上質なスパークリングワインの産地として世界的に人気が高まっているフランチャコルタ。今年5月、ワインジャーナリストの宮嶋勲氏が5人のソムリエとともにフランチャコルタを訪れた。今回はその1人、矢田部匡且氏と訪問した「ベラヴィスタ」のワインをテイスティングしながら旅で知った産地の魅力や思い出を語った。

太陽に満ちた温暖な気候と、冷たく吹き込む風

画像: フランチャコルタ研修ツアーに参加したソムリエと。左から矢田部匡且氏、金子利行氏、「ベラヴィスタ」のマーケティング・ディレクターのヴィタリアーノ・ティッリート氏、本多康志氏、近藤佑哉氏、ジャーナリストの宮嶋勲氏、浦崎隆宏氏 ©Masakatsu YATABE

フランチャコルタ研修ツアーに参加したソムリエと。左から矢田部匡且氏、金子利行氏、「ベラヴィスタ」のマーケティング・ディレクターのヴィタリアーノ・ティッリート氏、本多康志氏、近藤佑哉氏、ジャーナリストの宮嶋勲氏、浦崎隆宏氏
©Masakatsu YATABE

宮嶋 フランチャコルタを訪れたのは今年5月でしたね。これまでも現地に行かれたことはありますか?
矢田部 3年ほど前に訪れたことがありますが、じっくり見て回ったのは今回が初めてです。ミラノから車で1時間ほどと近い距離ですが、自然が豊かで風光明媚な場所ですよね。イゼオ湖のそばに建つ宿泊先のホテルからの眺めも素晴らしかったです。
宮嶋 イゼオ湖では遊覧船にも乗りましたよね。
矢田部 5月とは思えないくらい、日差しがとても強かったです。
宮嶋 太陽に満ちていました。この地域の気候は、イゼオ湖によってもたらされる温暖な地中海性気候です。また、朝、客室の窓を開けると吹き込んできた冷たい風も印象的でした。あの風が、酸とアロマを保持するのです。
矢田部 フランチャコルタは、石灰質などさまざまな土壌が入り組んでいるのも特徴的ですね。
宮嶋 氷堆積(ひょうたいせき)土壌は石灰岩、砂岩、花崗岩などが適度に混ざった土壌で、上質なスパークリングワインを生む条件がそろっています。

ミラノとの関係性と厳格な規制による品質の高さ

矢田部 フランチャコルタは東西20キロ、南北10キロと横に長いエリアに120軒もの造り手が集まっています。現地を巡ってみて、そのコンパクトさが体感できました。
宮嶋 どの生産者も技術がしっかりしているので、品質が劣ると感じるワインがほとんどありません。
矢田部 小さい産地だからこそ、良いワインで産地を盛り上げたいという気持ちがあるのでしょうね。シャンパーニュに比べるとワインの歴史は浅いですが、品質は肩を並べるレベルです。
宮嶋 生産者たちに話を聞くと「自分たちに伝統はない」と言います。だからこそ、歴史の長いシャンパーニュよりも厳しい規則を設けているのだと。良いものを造ろうという気概が感じられますよね。
矢田部 フランチャコルタとシャンパーニュは、産地と大都市の距離感という点でも似ていますね。フランチャコルタはミラノ、シャンパーニュはパリから比較的近い場所に位置しています。
宮嶋 ミラノでは高額でも質の良いものは売れますし、可能性のある分野には積極的に投資してくれます。ミラノの存在によって、フランチャコルタが今のようなポジションになったと言えるでしょう。

フランチャコルタを牽引。新時代を迎えた「ベラヴィスタ」

矢田部 今回訪れた「ベラヴィスタ」は、フランチャコルタを牽引する生産者です。
宮嶋 創業者のヴィットリオ・モレッティ氏は建築やホテル業を手掛ける実業家で、高度経済成長期に事業を成功させ、その恩恵を受けて1977年にワイナリーを開業しました。

ベラヴィスタ アルマシリーズ
『アルマ・アッサンブラージュ 1 NV』
品種:シャルドネ86%、ピノ・ネロ13%、ピノ・ビアンコ1%
リザーヴワイン:シャルドネ2014年、19
年、20 年、ピノ・ネロ19 年、20 年
ドザージュ:3.5 g/L
瓶内熟成期間:平均30ヵ月
希望小売価格:6600 円(税込)
*ボックス付き

※商品名はリリースごとに『アルマ・アッサンブラージュ 1』『アルマ・アッサンブラージュ 2』とナンバリングし、各ヴィンテージの特長に合わせてブレンド(アッサンブラージュ)を最適化することで理想の味わいを追求していく

矢田部 ワイナリーにはアート作品が数多く飾られていて、まるで現代美術館のようでした。
宮嶋 そうですね。スタンダードキュヴェの「アルマシリーズ」のボトルもおしゃれで、遠くからでも目に入るデザインです。独特な形状なので、セラーストックに悩む。ソムリエ泣かせのデザインでもあります。
矢田部 テイスティングしてみて、以前とまったく違うスタイルになっていて驚きました。
宮嶋 ヴィットリオ氏の娘フランチェスカさんに代替わりし、またシャンパーニュ「ドン ペリニヨン」の醸造最高責任者だったリシャール・ジョフロワ氏を2022年にコンサルタントとして招聘したのを機に、大きく変化しました。シリーズ名も「グランデ・キュヴェ・アルマ」から「アルマ・アッサンブラージュ」となり、味わいのスタイルが大幅に変わりました。
矢田部 ラベルのデザインもよりモダンになりましたね。ベーシックキュヴェの『アルマ・アッサンブラージュ NV』を一口飲むと、以前よりもフレッシュさが際立っていることがすぐにわかります。
宮嶋 軽さが求められるトレンドを意識して、*1リザーヴワインに以前より若いヴィンテージのものを使っています。バランスが完璧で、ジョフロワ氏らしい精緻な造りです。

ベラヴィスタ アルマシリーズ
『アルマ・ロゼ・アッサンブラージュ1 NV』
品種:シャルドネ60%、ピノ・ネロ40%
リザーヴワイン:2019年のシャルドネ、
20 年のピノ・ネロ
ドザージュ:3g/L
瓶内熟成期間:平均30ヵ月
希望小売価格:7150 円(税込)
*ボックス付き

矢田部 『アルマ・ロゼ・アッサンブラージュNV』はマセラシオン(醸し)が数時間と非常に短く、「これが本当にロゼ?」と思うほど淡い色合いに仕上がっています。
宮嶋 アロマが一貫していますね。エレガントでフレッシュです。
矢田部 以前、宮嶋さんが「フランチャコルタはブドウの成熟度が高く、*2ノン・ドザージュで造るポテンシャルが十分備わっている。果実味があって洗練された味わいになります」と仰っていましたが、『アルマ・ノン・ドザート・アッサンブラージュ NV』を飲んでその言葉を実感しました。
宮嶋 スティルワインも質の良いものを造ることができる土地ですから、ノン・ドザージュについても高いポテンシャルがあると考えています。
矢田部 ベラヴィスタでは、ルミュアージュ(動瓶)を手作業で行っていたことも印象的でした。
宮嶋 200ヘクタールもの自社畑をきちんと管理し、手作業を重視していますね。世代交代しさまざまなことが刷新されても、そうした*3レコルタン・マニピュランのような造りは変わっていません。
矢田部 今回の旅で訪問した生産者はいずれもシャンパーニュのレコルタン・マニピュランのようなスタイルで、個性が幅広いと感じました。
宮嶋 なぜこの地で上質なスパークリングワインが生まれるのか、実感できましたね。
矢田部 宮嶋さんと現地を訪問できたのはとても良い経験でした。フランチャコルタの魅力を、お客さまに熱く伝えていきたいです!

ベラヴィスタ アルマシリーズ
『アルマ・ノン・ ドザート・アッサンブラージュ 1 NV』
品種:シャルドネ76%、ピノ・ネロ24%
リザーヴワイン:2019年のシャルドネ
ドザージュ:0g/L
瓶内熟成期間:平均30ヵ月
希望小売価格:7150 円(税込)
*ボックス付き

画像: 宮嶋 勲氏Isao MIYAJIMA ジャーナリスト。1959年京都生まれ。東京大学経済学部卒。83~89年、ローマの新聞社に勤務。現在、日本とイタリアでワインと食について執筆活動を行っている。『イタリア ワイン ランキング』『イタリアワイン』(ワイン王国)の監修と翻訳を手掛けるほか、著書多数。近著に『イタリアの「幸せのひと皿」を食べに行く』(大和書房)。2013年「グランディ・クリュ・ディタリア最優秀外国人ジャーナリスト賞」受賞

宮嶋 勲氏Isao MIYAJIMA
ジャーナリスト。1959年京都生まれ。東京大学経済学部卒。83~89年、ローマの新聞社に勤務。現在、日本とイタリアでワインと食について執筆活動を行っている。『イタリア ワイン ランキング』『イタリアワイン』(ワイン王国)の監修と翻訳を手掛けるほか、著書多数。近著に『イタリアの「幸せのひと皿」を食べに行く』(大和書房)。2013年「グランディ・クリュ・ディタリア最優秀外国人ジャーナリスト賞」受賞

画像: 矢田部 匡且氏Masakatsu YATABE 「東京エディション虎ノ門」ヘッドソムリエ。「パークハイアット東京」「ワイン蔵 Tokyo」「ジャンジョルジュ東京」勤務を経て「ピエール・ガニェ―ル東京」シェフソムリエとして活躍。2020年、ホテルの開業より現職。館内すべてのワインマネジメントに関わる。ASIインターナショナルソムリエ、NAPAVALLEY WINE BEST SOMMELIER AMBASSADOR 2025

矢田部 匡且氏Masakatsu YATABE
「東京エディション虎ノ門」ヘッドソムリエ。「パークハイアット東京」「ワイン蔵 Tokyo」「ジャンジョルジュ東京」勤務を経て「ピエール・ガニェ―ル東京」シェフソムリエとして活躍。2020年、ホテルの開業より現職。館内すべてのワインマネジメントに関わる。ASIインターナショナルソムリエ、NAPAVALLEY WINE BEST SOMMELIER AMBASSADOR 2025

*1 貯蔵してある良作年の原酒。
*2 ドザージュは、デゴルジュマン(瓶内2次発酵で生じるオリを瓶口に集め、取り除く作業)の後、目減りした分を補うためにワインを添加すること。糖分を含まないワインを添加するとノン・ドザージュとなる。
*3 ブドウ栽培と醸造を兼ねている生産者。自社畑のブドウだけで造る。

text by Mie NAMBA
photograph by Tomokazu MATSUKAWA
取材協力:東京エディション虎ノ門 The Jade Room + Garden Terrace

問い合わせ先:エノテカ㈱ 0120 - 81 - 3634

This article is a sponsored article by
''.