2026年5月19日、北海道仁木町の「NIKI Hills Winery」で、サンテミリオンでワイン造りを手掛けたフィリップ・トルシエ氏と、町内3つのワイナリーが参加するイベントが開催された。各参加者が産地の現状や取り組みを紹介しながら、メルロをテーマに意見交換を行った。

「NIKI Hills Winery」のメルロ畑を視察するトルシエ氏。朝日台の土壌や収量制限など、仁木町ならではの栽培環境について説明を受けながら熱心に耳を傾けた
トルシエ氏が語る哲学と、会場を沸かせた“選手に例えるワイン紹介”
冒頭では、フィリップ・トルシエ氏がサンテミリオンでのワイン造りについて語った。監督として培った哲学とワイン造りの共通点に触れ、「それぞれの良さを引き出し、一つのユニットとしてまとめ上げることは、チームもワインも同じ」と説明した。
さらに、自身のワインをサッカー選手に例えて紹介。『COUP DU CHAPEAU」を「強さと構造を支える守備の要である谷口や板倉」、『SOL BENI』を「創造性あふれる南野」、『EXTRA TIME』を「発想の転換で試合の流れを変える久保」と表現し、ワインの個性を選手像に重ね合わせるユニークな語り口に、会場は大いに盛り上がった。

サンテミリオンでのワイン造りや哲学を紹介するフィリップ・トルシエ氏。監督としての経験を重ねながら、産地の魅力と自身の取り組みを語った
仁木町3ワイナリーが示したメルロの可能性

サンテミリオンと仁木町のワインを比較テイスティング。産地ごとの個性やメルロの表現の違いを探るため、計7種類のワインが供された
続いて、仁木町の3ワイナリー「Domaine Bless」「North Creek Farm」「NIKI Hills Winery」が、それぞれの畑や栽培、醸造の取り組みについて発表。
Domaine Blessは『ITO~糸~2023』と『Your Story 2023』の2種類のメルロを紹介。自然酵母による発酵や無濾過・無清澄で仕上げるスタイル、多品種栽培によるリスク分散の考え方などを共有した。
North Creek Farmは、余市川沿いの水はけの良い土壌と冷涼な風がもたらす、高い糖度と酸を兼ね備えたメルロについて説明。2024年ヴィンテージはアルコール度数14%という力強い仕上がりで注目を集めた。
NIKI Hills Wineryは、朝日台の褐色森林土と礫混じりの土壌が生み出す骨格と酸に言及。2023年は積算温度が1599に達し、メルロにとって好条件の年だったという。収量制限を徹底しながら、冷涼産地ならではのエレガンスを追求していることを紹介した。
その後、仁木町の佐藤聖一郎町長が、町のワイン産業が歩んできた10年を振り返った。
「ようやく仁木町のワインというツールを使って戦うタイミングが来たのではないか。これまでは成長過程だったが、世界に負けない産地として戦える舞台が整いつつある」
さらに、「これは仁木町だけでなく、北海道全体としてワイン産業を盛り上げ、世界に劣らない産地にしていきたい」と述べ、地域全体の発展への期待を語った。

「NIKI Hills Winery」のワインセラーを視察するトルシエ氏。熟成環境や醸造設備を確認し、仁木町のワイン造りのこだわりと可能性について理解を深めた
仁木町とサンテミリオンの未来へ
最後にトルシエ氏は、サンテミリオンと仁木町の橋渡し役を担う決意を表明した。
「サンテミリオンと仁木町の橋渡しとなり、この関係や絆が続くよう努力したい。仁木町のワインがフランス、そしてサンテミリオンでも広まるよう働きかけていく」
町長が先に語った「両地域がつながりを持ちたい」という思いに対し、トルシエ氏は自ら行動する意思を示した形となった。

イベント参加者全員での集合写真。サンテミリオンと仁木町の生産者、関係者が一堂に会し、メルロを通じた交流と意見交換の場となった
text by 「日本ワインマスターズクラブ」宮崎まりDipWSET、近藤美伸DipWSET

