山形県南部に位置する「高畠ワイナリー」はシャルドネで国内外から高い評価を得てきた。しかし、近年はカベルネ・ソーヴィニヨンに注力し長期熟成可能なボルドー・スタイルの赤ワインを生み出している。その進化に、ソムリエの矢田部匡且(やたべ まさかつ)氏が迫った。
山形県南部の置賜(おきたま)盆地にある高畠町は、古くから丘や丘に囲まれた実り豊かな住みよい土地を意味する「まほろばの里」と呼ばれてきた。奥羽山脈、吾妻連峰、飯豊連峰、蔵王連峰に四方を囲まれ、降水量が少なく昼夜の寒暖差が大きい気候条件は果樹栽培に好適で、なかでもブドウ栽培の歴史は長い。明治初期から栽培が始まり、現在ではデラウェアやシャルドネの産地として名高い。シャルドネについては、全国の生産量の10パーセントを「高畠ワイナリー」の契約農家が占めている。
こうした背景からもわかるように、高畠ワイナリーの契約農家や自社畑の収穫量は、シャルドネを中心とする白ブドウが大半であった。しかし2012年、「ARKADIA(アルケイディア)」シリーズのリリースとともに、少量仕込みが可能な醸造設備を設ける“Garagiste Winery構想”を立ち上げ、高品質な赤ワイン造りに本格的に取り組み始めた。その中心を担っているのが、製造部リーダーの松田旬一氏である。

松田旬一(まつだ しゅんいち)氏
製造部リーダー。1998年に入社。〝Garagiste Winery構想”はカベルネ・ソーヴィニヨンに対する松田氏の思いから立ち上がった
「飲んだ瞬間に力強さを感じ、驚きと感動を与えてくれるカベルネ・ソーヴィニヨンに以前から魅力を感じていました。長期熟成に耐え得る、世界トップクラスのボルドー・スタイルの赤ワインを目指し、中長期的にさまざまな取り組みを続けています」
カベルネ・ソーヴィニヨンやカベルネ・フラン、マルベックを新植するなど黒ブドウ比率を拡大。2017年に全体の27パーセントだった黒ブドウの収穫量は、 24年には49パーセントとほぼ半数にまで増えた。仕込みはカベルネ・ソーヴィニヨンを着色度により3段階、メルロを8段階にランク分けして行う。さらに、選果機付き除梗機の導入に加え、手作業での選果も徹底し、未熟果や梗を取り除く。温度管理システムや小量仕込みタンクといった設備投資も惜しまない。
こうした取り組みの成果が『ARKADIA Select Harvest Meritage 2022年』だ。松田氏は「10年、20年経っても色あせない味わいに仕上がったと思います」と胸を張る。このワインを、以前から高畠の赤の可能性に注目していたソムリエの矢田部匡且氏がテイスティングした。
「フルーツのトーンを主体に、コーヒーやドライフルーツ、スパイスなど、多彩なアロマを感じます。太陽を思わせる明るい印象で、飲み口はやさしく、タンニンが口中を引き締め、エレガントな余韻が続きますね」

矢田部匡且(やたべ まさかつ)氏
「東京エディション虎ノ門」ヘッドソムリエ。「パークハイアット東京」「ワイン蔵Tokyo」「ジャン・ジョルジュ東京」を経て、「ピエール・ガニェール」シェフソムリエとして勤務。2020 年より現職
24年には新ブランド「DOMAINE TAKAHATA Haut-Vigne(ドメーヌ タカハタ オーヴィーニュ)」シリーズも始動した。契約農家のブドウの高位ランクのみで醸す「ARKADIA」に対し、こちらは自社畑のブドウを用い、一定以上のクオリティーに達した年だけリリースするプレステージ・キュヴェだ。
「ストラクチャーがしっかりしていて、余韻のタンニンはドライ。丁寧に造られていることが伝わる、クラシックなボルドー・スタイルのワインです。高品質な日本のワインを求めて訪れる外国人のお客さまに、自信を持ってお勧めできるクオリティーの高さで、造り手の気概が伝わってきました。日本のカベルネ・ソーヴィニヨンは新しいフェーズに入ったのではないでしょうか」(矢田部氏)
「高畠を世界に誇る産地に」という信念を胸に、進化を続ける高畠ワイナリー。世界に伍するボルドー・スタイルの赤ワインで、新たな地平を切り拓いている。

左から
『DOMAINE TAKAHATA Haut-Vigne Meritage 2022年』
品種:カベルネ・ソーヴィニヨン93.6%、カベルネ・フラン6.4%
『ARKADIA Select Harvest Meritage 2022年』
品種:カベルネ・ソーヴィニヨン78.5%、メルロ17.5%、プティ・ヴェルド4%

「高畠ワイナリー」
山形県東置賜郡高畠町糠野目2700-1
TEL. 0238-57-4800
https://www.takahata-winery.jp/
見学可要予約
「高畠ワイナリー」ワイナリーショップ 売れ筋TOP3

1位
『嘉 ~Yoshi~スパークリング シャルドネ』
(税込2310円)
すっきりとした辛口スタイルのスパークリングワイン。

2位
『高畠クラシックメルロー&カベルネ・ソーヴィニョン2021年』
(税込2310円)
凝縮感のある果実味が楽しめる「高畠ワイナリー」のスタンダードの赤ワイン。

3位
穣 ~Minori~プリデムース シャルドネ 2023年』
(税込)3850円
透明感のあるさわやかな酸味。フレッシュでキレの良い辛口スパークリングワイン。

