさらに研鑽を積み、多くのワイン愛好家たちを”幸福な時間”へとの導いてくれるに違いない。近藤氏が手にする”襷(たすき)”を次は誰が受け取るのか、今から楽しみだ。

画像: 「トロフェ・アンジュリュス」の記念すべき第1回を記念し、記念撮影。3位の須藤亜希さん(左から2番目)、2位の野村大智氏(中央)、大会に尽力した輸出マネジャーのボング・グレラ・トラムさんとともに

「トロフェ・アンジュリュス」の記念すべき第1回を記念し、記念撮影。3位の須藤亜希さん(左から2番目)、2位の野村大智氏(中央)、大会に尽力した輸出マネジャーのボング・グレラ・トラムさんとともに

This article is a sponsored article by
''.