マネジングディレクターのシャルル=アルマン・ド・ベレネ氏と、シェフ・ド・カーヴのドゥニ・ブネア氏が来日し、要のブドウ品種ピノ・ノワール100パーセントの『ピー・エヌ エイ・ワイ・シー 18(PN AYC 18)』『ラ・コート・オー・ザンファン 2013年』『ヴィエイユ・ヴィーニュ・フランセーズ 2012年』の3アイテムについて語った。

サステイナブルにおいてもリーダー格

画像: マネジングディレクターのシャルル=アルマン・ド・ベレネ氏(左)、シェフ・ド・カーヴのドゥニ・ブネア氏

マネジングディレクターのシャルル=アルマン・ド・ベレネ氏(左)、シェフ・ド・カーヴのドゥニ・ブネア氏

アイ村を拠点とする「ボランジェ」は、シャンパーニュメゾンとして初めて※1HVE/環境価値重視の認定を受けたが、冒頭、シャルル=アルマン・ド・ベレネ氏からうれしい報告があった。3年前から取り組んでいた※2B-corpの認証取得だ。これはシャンパーニュ業界ではEPIグループに次ぐ快挙で、「次世代に継承していくために、今後もサステイナブルに力を注いでいく」と宣言していた。ド・ベレネ氏とともに来日したドゥ二・ブネア氏は2019年にシェフ・ド・カーヴに就任している。

画像: 「東京芝とうふ屋うかい」の座敷に設えられた金屏風前に鎮座した試飲4アイテム。前列左から『ボランジェ・ロゼNV』『ボランジェ ピー・エヌ エイ・ワイ・シー18』『ボランジェ ラ・コート・オー・ザンファン2013年』『ボランジェ ヴィエイユ・ヴィーニュ・フランセーズ2012年』

「東京芝とうふ屋うかい」の座敷に設えられた金屏風前に鎮座した試飲4アイテム。前列左から『ボランジェ・ロゼNV』『ボランジェ ピー・エヌ エイ・ワイ・シー18』『ボランジェ ラ・コート・オー・ザンファン2013年』『ボランジェ ヴィエイユ・ヴィーニュ・フランセーズ2012年』

画像: ウェルカムシャンパーニュは『ボランジェ・ロゼ』。品種はピノ・ノワール62%、シャルドネ24%、ムニエ14%、赤ワイン5%ブレンド。深みのある彩りの八寸(とうふムース・牡丹海老・キャビア、九絵、ふく唐揚)に寄り添う万能ロゼ

ウェルカムシャンパーニュは『ボランジェ・ロゼ』。品種はピノ・ノワール62%、シャルドネ24%、ムニエ14%、赤ワイン5%ブレンド。深みのある彩りの八寸(とうふムース・牡丹海老・キャビア、九絵、ふく唐揚)に寄り添う万能ロゼ

ピノ・ノワール三部作の第1フライトに供された『PN AYC18』について、ド・ベレネ氏は「ヴィエイユ・ヴィーニュ・フランセーズの兄弟的存在」と解説。村に特化したテロワールシリーズで、前任のシェフ・ド・カーヴ、故ジル・デコート氏の発案で実現したものだ。自社畑(アイ、ヴェルズネー、アヴネイ、トーシエールの各村)のピノ・ノワールを前面に出したシャンパーニュ造りを目的に、社内でグループごとに切磋琢磨し、コンペティションでベストのピノ・ノワールを選ぶ。その結果、■ピノ・ノワール100パーセント ■テロワールを反映■ヴィンテージの個性――という3条件を最適に表現していた『ヴェルズネー15/VZ15』がファーストリリースの栄誉を勝ち取った。ベースヴィンテージが2015年のヴェルズネーで、続く第2版はヴェルズネー16、第3版はトーシエール17、そして、最新の第4版で初めてアイが選ばれた。ブネア氏は「2018年は良年でパワフル。リザーヴワインには2009年ヴィンテージも使用しているので緻密な味わい。塩味の要素が和食にも合う」と語った。

画像: 『ボランジェ ピー・エヌ エイ・ワイ・シー18』と名物「あげ田楽」は、甘さとスパイス風味のみそが仲介役となり、旨味が増幅。シャンパーニュの酸味が口中の脂分を拭い去り、余韻に爽快感

『ボランジェ ピー・エヌ エイ・ワイ・シー18』と名物「あげ田楽」は、甘さとスパイス風味のみそが仲介役となり、旨味が増幅。シャンパーニュの酸味が口中の脂分を拭い去り、余韻に爽快感

アイ村&ピノ・ノワールファーストのボランジェ

第2フライトは『ラ・コート・オー・ザンファン2013年』で、初ヴィンテージは2012年。ボランジェの設立者の一人、ジャック・ボランジェが、1926~34年の間に獲得した4ヘクタールのブドウ畑「コート・オー・ザンファン」から誕生した発泡性ワインである。南向きの急斜面から造られる『コート・オー・ザンファン』はコトー・シャンプノワの逸品で、『ラ・グランダネ・ロゼ』にも使われているが、このシャンパーニュは同エリアの北西向き斜面のピノ・ノワール100パーセントで、三部作の中で最もジャック・ボランジェの思いが伝わってくるアイテムだった。

画像: 『ボランジェ ラ・コート・オー・ザンファン2013年』は、生育サイクルは遅かったが、収穫期はベストな気候に恵まれた。オレンジピールやグレープフルーツのような果実、ボランジェらしいフレッシュ感がありミネラリティー」とブネア氏

『ボランジェ ラ・コート・オー・ザンファン2013年』は、生育サイクルは遅かったが、収穫期はベストな気候に恵まれた。オレンジピールやグレープフルーツのような果実、ボランジェらしいフレッシュ感がありミネラリティー」とブネア氏

第3フライトは、メゾン近隣のブドウ畑「クロ・サン・ジャック」と「クロ・デ・ショード・テール」の2区画のピノ・ノワールから造られる、シャンパーニュ地方の至宝『ヴィエイユ・ヴィーニュ・フランセーズ2012年』。

ブネア氏は「ピノ・ノワールの最高傑作。接ぎ木をしていない自根で、1ヘクタール当たり3万本の植樹なので通常より3倍多いが、収量は3分の1。アイ村にフォーカスした凝縮感に富んだシャンパーニュであり、そのリッチさゆえに泡ものというより、ワインを飲んでいる感じ」とコメントした。

画像: アイコニックなシャンパーニュ『ボランジェ ヴィエイユ・ヴィーニュ・フランセーズ 2012年』と「黒毛和牛炭火焼」との相性は、気泡が溶け込んだ複雑味のあるシャンパーニュと、ロースト風味の上質な肉質との混然一体感

アイコニックなシャンパーニュ『ボランジェ ヴィエイユ・ヴィーニュ・フランセーズ 2012年』と「黒毛和牛炭火焼」との相性は、気泡が溶け込んだ複雑味のあるシャンパーニュと、ロースト風味の上質な肉質との混然一体感

ヴィエイユ・ヴィーニュ・フランセーズは、以前は3000~4000本収穫できていたが、今では700本程度まで激減している。シャンパーニュ地方はブドウ栽培地の北限といえども気候変動の影響下にあり、アイのブドウ畑にも変化が出ている。会の終盤、ド・ベレネ氏は「冬は寒いのでクロの区画でも※3 フィロキセラへの耐性、プロテクトすることはできるが、夏の干ばつや猛暑が自根に与える影響は大きいので、その対策に向けて努力を続けていきたい」と語った。

ボランジェでは、10年前からシャンパーニュ地方の古代品種プティ・メリエやアルバンヌも手がけているが、メゾンはアイ村&ピノ・ノワールファーストであるため、自根のシャンパーニュ『ヴィエイユ・ヴィーニュ・フランセーズ』をいかに存続させていくかが、最大の課題といえそうだ。

【注釈】
※1フランス政府が発行する最高レベルの環境認証。生物多様性、施肥、病害虫防除、水の管理に関する厳しい指標が定められている
※2米国ペンシルベニア州の非営利団体B-Labが管理する国際認証制度。利益だけでなく、社会全体に配慮した公益性に高い企業に与えられる
※3 19世紀末、ワイン産地に壊滅的なダメージを与えたブドウ根アブラムシ。ブドウ樹の根について枯らせてしまう害虫。北米原産のブドウ樹を台木にして接ぎ木する解決策がある

text & photographs by Fumiko AOKI

ワインの問い合わせ先:WINE TO STYLE㈱ TEL.03-5413-8831

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